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プロローグ
少年期4
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戦闘支援システム『目為』ーーー。
このシステムは対人白兵戦用に開発されたもので、腰に装着した本体には、折りたたみ格納されている長さ80センチメートルくらいでブレード状の形をした、クラビディウムで出来ている可動式重力制御板が付いている。
装着するために使うベルトには使用者の武器が付けれるようになっている。
本体との接続は、この時代の人間全てが生まれてすぐ投与されるナノマシンが、投与者の成長に伴い発生させる拡張端子(首の後ろと腰に投与後2、3年で発生する)に行う。
また、起動すると血中ナノマシンとの通信により、装着者の視界に様々な情報を表示する。
表示する情報は様々で、主には周囲数百メートル範囲内のレーダー機能や手持ちの射撃武器を持って狙いたい目標を意識すると、腕の筋肉の動きに介入して簡易ロックオンを行なったりもできる。
一番の機能は本体への思考制御で、自身にかかる重力を操り長距離跳躍や壁、屋根を走るなどの三次元的な動きを実現することにある。
また、通常機能としては存在しないがジェスが使う事によって更なる機能が加わる。
ジェスは腰の横についてるホルスターから本体とケーブルでつながった、まるで銃のグリップだけになった様なものを抜いて両手で構えた。
ヴゥゥゥゥンーー。
ジェスが力を込めた瞬間、手に持ったグリップから光の刃が発生した。
エーテルブレードである。
この時代の人間は遺伝子改良の代償により、ナノマシンを生後間も無く投与して生命活動の保全を行わないと生存することができない。
しかし、ごく僅かな人間に限りナノマシンがなくても生存できるものがいる。
仮にそのような人間であっても生後すぐにそれが判別できるわけではなく、どちらにせよもれなくナノマシンは投与されるがために、普通の人間には持ち得ない能力をプラスで得る事になる。
それは体内のエーテルを体外に任意で放出できる能力であり、それができる人間を旧世代の人間に準えて『オリジナル』という。
ジェスが放出したエーテルは『目為』に組み込まれたエーテルデバイスーージェスの持つグリップにより実体化する。
物質の存在を司るエーテルは、一度体外へ放出されると付近にあるあらゆる物質を自身と対消滅させながら、宇宙空間を満たす『無』の特性を持つエーテルへ還元する性質を持つ。
つまり、事実上あらゆる物質を抵抗なく切断する剣となる。
ただし、エーテル抽出に膨大なカロリーを消費するために長時間使用することができないことと、生命活動の根源である自らのエーテルを消費するために、使用時間により自分の寿命を削っていく諸刃の剣である。
ジェスはエーテルブレードを構えながら、自身の後方に向け斥力を発生させて勢いよく飛び出した。
その姿に、前方にいた革命軍のSAが気づいた。
「人間? 生身で突っ込んでくるだと!? 正気か?!」
すかさずその機体は、ジェスに向けビームを連射するーー。
「オーバードライヴ!」
ジェスが叫んだ瞬間、ジェスの感じる世界がスローモーションになる。
これも『オリジナル』が持つ能力の一つで、普通の人間が不足をナノマシンで補うのに対し、元々完成した脳機能にナノマシンが付加された形となることになる『オリジナル』は、ナノマシンの余剰処理能力を使うことができる。
これにより高速化した脳機能が、まるで世界をスローモーションにしたように見せるのだ。
ジェスはオーバードライヴと重力制御盤による超高機動で敵の攻撃を予測回避しながら接近する。
「そんなチンケなプレードで何ができる!」
たしかに対人用の一般的なビームブレードではSAのハイチタニウム装甲に有効打を与えられない。
ケーブルが繋がっている以外に見た目がビームブレードと大差ない為に勘違いしたようだ。
しかしこれはエーテルブレードである。
もはやそれがどんな素材かなど関係ない。
ジェスが会敵して横薙ぎにブレードを振った瞬間ーーー。
なんの抵抗もなくのSAの脚部が切断された。
宇宙ならともかく地上において脚部を失ったSAなど戦闘不能に近い。
それにいくら全高が20メートルほどあっても、脚部であれば一撃で破壊できる。
キッチリとコクピットにもエーテルブレードを突き立ててかき混ぜるように動かして、搭乗者にトドメを刺してから次の目標に向かった。
「な、なんなんだ?! あれは?!」
SAに比べたら小人のような人間がSAを斬り伏せているのを見て、革命軍のパイロットの一人が戦慄する。
そして次はこちらに向かってその人間が迫ってくる。
「うわああ! 来るなああああ!」
それはジェスに向かってビームを滅多打ちにするが全く当たらない。
ディスプレイ正面に映るその人間とはまだ距離があったが、その人間が間合いに入る前にブレードを横薙ぎに振ったように見えた。
その直後ーー。
ブッシャァァァァ!
「ーーーへ?」
突然自分のコクピットが真っ赤に染まって情けない声が出た。
そして自分の下半身が脚部コントローラーに繋がったまま胴体から離れてるのが見えた。
それがそのパイロットが見た最期の光景であった。
ジェスは、まだ敵まで距離があったが弾幕を避けきれなくなるのを恐れてブレードを飛ばしたのだ。
エーテルデバイスには遠距離にエーテルを飛ばすためのガンタイプもある。
だが、対消滅による減衰が激しい為に射程が短いが、無理やりブレードを飛ばすことも可能なのだ。
あまり回数をこなすと激しく体力を消費するのがネックだが・・・。
それを見た別の数機が上空へ飛翔する。
『目為』の重力制御は三次元的な戦闘を補助はするものの、空を飛ぶことはできない。
こちらの攻撃が届かない上空から狙い打ちするのだろう。
ジェスはすかさず視界のレーダーから付近の機体位置を把握して高速思考でコースを考え、一番近いものへ跳躍した。
弾幕をかいくぐりながら近くの機体の胸部に摑みかかる。
そしてコクピットを切りつけたら、その機体を足掛かりにして次の機体へと跳躍した!!
次々と機体を渡りながらコクピットやジェネレーター、ブースターを切りつけてのSAを沈めていった。
「そんな、馬鹿なっ?!」
エンジェル9と言われている少女は目の前の現実に戦慄した。
いくら『目為』を使った高速機動とはいえ、複数ののSAと戦える人間など見たこともない。
あらかたのSAを沈めたジェスは、そのエンジェル9が乗る機体を最後の1機と確認して飛びかかった。
まるで貴公子が舞う様に戦うその少年が迫ってくる。
ディスプレイでしっかりと表情まで見える様になったその美しい少年の顔は---。
まるで狂気に歪んでいる様であった・・・。
たった一人の少年が、燃え盛る基地を生身で駆け抜け革命軍のSA30機あまりと渡り合ったこの戦いは---。
のちに『紅蓮の貴公子』という異名とともに語り継がれることとなる。
このシステムは対人白兵戦用に開発されたもので、腰に装着した本体には、折りたたみ格納されている長さ80センチメートルくらいでブレード状の形をした、クラビディウムで出来ている可動式重力制御板が付いている。
装着するために使うベルトには使用者の武器が付けれるようになっている。
本体との接続は、この時代の人間全てが生まれてすぐ投与されるナノマシンが、投与者の成長に伴い発生させる拡張端子(首の後ろと腰に投与後2、3年で発生する)に行う。
また、起動すると血中ナノマシンとの通信により、装着者の視界に様々な情報を表示する。
表示する情報は様々で、主には周囲数百メートル範囲内のレーダー機能や手持ちの射撃武器を持って狙いたい目標を意識すると、腕の筋肉の動きに介入して簡易ロックオンを行なったりもできる。
一番の機能は本体への思考制御で、自身にかかる重力を操り長距離跳躍や壁、屋根を走るなどの三次元的な動きを実現することにある。
また、通常機能としては存在しないがジェスが使う事によって更なる機能が加わる。
ジェスは腰の横についてるホルスターから本体とケーブルでつながった、まるで銃のグリップだけになった様なものを抜いて両手で構えた。
ヴゥゥゥゥンーー。
ジェスが力を込めた瞬間、手に持ったグリップから光の刃が発生した。
エーテルブレードである。
この時代の人間は遺伝子改良の代償により、ナノマシンを生後間も無く投与して生命活動の保全を行わないと生存することができない。
しかし、ごく僅かな人間に限りナノマシンがなくても生存できるものがいる。
仮にそのような人間であっても生後すぐにそれが判別できるわけではなく、どちらにせよもれなくナノマシンは投与されるがために、普通の人間には持ち得ない能力をプラスで得る事になる。
それは体内のエーテルを体外に任意で放出できる能力であり、それができる人間を旧世代の人間に準えて『オリジナル』という。
ジェスが放出したエーテルは『目為』に組み込まれたエーテルデバイスーージェスの持つグリップにより実体化する。
物質の存在を司るエーテルは、一度体外へ放出されると付近にあるあらゆる物質を自身と対消滅させながら、宇宙空間を満たす『無』の特性を持つエーテルへ還元する性質を持つ。
つまり、事実上あらゆる物質を抵抗なく切断する剣となる。
ただし、エーテル抽出に膨大なカロリーを消費するために長時間使用することができないことと、生命活動の根源である自らのエーテルを消費するために、使用時間により自分の寿命を削っていく諸刃の剣である。
ジェスはエーテルブレードを構えながら、自身の後方に向け斥力を発生させて勢いよく飛び出した。
その姿に、前方にいた革命軍のSAが気づいた。
「人間? 生身で突っ込んでくるだと!? 正気か?!」
すかさずその機体は、ジェスに向けビームを連射するーー。
「オーバードライヴ!」
ジェスが叫んだ瞬間、ジェスの感じる世界がスローモーションになる。
これも『オリジナル』が持つ能力の一つで、普通の人間が不足をナノマシンで補うのに対し、元々完成した脳機能にナノマシンが付加された形となることになる『オリジナル』は、ナノマシンの余剰処理能力を使うことができる。
これにより高速化した脳機能が、まるで世界をスローモーションにしたように見せるのだ。
ジェスはオーバードライヴと重力制御盤による超高機動で敵の攻撃を予測回避しながら接近する。
「そんなチンケなプレードで何ができる!」
たしかに対人用の一般的なビームブレードではSAのハイチタニウム装甲に有効打を与えられない。
ケーブルが繋がっている以外に見た目がビームブレードと大差ない為に勘違いしたようだ。
しかしこれはエーテルブレードである。
もはやそれがどんな素材かなど関係ない。
ジェスが会敵して横薙ぎにブレードを振った瞬間ーーー。
なんの抵抗もなくのSAの脚部が切断された。
宇宙ならともかく地上において脚部を失ったSAなど戦闘不能に近い。
それにいくら全高が20メートルほどあっても、脚部であれば一撃で破壊できる。
キッチリとコクピットにもエーテルブレードを突き立ててかき混ぜるように動かして、搭乗者にトドメを刺してから次の目標に向かった。
「な、なんなんだ?! あれは?!」
SAに比べたら小人のような人間がSAを斬り伏せているのを見て、革命軍のパイロットの一人が戦慄する。
そして次はこちらに向かってその人間が迫ってくる。
「うわああ! 来るなああああ!」
それはジェスに向かってビームを滅多打ちにするが全く当たらない。
ディスプレイ正面に映るその人間とはまだ距離があったが、その人間が間合いに入る前にブレードを横薙ぎに振ったように見えた。
その直後ーー。
ブッシャァァァァ!
「ーーーへ?」
突然自分のコクピットが真っ赤に染まって情けない声が出た。
そして自分の下半身が脚部コントローラーに繋がったまま胴体から離れてるのが見えた。
それがそのパイロットが見た最期の光景であった。
ジェスは、まだ敵まで距離があったが弾幕を避けきれなくなるのを恐れてブレードを飛ばしたのだ。
エーテルデバイスには遠距離にエーテルを飛ばすためのガンタイプもある。
だが、対消滅による減衰が激しい為に射程が短いが、無理やりブレードを飛ばすことも可能なのだ。
あまり回数をこなすと激しく体力を消費するのがネックだが・・・。
それを見た別の数機が上空へ飛翔する。
『目為』の重力制御は三次元的な戦闘を補助はするものの、空を飛ぶことはできない。
こちらの攻撃が届かない上空から狙い打ちするのだろう。
ジェスはすかさず視界のレーダーから付近の機体位置を把握して高速思考でコースを考え、一番近いものへ跳躍した。
弾幕をかいくぐりながら近くの機体の胸部に摑みかかる。
そしてコクピットを切りつけたら、その機体を足掛かりにして次の機体へと跳躍した!!
次々と機体を渡りながらコクピットやジェネレーター、ブースターを切りつけてのSAを沈めていった。
「そんな、馬鹿なっ?!」
エンジェル9と言われている少女は目の前の現実に戦慄した。
いくら『目為』を使った高速機動とはいえ、複数ののSAと戦える人間など見たこともない。
あらかたのSAを沈めたジェスは、そのエンジェル9が乗る機体を最後の1機と確認して飛びかかった。
まるで貴公子が舞う様に戦うその少年が迫ってくる。
ディスプレイでしっかりと表情まで見える様になったその美しい少年の顔は---。
まるで狂気に歪んでいる様であった・・・。
たった一人の少年が、燃え盛る基地を生身で駆け抜け革命軍のSA30機あまりと渡り合ったこの戦いは---。
のちに『紅蓮の貴公子』という異名とともに語り継がれることとなる。
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