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第三章 商業国家アーティナイ連邦編

大きな魔導士

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 キィィィー・・。

 ヴォンヴォン・・

 凄まじい初速で飛び出した『メルティーナ』の魔導コンソールに表示されている高度計は、どんどんその数値を増していた。

「凄い!凄いです!ナラトス様!これがナラトス様のお力なのですね!今までの『メルティーナ』とは比べ物になりません!」

「・・・私も『神界大戦』の時代から悠久の時を過ごしてきたが、まさか人間がこれほどのものを作り上げるとは思わなかった」 

「『邪神』として女神ハーティルティアと戦っていた時は、彼奴だけが脅威だと思っていたが、人間達はこうやって力を合わせて『邪神』に打ち勝とうとしているのだな」

 ナラトスは感慨深い様子で語ると、操縦座席の背もたれに身を寄せた。

 ある程度の高度まで上昇した『メルティーナ』が空中で停止していると、程なくしてそれに追いついたハーティ達や『プラタナ』が正面の光魔導スクリーンに映り込んだ。

 そして、今度は味方として『白と黒』の二機が向かい合った。

『どう?『メルティーナ・リバイヴ』の性能は?』

『プラタナ』の拡声魔導から発せられたクラリスの言葉に連動するように、『プラタナ』は腰部にマニピュレーターを当てながら『メルティーナ』へ語りかけた。

『素晴らしいわ!使い勝手は前と変わらないけど、性能は圧倒的に向上しているわ。ありがとう、クラリス・・わたしの『メルティーナ』を残してくれて』

『ううん・・・過去にはお互いいろいろあったけど、こうして一緒に戦える日が来て本当に嬉しく思うわ。これから一緒に頑張って『邪神』から世界を救いましょう!』

 そう言いながら、『プラタナ』は『メルティーナ』へマニピュレーターを差し伸べた。

『クラリス・・』

 そして、『白と黒』の二機は果てしない大地と海が見える広大な大空で握手を交わしたのであった。

『『メルティーナ』は動作に問題なさそうね。ただ、これから一緒に戦っていくには『メルティーナ』にも『リデューシングソード』以外の装備を整えないといけないわね』

 そう言いながら『プラタナ』は顎部にマニピュレーターをやった。

 すると、その様子を見ていたナラトスが言葉を発した。

『それについて私に考えがあるのだが・・・』

『この『メルティーナ』は神白銀プラティウムで作られていると言ったな?』

『うん?ええ。そうよ』

『ならば、コクピットで発動した魔導はそのまま効果を機体の外で起こせるわけだな?』

『まあ理論上はそうだけど、人間が発動する程度の魔導が人工女神アーク・イルティアの武器になり得るとは思わなけど・・』

 クラリスの言葉に対して『メルティーナ』から得意げな声が帰ってきた。

『侮るな、クラリスよ。私も女神ハーティルティア程ではないが、これでも『邪神』の端くれだぞ?そのくらい造作もない。論より証拠だ。早速やってみよう』

『女神ハーティルティアよ。ここから数キロ先に、なるべく強固な広域防御魔導を展開してくれ』

『うん?わかったわ!』

 ハーティはいまいち要領を得ていなかったが、ナラトスの指示通りに遥か彼方の大空へ防御魔導を展開した。


 ヴォンヴォン・・・。

「では始めるぞ、二アール!そなたは女神ハーティルティアの展開した防御魔導に向かって『ファイアーボール』を放ってくれ」

「え!?ナラトス様!?ここでですか?しかも私は見ての通り、あまり放出系魔導が得意ではないのですが・・」

 ユナ程ではないが濃紺という黒い髪色をした二アールは、それ程先天的なマナ出力は高くない。

 その為、普通に魔導を発動すれば大した規模にならない事は目に見えていた。

「大丈夫だ。二アールが魔導を放つと言うよりは拡声魔導越しに『メルティーナ』が魔導を放つというイメージでやってくれ。マナは私が供給する」

「わかりました!とにかくやってみます!」

 そして、二アールは魔導を詠唱キャストしはじめた。

『メルティーナ』は詠唱呪文キャスト・スペルを唱えながら、掌を目標になる防御魔導へとかざした。

『・・・・っ!『ファイアーボール』!』

 ゴウゥゥ!!

 そして、詠唱キャストが完了した『メルティーナ』の掌から巨大な火球が放たれて、遥か彼方へと飛んでいった。

 チュドォォォン!!

 直後、ハーティの防御魔導に命中した『ファイアーボール』は通常の規模とは比べ物にならない威力の大爆発を起こして、大空に轟音を響き渡らせた。

 そして、『メルティーナ』の魔導を目の当たりにした一同は刮目した。

『なるほど!搭乗者の魔導を『人工女神アーク・イルティア』で模倣することで大規模の攻撃魔導を魔導具なしに行使する。いい考えだわ!』


 ヴォンヴォン・・・。

「上手くいきましたね!ナラトス様!」

「ああ。どうやら私の考えは正しかったようだ」

『メルティーナ』のコクピットの中で二人は喜びを分かち合った。

『これなら、二アールがナラトスのマナを借りて『ホーリーアロー』を放てば『邪神』に対しても有効打になるはずよ!さしずめ『大きな魔導士』って感じかしら?』

「これで『メルティーナ』に対する装備の問題も解決しましたね」

「よかった!」

 一部始終を見ていたユナとハーティも、『メルティーナ』の魔導が上手くいった事に目を向け合いながら微笑み合った。




 ・・・・・。

 ・・・・・・・。




 ヒュオオオ・・・。


 ちょうどその時、遥か北の霊峰の頂でもその火球の光は観測された。


「あの光・・・魔導によるものね」

「だけど、前の術者とは違うものかしら?」

「と言う事は、複数の『神族』が蘇っているって事かしらねぇ?」

「・・・ふぅ、だとすれば・・少し厄介ねぇ。はぁ・・あの『女型ハーティルティア』め・・『神界』を奴がせいでこんなチンケな世界で受肉する羽目になって、わたくしの力も大部分が失われる事になったのだから・・憎いったらありゃあしないわ」

「グルルァァァァ!」

 その時、エメラダの後ろで巨大な黒い影が雄叫びをあげ始めた。

「うふふ・・まあいいわ。も大分仕上がってきたし、ここは一つ・・わたくしから挨拶に伺おうかしらね」

「あぁ・・久しぶりの『た・た・か・い』!胸が高鳴るわぁぁ!」

 そう言いながら、エメラダは恍惚な表情で自身の豊満な身体を抱き締めた。








~設定資料~
人工女神メルティーナ・リバイヴ

 帝都決戦時、『プラタナ』の魔導収束砲により大破したものをクラリスが修復した。修復時に完全プラティウム化がなされ、その性能を大幅に向上させた。
 また、素材による軽量化も実現した。
 動力系統や流体ミスリルによるマナ伝達装置をオミットした事によりコクピット空間が拡大され、代わりに副操縦士からマナを供給する事で動作する。
 ナラトスの思いつきで直接魔導を発動する事ができるようになった。

スペック

人工女神『メルティーナ・リバイヴ』
全高17.2メートル
乾燥重量 41.7トン システム重量 44.5トン
動力 なし(副操縦者からのマナ供給による動作)
動力伝達系 装甲伝達
装甲 プラティウム
定格出力 副操縦者のマナ出力による
最高飛行速度 時速3400km/h (機体耐久性能による)
想定耐用時間 無制限
搭載魔導
飛翔魔導 上級防御魔導 
還元魔導 『リデューシングソード』に搭載





人工女神『プラタナ』(改修後)

 帝都決戦による褒美で帝国から譲られたミスリル鋼により、ハーティが完全プラティウム化を行った機体。
 完全プラティウム化によってマナ劣化が起こらなくなった為に稼働時間の制限が無くなった。
 また、従来のプラティウム・ケーブルによるマナ伝達から外部装甲による直接的なマナ伝達へとシステムを変更した事で防御魔導の強度が増して性能が向上した。
対邪神用兵器として『ホーリーバスターキャノン』、対魔獣用に『マギ・ライフル』を追加した。


スペック

人工女神『プラタナ』(改修後)
全高19.4メートル
乾燥重量 38.9トン システム重量 45.9トン
動力 プラティウム・マギフォーミュラ・マナ・ジェネレーター 
動力伝達系 装甲伝達
装甲 プラティウム
定格出力 196000サイクラ 最大出力 不明(機体によるテストが不可能な為測定不能)
最高飛行速度 時速3400km/h(機体耐久性能による)
想定耐用時間   無制限
搭載魔導
飛翔魔導 上級防御魔導 
還元魔導 『リデューシングソード』に搭載
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