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第三章 商業国家アーティナイ連邦編

『カームクラン』防衛戦6

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 バシュウウ!ドーン!

『プラタナ』は地面を揺らしながら、地面に斜め向きで突き刺さった『リデューシングソード』の前に着地した。

 ズブシュウ!

 そして、自身の持っていた『リデューシングソード』をもう一本の剣とクロスするように突き刺した。

 ギュイイン!ドガッ!

 続いて『プラタナ』は、正面から見ればエックスの様になっている交差部分の上に『ホーリーバスターキャノン』の本体を置いた。

『なるほど、『リデューシングソード』を砲台として使うわけね!』

『しっかり抱えないと反動が凄いからね。じゃあ、みんな時間稼ぎお願いね!』

 クラリスは砲身の設置を完了すると、本体から神白銀プラティウムケーブルを引き伸ばして『ホーリーバスターキャノン』と『プラタナ』の発導機を接続した。

『さあ!行くわよ!『ホーリーバスターキャノン』発射シークェンス、スタート!』

 ジャキン!

 クラリスが掛け声と共にコンソールを操作すると、『ホーリーバスターキャノン』のブレード状になった先端部分が二枚に割れてから平行に開き、その二つに割れたブレードに刻まれた魔導式が白銀色に輝き出した。

「さあ!『黒竜バハムート』!こちらです!」

『ナラトス様!行きます!』

『うむ!』

 クラリスが発射の段取りを開始したことを確認すると、『メルティーナ』とユナは『黒竜バハムート』へと向かっていった。

「グギャオウウウウ!!」

 キィィィィ!

 接近する『メルティーナ』とユナを確認した『黒竜バハムート』は『ブレス』を吐く為に口腔内で高密度のマナを収束しはじめる。

『まだ撃つには早いわよ!』

 二アールは『ブレス』の発射を妨害する為、既に詠唱キャストが完了していた『ファイアーボール』を『黒竜バハムート』の顔面に叩き込んだ。

 ゴウゥゥ!!チュドーン!

『ファイアーボール』自体は『黒竜バハムート』の防御魔導で容易く防御されたが、流石に目の前で起きた大爆発に気を逸らされたようで、『ブレス』の為に収束していたマナは霧散していた。

「はぁぁぁぁ!」

 その爆風を突き抜けて、ユナが『黒竜バハムート』に向かって斬りかかる。

 ガキィィィィン!!

 ユナの斬撃は『黒竜バハムート』の堅牢な鱗に施された防御魔導によって火花を散らしながら弾かれた。

「グググ・・・」

 ヴォン!

 ユナの攻撃を受けた『黒竜バハムート』は、まるで邪魔な羽虫を追い払うかの様に、鋭い鉤爪が付いた腕をユナ目掛けて振るう。

 ガキィィィン!!

 ユナは自身の身体よりも圧倒的に大きい腕から振われた攻撃を、飛翔しながら何とか『女神イルティア・レ・ファティマ』で受け止めた。

「くっ!」

 その凄まじい攻撃を受けて、ユナの顔が歪む。

「せいっ!」

 ガキィィィン!

 しかし、ユナは掛け声を出すと、受け止めた剣で『黒竜バハムート』の腕を弾き返した。




 ヴヴヴヴ・・・・。




 ウィィウィイウィィ・・・。

「砲身マナ収束ライフリング術式正常に発動中・・供給マナ収束率六十パーセント・・七十パーセント・・」

 クラリスはユナと『メルティーナ』に翻弄される『黒竜バハムート』を光魔導スクリーン越しに眺めながら、淡々と『ホーリーバスターキャノン』の発射シークェンスをこなしていた。

 それにより、間もなく収束臨界に達するマナが、『ホーリーバスターキャノン』の先端部で二枚のブレード状になった収束器の間で強烈な光を放っていた。

「二アール、ユナ!もうすぐ発射準備が完了するわ!次のフェーズに移るわよ!」

『『了解!』』

 クラリスの通信を聞いたユナと『メルティーナ』はすぐに『プラタナ』の背後へと着地した。

『ナラトス様!詠唱キャストを始めます!』

『承知した。マナのことは心配しなくてよいぞ!たっぷりマナを込めてやるのでな!』

『メルティーナ』が浄化魔導の発動準備を始めた頃、『黒竜バハムート』が『プラタナ』に向かって、その大きな顎を開いた。

 キィィィィィ!!

黒竜バハムート』は口腔を開くと『ブレス』を放つ為にマナを収束し始めた。

 『プラタナ』のコクピット内では、クラリスが深呼吸をしながら慎重に『ホーリーバスターキャノン』の照準を合わせていた。

 ウィウィウィウィウィウィィィィ!

「収束率九十パーセント・・百パーセント!発射準備完了!今回はマニュアル照準ね・・本当にあたしの腕が試されるってわけねっ!」

 ギリギリ・・・。

 今、正に放たれようとしている『黒竜バハムート』の『ブレス』の射線上に相対しているという事実も相まって、照準を合わせる為に操縦レバーを握っているクラリスの手は微かに震えていた。

「落ち着きなさい・・信じるのよ・・ユナの読みはあたっているはずっ!あたしの『ホーリーバスターキャノン』はあいつの『ブレス』なんかには負けないわ!」

 そして、『プラタナ』は『ホーリーバスターキャノン』のトリガーに指をかけた。

「・・・照準、今!さあ、来なさい!」

 キラッ!

 クラリスが『黒竜バハムート』へ照準を合わせた瞬間、激しい閃光が放たれた。

「『ホーリーバスターキャノン』!!発射!!」

 カチャ!

 その閃光に合わせて『プラタナ』も『ホーリーバスターキャノン』のトリガーを引いた。

 ビシュウウウウウウウウウウウウ!

 瞬間、二つの暴力的なマナの光条が真正面からぶつかり合った。

 ビシュウウウウウウウウウウウウ!

「っく!なんて出力なの!?」

 クラリスは防眩術式が発動してもなお白く染まる光魔導スクリーンに目を細めながらも、力強くフィードバックが返ってくる操縦レバーを何とか握り込んで抑えていた。




 ・・・・。

 ・・・・・・・・。




「っつ!なんて馬鹿げた出力なんですか!?およそ生物が放つマナとは考えられません!」

 ユナもまた『プラタナ』の後ろで激しいマナのぶつかり合いを目の当たりにしていた。

「グガァ!?」

黒竜バハムート』は自分の『ブレス』を正面から押し返している『ホーリーバスターキャノン』に驚愕している様であった。

 そして、『ホーリーバスターキャノン』の光条は、徐々に『黒竜バハムート』のブレスを押し返していた。

「っつ!行けます!行けますよ、クラリス!!」

『本当!?』

「はい!もう一息です!」

「二アール、ナラトス!」

 そして、ユナの呼びかけに応じて『メルティーナ』が浄化魔導を発動しようとした瞬間・・。

「グギャアアア!!」

黒竜バハムート』が雄叫びを上げながら、更に一回り大きく口腔を開いた。

 ビシュウウウウウウウウ!!

 直後、『ブレス』のマナ出力が増したのか、今までの優劣が一転して『ブレス』の方が『ホーリーバスターキャノン』の光条を押し返し始めた。

「出力を上げたですって!?」

『ちょっと!?押し返されてるわよ!このままじゃ反対にこっちがやられちゃうわ!』

 クラリスの悲鳴を聞いたユナは顔を顰めた。

「・・・くっ!」

 シュバッ!

 そして、何かを決意した様な表情をすると、ユナは『プラタナ』が抑え込んでいる『ホーリーバスターキャノン』の側へと飛翔した。
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