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朗読
朗読 勿忘草とお手紙
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『私の将来の夢は
お嫁さんになることです!
可愛いドレスを着て、たくさんの人に祝われて…いや、それはいいかな。
お父さんとお母さんに祝われて、素敵な旦那さんと1生で1度の最高の一日を過ごす。
それが、私の1番の夢です』
昔、将来何をしたいか悩んでいた貴方へ、ふとこんな問いかけをしたら、そんな答えが返ってきました。
そうじゃなくて…手に職って意味で言ったんだけどなぁ…
なんて、口にしそうだったのはここだけの話で、あんなにも純粋な目をしていた貴方の言葉に、私は不安と期待で胸がいっぱいで…
この子ならきっと大丈夫…信じるしかない、そう、自分に言い聞かせていました。
だからこそ、貴方の夢が、叶いますように、なんて…神頼みしか出来なかったけれど、いつかちゃんと、その夢を叶えてくれることを、ひっそりと願っています。
直接いえなくてごめんなさい。
笑顔の貴方と再会出来る日を楽しみにしています。
こんなにも、大きく育ってくれてありがとう
大事な大事な貴方に、この思いが届きますように…
そして、忘れられませんように。
お母さんより
白と青の勿忘草が描かれた便箋に残る線香の香り。
そんな封筒の中に入っている手紙は、何度も開かれ…涙に濡れ、クシャクシャになっている。
生前、病弱だった母がよく手紙を送ってくれた。
そのどれもが、母の好きだった花である、勿忘草の便箋で送られてくる。
勿忘草の花言葉は、誠の愛と、私を忘れないで…
「家にいないからって、私のこと忘れないでねー?」
そんなことを笑顔で言っていた母は
入院して以来、毎月
同じ日に手紙を送ってくれていたけれど
『最後に送ってくれたのは、この手紙だったな…』
なんて、そんなことを今でも簡単に思い出せるのだから…心配しなくてよかったのに…と
そんな母に対して、ふふふと笑みと涙がこぼれてしまう。
そんな手紙に対して、わざわざ同じ便箋を探して…
イジになって手紙を返していた私も、きっと笑われてたのかな。…なんて。そんなことも、今では考えられるようになりました。
親のことを忘れる子がどこにいるのだろうか。
忘れるはずがない。
忘れるわけがない。
忘れたくない。
声も顔も匂いも思い出も…この手紙だって、今の私にとって大切な勿忘草そのものなのだから。
私は、そんなマメな母が大好きです。
私は、そんな心配性な母が大好きです。
私は、自分の気持ちをちゃんと伝えてくれる母が大好きです。
だから…今でも私は、父と一緒に母からの勿忘草の便箋が届くのを待っています。
だから…今でも私は、母に返信の手紙を届けられる日をずっと待っています。
忘れることの無い、勿忘草を求めて。
忘れられる前に、勿忘草を送るために
いつか
『まだ、お母さんからはちゃんと祝われてないよ』と、夢が叶ってないことを伝えるためにも
今日もまた、私は手紙に筆と気持ちをのせる。
お嫁さんになることです!
可愛いドレスを着て、たくさんの人に祝われて…いや、それはいいかな。
お父さんとお母さんに祝われて、素敵な旦那さんと1生で1度の最高の一日を過ごす。
それが、私の1番の夢です』
昔、将来何をしたいか悩んでいた貴方へ、ふとこんな問いかけをしたら、そんな答えが返ってきました。
そうじゃなくて…手に職って意味で言ったんだけどなぁ…
なんて、口にしそうだったのはここだけの話で、あんなにも純粋な目をしていた貴方の言葉に、私は不安と期待で胸がいっぱいで…
この子ならきっと大丈夫…信じるしかない、そう、自分に言い聞かせていました。
だからこそ、貴方の夢が、叶いますように、なんて…神頼みしか出来なかったけれど、いつかちゃんと、その夢を叶えてくれることを、ひっそりと願っています。
直接いえなくてごめんなさい。
笑顔の貴方と再会出来る日を楽しみにしています。
こんなにも、大きく育ってくれてありがとう
大事な大事な貴方に、この思いが届きますように…
そして、忘れられませんように。
お母さんより
白と青の勿忘草が描かれた便箋に残る線香の香り。
そんな封筒の中に入っている手紙は、何度も開かれ…涙に濡れ、クシャクシャになっている。
生前、病弱だった母がよく手紙を送ってくれた。
そのどれもが、母の好きだった花である、勿忘草の便箋で送られてくる。
勿忘草の花言葉は、誠の愛と、私を忘れないで…
「家にいないからって、私のこと忘れないでねー?」
そんなことを笑顔で言っていた母は
入院して以来、毎月
同じ日に手紙を送ってくれていたけれど
『最後に送ってくれたのは、この手紙だったな…』
なんて、そんなことを今でも簡単に思い出せるのだから…心配しなくてよかったのに…と
そんな母に対して、ふふふと笑みと涙がこぼれてしまう。
そんな手紙に対して、わざわざ同じ便箋を探して…
イジになって手紙を返していた私も、きっと笑われてたのかな。…なんて。そんなことも、今では考えられるようになりました。
親のことを忘れる子がどこにいるのだろうか。
忘れるはずがない。
忘れるわけがない。
忘れたくない。
声も顔も匂いも思い出も…この手紙だって、今の私にとって大切な勿忘草そのものなのだから。
私は、そんなマメな母が大好きです。
私は、そんな心配性な母が大好きです。
私は、自分の気持ちをちゃんと伝えてくれる母が大好きです。
だから…今でも私は、父と一緒に母からの勿忘草の便箋が届くのを待っています。
だから…今でも私は、母に返信の手紙を届けられる日をずっと待っています。
忘れることの無い、勿忘草を求めて。
忘れられる前に、勿忘草を送るために
いつか
『まだ、お母さんからはちゃんと祝われてないよ』と、夢が叶ってないことを伝えるためにも
今日もまた、私は手紙に筆と気持ちをのせる。
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