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第一章 地球圏奪還編
月面衛星軌道会戦
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ビシュゥゥゥ!!!
ズドーン!!
激しい砲撃の応酬が繰り広げられる中、爆散していく艦船や砲撃を受け光り輝くシールド面があちらこちらでみられる。
火蓋を切って落とされた四年ぶりの大会戦は激しさを増していた。
帝国の旗色である真紅に彩られた無数の艦船が整列しているその中心で一隻の機動戦艦が佇んでいた。
太陽系統一帝国宇宙軍第五艦隊旗艦 機動戦艦ナゴーブ。
美しい曲線を各所に用いた大型の真紅の艦船の船橋は帝国様式とよばれる非常に豪華なものとなっていた。
そして船橋の中央で一段と高くなった場所で、これまた豪華な装飾をあしらった浮遊座席に足を組んで座している美少女がいた。
彼女は緩やかなウェーブがかかった美しい金髪のロングヘアをしており、その瞳は帝国の旗色と同じ鮮やかな赤色であった。
帝国司令官の豪華な軍服に身を包み、細くすらっとした白磁のような美しい腕が伸びる先には豪華な扇子が握られている。
黒と赤を基調とした帝国軍服のタイトなスカートからは同じく白く美しい脚がのびてそれを組むことによりその魅力が強調されている。
二アール・フォン・ソフィミア中将。 彼女は帝国宇宙軍第五艦隊の総司令官であり、同時に革命軍時代から続く貴族の侯爵令嬢である。
第一次星間大戦時代、地球連合国家はあくまでも火星は連合国家の一自治区という位置付けをしていたが、火星側とすれば当初から火星は独立した国家であると主張していた。
連合国家は早くから民主化を行ったことにより、トップこそミリフュージア一族が統治しているが、それ以下や実質的な政治活動については選挙により選抜された議員によって構成された議会による民主国家である。
それに対して火星自治区は国家として公に認めれられてはいなかったが、第一次星間大戦時代から火星圏において独自の封権制度を設けていた。
現在は帝国として独立宣言をしている為、火星側としてはジル・グレイル・ジャーナリスを現皇帝としてその他貴族達が火星の各自治地域を治めたり、軍の要職に就いていたりしている。
二アール・フォン・ソフィミア中将も帝国貴族であるソフィミア侯爵令嬢として、二十歳に満たない年齢ながら帝国宇宙軍の艦隊を任されていた。
そして、彼女が指揮する第五艦隊が会戦を始めてからすでに六時間が経過しようとしていた。
「シュバイツ!」
彼女が高い声で呼ぶと、それに応じて初老の男性が二アールの傍に歩み寄った。
帝国において艦隊司令官などは専ら貴族であり、軍人でないにしろ身の回りの世話をするために専属の執事が乗艦するのは珍しくない。
その初老の男性は二アールの専属執事であり、正規軍人ではないが彼女の立場を補佐する役割である。
シュバイツは優雅な所作で二アールへ向け一礼した。
「シュバイツ! 現状の戦局はどうなっているの!?」
「はい、二アール様。 現在戦局は拮抗しており地球陣営の艦隊を一割程度撃破。 こちらも同じく一割程度の損失ですが、数の利を考えるとこちらが少々苦戦を強いられているというところでしょうか」
「・・・・あの敵旗艦の砲撃が痛手になったわね・・・まったく忌々しい!」
同じ一割でも火星陣営の損失艦数は五千を超えている。
倍以上の数がありながらも月からの対宙結晶体レーザーや荷電粒子砲による援護射撃によりじわじわと後退させられているのが現実である。
いくら月の大気がない為に減衰が少ないにしても月面の限られた設備しかない対宙砲台はさしたる脅威ではない。
何よりもいままで二、三度撃たれた敵艦隊旗艦からの対艦結晶体レーザーがその損失の大部分を占めていた。
現在火星勢力には結晶体レンズを製造する技術がないために結晶体レーザーは存在しない。
艦隊戦においてEBシールドと重力式跳弾装甲を単発で貫通しうる兵器を持っているのは大きなアドバンテージである。
いくら機動戦艦ナゴーブの強固なシールドがあったとしても、数時間に一度砲撃される恐怖に心休まる暇はない。
二アールの表情には疲労が浮かんでいた。
「とにかく所詮は脅威と言ってもあの一隻・・・あの忌々しい艦船を沈めればこちらが勝ったも同然・・!」
「お父様の顔に泥を塗らないためにも早々にケリをつけないといけないわ!」
「シュバイツ! 第六艦隊のラクナウェル中将に繋いで!」
「かしこまりました」
二アールは基本的に軍人ではないシュバイツに指示を行う。
本来であれば船橋にいる各人員へ指示を行うのが常だが、すでにクルーたちはシュバイツを経て指示を受けることに慣れていた。
二アールの指示のもと開かれた通信画面にはさえない表情をした壮年の男性が映りこんだ。
彼こそが帝国軍第六艦隊司令官であるラクナウェル中将である。
「ラクナウェル卿! こちら二アール・フォン・ソフィミア中将です!」
「これはこれは二アール嬢。 そちらもお疲れのご様子ですな」
そういいながらラクナウェルは冴えない顔で俄かに微笑む。
「ラクナウェル卿、此度あなたの艦隊と合同作戦を行うことにより数は敵の倍ほどありますが、なにより相手の結晶体レーザーが厄介です」
「それは同感ですな」
「そこであなたの艦隊と魚鱗陣形を取って敵旗艦の撃破を最優先として攻撃します」
「相手は月を死守しないといけない以上、旗艦が落ちた程度では退かないでしょうがあれがある限りこちらへの脅威は変わりません」
魚鱗陣形とは、艦隊を円錐状の形状にし旗艦を円錐底辺の中心に配置する陣形である。
自ずと円錐中心に火力が集中し、なおかつ前衛の艦船によるEBシールド多重展開により旗艦を保護する陣形である。
結晶体レーザーを照射する際は味方を巻き込まないようにするために旗艦の射線上に護りの艦を配置できない。
照射前に陣形変更を行った隙を狙って集中火力で敵を沈める手筈で二アールは指示をした。
「了解しました。二アール嬢」
ラクナウェルは帝国貴族における男爵当主であり、爵位こそ上であるソフィミア家であるがあくまで侯爵令嬢である二アールの下手に出る必要など皆無であるが、二アールの手腕もさることながら帝国でも力の強いソフィミア卿が背後にいるのでどうしても気を使ってしまう。
そこには軍の階級以上の隔たりがあった。
二アールは通信回線を閉じ、陣形変更を行うべく艦船を回頭する指示を出そうとしていた。
その時、広域探索器に反応があった。
「二アール様! 本艦に多数のSAが接近!」
「ちっ、敵陣営の一番槍が来たか!」
索敵手の報告に二アールは舌打ちをする。
「敵SA対艦アンチシールド高速ミサイル多数発射!」
SAがたとえ二十メートル近い大きさを持っていたとしても、数キロを超える大きさの軍用艦船へ直接攻撃をしたところで大したダメージは与えられない。
そのため近代艦隊戦において機動兵器であるSAの役割は敵艦船のシールドを破壊すること、そしてシールドを破壊するためにやってきた相手のSAに対する迎撃である。
対艦アンチシールド高速ミサイルはその名の通り対艦用の高速ミサイルである。
その本体は多段式となっており、SAから発射された後は高速で敵艦へ飛翔しシールド面に着弾する。
着弾の瞬間に弾頭部分がEBシールドを局所的に破壊し、本体から次段を発射する。
発射された次段は自動的に艦船外部にブレードのような形で複数枚展開されたシールド展開器に着弾してシールド展開能力を破壊する。
シールド展開器を破壊された艦船は著しく防御力が低下してしまい、以降の艦砲被弾により致命的なダメージを負うことになる。
そのため、雷装とよばれる数発の対艦アンチシールド高速ミサイルを搭載したSAは自艦を発艦後敵艦隊へと向かい、迎撃の為向かってくるSAを相手にしながら複数の敵艦船のシールド展開器破壊を狙い、ミサイルを撃ち尽くしたら速やかに帰艦するという戦闘スタイルを行う。
もちろん、艦船内にいるクルーよりも危険が伴うが、ある意味では自身で何もできないまま搭乗艦と沈んで死亡するリスクは少ない。
「迎撃レーザー準備! ミサイル諸とも撃ち落としなさい!」
そういいながら二アールは扇子を砲撃主に向けた。
「御意!」
そのとき、一人の少女が二アールに歩み寄った。
「二アール様。ここは私が」
「ラーナ、まだ出撃する事態では無いわ」
二アールに歩み寄った少女は名をラーナ・ラグナと言い、二アール専属の侍女であり護衛である。
彼女は二アールよりも四歳年上であり、幼少から二アールと供に育ち火星面上にある機密型人工都市であるソフィミア侯爵領で軍の訓練を供に行ってきた。
シュバイツと異なり、彼女は軍属にあり生身での護衛はもちろんであるが、艦隊戦において指揮を振るう二アールの乗艦する旗艦をSAで護衛する役割もある。
そして、彼女のSAによる戦闘技術は帝国でも有数であった。
しかし二アールにとって特別な思い入れのある彼女をSAに乗せて戦わせることはいつもまでたっても慣れないことであった。
それを感じ取ったラーナは二アールにその端正な顔を向けながら自分の思いを述べた。
「二アール様、私は貴方様の護衛です。 今こそ二アール様の護衛として戦うところでございます」
「それに貴方様にはこれからも手腕を振るってもらわなければなりません。その為には万が一にも貴方様が討たれることはなりませんし、私も討たれる気はございません」
「有象無象の輩などに私が討たれる道理はありませんから。ですのでご安心ください」
「必ずや二アール様を御護りします」
そういいながらラーナは一礼した。
その姿はまさに騎士のそれである。
「・・・・・ラーナがそういうのでしたら止めはしないわ・・けど、必ず戻って来るのよ!」
「・・・御意!」
「それではラーナ、これよりSAにて出撃します」
そういいながらラーナは二アールの前より駆け出した。
「帝国の為・・・そしてソフィミア家の名誉の為・・・この会戦、必ず勝利を手に入れるわ!!」
二アールはラーナを見送った後、そう一人言ちながら全天球スクリーンに広がる戦場を睨み付けた。
~設定資料~
太陽系統一帝国宇宙軍第五艦隊旗艦 ナラトス級機動戦艦ナゴーブ
太陽系統一帝国艦隊で採用されている旗艦用量産型機動戦艦である。
第四艦隊旗艦機動戦艦ナラトスと共通設計の艦船であり、ナラトスシリーズの二番艦にあたる。
強固なシールド防御力を得るために大型の液化グラビディウム電池を搭載している為、艦船としては大型である。
帝国貴族が乗艦するために、その内部構造物や外観は帝国式とよばれる豪華な見た目となっている。
スペック
太陽系統一帝国宇宙軍第五艦隊旗艦 ナラトス級機動戦艦『ナゴーブ』
型式 NR-02 ナラトスシリーズ二番艦
全長2990m
全高990m
全幅1110m
満載排水量 19,230Mt
乗員 420名
初期起動機関 単発式対消滅機関
巡航機関 双発式グラビディウム機関
跳躍航法機関 アンチクァンタム亜空間機関
巡航機関定格出力 1,970,000Gw
電源 艦船用液化グラビディウム電源ユニット2基
装甲 ハイチタニウム跳弾装甲+EBバリアシールド
兵装
主砲 対艦荷電粒子砲6門
対機動兵器用短距離迎撃レーザー90門
ズドーン!!
激しい砲撃の応酬が繰り広げられる中、爆散していく艦船や砲撃を受け光り輝くシールド面があちらこちらでみられる。
火蓋を切って落とされた四年ぶりの大会戦は激しさを増していた。
帝国の旗色である真紅に彩られた無数の艦船が整列しているその中心で一隻の機動戦艦が佇んでいた。
太陽系統一帝国宇宙軍第五艦隊旗艦 機動戦艦ナゴーブ。
美しい曲線を各所に用いた大型の真紅の艦船の船橋は帝国様式とよばれる非常に豪華なものとなっていた。
そして船橋の中央で一段と高くなった場所で、これまた豪華な装飾をあしらった浮遊座席に足を組んで座している美少女がいた。
彼女は緩やかなウェーブがかかった美しい金髪のロングヘアをしており、その瞳は帝国の旗色と同じ鮮やかな赤色であった。
帝国司令官の豪華な軍服に身を包み、細くすらっとした白磁のような美しい腕が伸びる先には豪華な扇子が握られている。
黒と赤を基調とした帝国軍服のタイトなスカートからは同じく白く美しい脚がのびてそれを組むことによりその魅力が強調されている。
二アール・フォン・ソフィミア中将。 彼女は帝国宇宙軍第五艦隊の総司令官であり、同時に革命軍時代から続く貴族の侯爵令嬢である。
第一次星間大戦時代、地球連合国家はあくまでも火星は連合国家の一自治区という位置付けをしていたが、火星側とすれば当初から火星は独立した国家であると主張していた。
連合国家は早くから民主化を行ったことにより、トップこそミリフュージア一族が統治しているが、それ以下や実質的な政治活動については選挙により選抜された議員によって構成された議会による民主国家である。
それに対して火星自治区は国家として公に認めれられてはいなかったが、第一次星間大戦時代から火星圏において独自の封権制度を設けていた。
現在は帝国として独立宣言をしている為、火星側としてはジル・グレイル・ジャーナリスを現皇帝としてその他貴族達が火星の各自治地域を治めたり、軍の要職に就いていたりしている。
二アール・フォン・ソフィミア中将も帝国貴族であるソフィミア侯爵令嬢として、二十歳に満たない年齢ながら帝国宇宙軍の艦隊を任されていた。
そして、彼女が指揮する第五艦隊が会戦を始めてからすでに六時間が経過しようとしていた。
「シュバイツ!」
彼女が高い声で呼ぶと、それに応じて初老の男性が二アールの傍に歩み寄った。
帝国において艦隊司令官などは専ら貴族であり、軍人でないにしろ身の回りの世話をするために専属の執事が乗艦するのは珍しくない。
その初老の男性は二アールの専属執事であり、正規軍人ではないが彼女の立場を補佐する役割である。
シュバイツは優雅な所作で二アールへ向け一礼した。
「シュバイツ! 現状の戦局はどうなっているの!?」
「はい、二アール様。 現在戦局は拮抗しており地球陣営の艦隊を一割程度撃破。 こちらも同じく一割程度の損失ですが、数の利を考えるとこちらが少々苦戦を強いられているというところでしょうか」
「・・・・あの敵旗艦の砲撃が痛手になったわね・・・まったく忌々しい!」
同じ一割でも火星陣営の損失艦数は五千を超えている。
倍以上の数がありながらも月からの対宙結晶体レーザーや荷電粒子砲による援護射撃によりじわじわと後退させられているのが現実である。
いくら月の大気がない為に減衰が少ないにしても月面の限られた設備しかない対宙砲台はさしたる脅威ではない。
何よりもいままで二、三度撃たれた敵艦隊旗艦からの対艦結晶体レーザーがその損失の大部分を占めていた。
現在火星勢力には結晶体レンズを製造する技術がないために結晶体レーザーは存在しない。
艦隊戦においてEBシールドと重力式跳弾装甲を単発で貫通しうる兵器を持っているのは大きなアドバンテージである。
いくら機動戦艦ナゴーブの強固なシールドがあったとしても、数時間に一度砲撃される恐怖に心休まる暇はない。
二アールの表情には疲労が浮かんでいた。
「とにかく所詮は脅威と言ってもあの一隻・・・あの忌々しい艦船を沈めればこちらが勝ったも同然・・!」
「お父様の顔に泥を塗らないためにも早々にケリをつけないといけないわ!」
「シュバイツ! 第六艦隊のラクナウェル中将に繋いで!」
「かしこまりました」
二アールは基本的に軍人ではないシュバイツに指示を行う。
本来であれば船橋にいる各人員へ指示を行うのが常だが、すでにクルーたちはシュバイツを経て指示を受けることに慣れていた。
二アールの指示のもと開かれた通信画面にはさえない表情をした壮年の男性が映りこんだ。
彼こそが帝国軍第六艦隊司令官であるラクナウェル中将である。
「ラクナウェル卿! こちら二アール・フォン・ソフィミア中将です!」
「これはこれは二アール嬢。 そちらもお疲れのご様子ですな」
そういいながらラクナウェルは冴えない顔で俄かに微笑む。
「ラクナウェル卿、此度あなたの艦隊と合同作戦を行うことにより数は敵の倍ほどありますが、なにより相手の結晶体レーザーが厄介です」
「それは同感ですな」
「そこであなたの艦隊と魚鱗陣形を取って敵旗艦の撃破を最優先として攻撃します」
「相手は月を死守しないといけない以上、旗艦が落ちた程度では退かないでしょうがあれがある限りこちらへの脅威は変わりません」
魚鱗陣形とは、艦隊を円錐状の形状にし旗艦を円錐底辺の中心に配置する陣形である。
自ずと円錐中心に火力が集中し、なおかつ前衛の艦船によるEBシールド多重展開により旗艦を保護する陣形である。
結晶体レーザーを照射する際は味方を巻き込まないようにするために旗艦の射線上に護りの艦を配置できない。
照射前に陣形変更を行った隙を狙って集中火力で敵を沈める手筈で二アールは指示をした。
「了解しました。二アール嬢」
ラクナウェルは帝国貴族における男爵当主であり、爵位こそ上であるソフィミア家であるがあくまで侯爵令嬢である二アールの下手に出る必要など皆無であるが、二アールの手腕もさることながら帝国でも力の強いソフィミア卿が背後にいるのでどうしても気を使ってしまう。
そこには軍の階級以上の隔たりがあった。
二アールは通信回線を閉じ、陣形変更を行うべく艦船を回頭する指示を出そうとしていた。
その時、広域探索器に反応があった。
「二アール様! 本艦に多数のSAが接近!」
「ちっ、敵陣営の一番槍が来たか!」
索敵手の報告に二アールは舌打ちをする。
「敵SA対艦アンチシールド高速ミサイル多数発射!」
SAがたとえ二十メートル近い大きさを持っていたとしても、数キロを超える大きさの軍用艦船へ直接攻撃をしたところで大したダメージは与えられない。
そのため近代艦隊戦において機動兵器であるSAの役割は敵艦船のシールドを破壊すること、そしてシールドを破壊するためにやってきた相手のSAに対する迎撃である。
対艦アンチシールド高速ミサイルはその名の通り対艦用の高速ミサイルである。
その本体は多段式となっており、SAから発射された後は高速で敵艦へ飛翔しシールド面に着弾する。
着弾の瞬間に弾頭部分がEBシールドを局所的に破壊し、本体から次段を発射する。
発射された次段は自動的に艦船外部にブレードのような形で複数枚展開されたシールド展開器に着弾してシールド展開能力を破壊する。
シールド展開器を破壊された艦船は著しく防御力が低下してしまい、以降の艦砲被弾により致命的なダメージを負うことになる。
そのため、雷装とよばれる数発の対艦アンチシールド高速ミサイルを搭載したSAは自艦を発艦後敵艦隊へと向かい、迎撃の為向かってくるSAを相手にしながら複数の敵艦船のシールド展開器破壊を狙い、ミサイルを撃ち尽くしたら速やかに帰艦するという戦闘スタイルを行う。
もちろん、艦船内にいるクルーよりも危険が伴うが、ある意味では自身で何もできないまま搭乗艦と沈んで死亡するリスクは少ない。
「迎撃レーザー準備! ミサイル諸とも撃ち落としなさい!」
そういいながら二アールは扇子を砲撃主に向けた。
「御意!」
そのとき、一人の少女が二アールに歩み寄った。
「二アール様。ここは私が」
「ラーナ、まだ出撃する事態では無いわ」
二アールに歩み寄った少女は名をラーナ・ラグナと言い、二アール専属の侍女であり護衛である。
彼女は二アールよりも四歳年上であり、幼少から二アールと供に育ち火星面上にある機密型人工都市であるソフィミア侯爵領で軍の訓練を供に行ってきた。
シュバイツと異なり、彼女は軍属にあり生身での護衛はもちろんであるが、艦隊戦において指揮を振るう二アールの乗艦する旗艦をSAで護衛する役割もある。
そして、彼女のSAによる戦闘技術は帝国でも有数であった。
しかし二アールにとって特別な思い入れのある彼女をSAに乗せて戦わせることはいつもまでたっても慣れないことであった。
それを感じ取ったラーナは二アールにその端正な顔を向けながら自分の思いを述べた。
「二アール様、私は貴方様の護衛です。 今こそ二アール様の護衛として戦うところでございます」
「それに貴方様にはこれからも手腕を振るってもらわなければなりません。その為には万が一にも貴方様が討たれることはなりませんし、私も討たれる気はございません」
「有象無象の輩などに私が討たれる道理はありませんから。ですのでご安心ください」
「必ずや二アール様を御護りします」
そういいながらラーナは一礼した。
その姿はまさに騎士のそれである。
「・・・・・ラーナがそういうのでしたら止めはしないわ・・けど、必ず戻って来るのよ!」
「・・・御意!」
「それではラーナ、これよりSAにて出撃します」
そういいながらラーナは二アールの前より駆け出した。
「帝国の為・・・そしてソフィミア家の名誉の為・・・この会戦、必ず勝利を手に入れるわ!!」
二アールはラーナを見送った後、そう一人言ちながら全天球スクリーンに広がる戦場を睨み付けた。
~設定資料~
太陽系統一帝国宇宙軍第五艦隊旗艦 ナラトス級機動戦艦ナゴーブ
太陽系統一帝国艦隊で採用されている旗艦用量産型機動戦艦である。
第四艦隊旗艦機動戦艦ナラトスと共通設計の艦船であり、ナラトスシリーズの二番艦にあたる。
強固なシールド防御力を得るために大型の液化グラビディウム電池を搭載している為、艦船としては大型である。
帝国貴族が乗艦するために、その内部構造物や外観は帝国式とよばれる豪華な見た目となっている。
スペック
太陽系統一帝国宇宙軍第五艦隊旗艦 ナラトス級機動戦艦『ナゴーブ』
型式 NR-02 ナラトスシリーズ二番艦
全長2990m
全高990m
全幅1110m
満載排水量 19,230Mt
乗員 420名
初期起動機関 単発式対消滅機関
巡航機関 双発式グラビディウム機関
跳躍航法機関 アンチクァンタム亜空間機関
巡航機関定格出力 1,970,000Gw
電源 艦船用液化グラビディウム電源ユニット2基
装甲 ハイチタニウム跳弾装甲+EBバリアシールド
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主砲 対艦荷電粒子砲6門
対機動兵器用短距離迎撃レーザー90門
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