記憶喪失で私のことを忘れてしまった彼をまた取り戻すまでの物語

えと えいと

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ゴールデンウィーク お泊まり編

7日目 今も過去も愛せるように ⑰

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お泊まり会宣言がされてから、流れるように時は進み始める。

…まぁ、俺が何を言ったとしても
上手く返されちゃうから
何も言えなくて勝手に話が進んでいったっていうだけなんやけどね…。

というのも…

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「俺…着替えとか何も…」

「お酒とかお菓子とか買うついでにパジャマとか買えば大丈夫よ!!」

「…まぁそうですけど…一応俺男ですよ??女性3人とお泊まりはモラル的にも危ういんじゃ…」

「一秋くんは…そういう時手出しちゃうタイプ?」

「いやそうではないですけど…」

「なら大丈夫!!というか…多分鳴海ちゃんがそういうことを許さないと思うし、鳴海ちゃん本人も賛成してるわけだから…お泊まり会楽しみましょ??」

「…う、うーん……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
とまぁ…こんな形で…
切り替えそうと思ってもこうなっちゃうっていう感じで…
どうしようもないんですよねぇ…

いや、まぁね??
野郎どもだけでお泊まり会ー!!
とかなら、全然率先して参加しますよ?
そりゃ何も心配ないですし
お酒とか入ったら尚更最高!!
はっちゃけるぜウェーイ!
てなるよ??

んでも…自分以外女性ってなると…
正直肩身が狭いというか…なんというか。

…普通にいずらくない???
しかも、あの恐怖の拳が備えられてるリアル彼女も一緒にでしょ??
拳飛んでくる心配しかないよ??

…まぁ…手出せるほど肝っ玉座ってないからその辺は大丈夫だと思うけど
目線だけで拳飛ぶからな…
命がいくつあっても足らん…

…あれ、てかお酒買うとか言ってたと思うけど、鳴海お酒飲むのかな…飲むとしたら多分大変なことに…

「おーい、一秋??」

「…うぇい??なんでしょうお嬢」

「なんやその呼び方…舞さん達がご飯持ってきてくれたし食べよ??」

「…え、あ、いつの間に!?」

そんな時、鳴海の声が頭に響く。
頭に思い浮かんだ言葉をそのまま口にしてるのもあって、変な呼び方が口からこぼれてしまった。

気がつくと目の前には
熱々の美味しそうなビーフシチューが置かれている。
それに続き、パンを運ぶ舞さんと
エプロンを脱いだノアが自分の席の前までやってくる。

目の前に置かれたトレイには、トーストで香ばしく焼かれている、小さなクロワッサンとバケットが置かれている。

ビーフシチューの香りと、香ばしいパンの香りが部屋に広がり、その匂いにつられ俺の頭は空腹という2文字を思い出す。

そうやん、色々ありすぎて忘れてたけど
俺…ご飯食べに来たんや。

目の前に拡がるご馳走に騒ぎ疲れた自分の脳が、栄養を求めていると訴えかけてくる。

「いただきますー!」

「はーい、冷めないうちに召し上がれー」
隣で元気に手を合わせる鳴海

ニコニコと笑顔を零す舞さん

ノアもご飯を食べるのかと思っていたが、目の前の席に座り、こっちを何故か眺めている。
…なんでこっちみてるんだろう。

しかし、やはり人間たるもの、空腹には敵わない。
俺も自然と手を合わせ一言

「…いただきます」

感謝の気持ちを述べ
料理に手をつけた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その後
満腹になった俺らはお泊まり会の買い物に行くこととなるのだが…

このメンツで買い物に行って…何も起きるわけが無いのである……

それが起きたのはパジャマを買ったあとのスーパーでの出来事。

パジャマを買うのに想像以上に時間がかかってしまった俺たちは、お酒と食材を求めスーパーに訪れた。

時刻は6時頃
さすがにパジャマ買うのに時間かかりすぎだろ…ってツッコミたいところだが…
それ以上に地獄だったのはここからだった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「2人とも普段何飲むのー?チューハイ??ビール?それとも日本酒?」

アルコール関係の売り場に来ると、舞さんはカートを押しながら緑茶ハイを入れている。
多分、舞さんは緑茶ハイが好きなんだろうか…
2本…3本…4…本

…いや、どんどん入れるやん。
箱でかいなよもう。
俺も緑茶ハイ好きやから、俺もそれでいいよ。
うん。

「えっと…私は…基本強いお酒飲めないので…飲んでもジュースみたいなやつですね。」

舞さんの質問に対し、残念そうに答える鳴海。

鳴海は決してお酒が飲めない訳では無い。しかし、アルコールの味を感じやすいものは苦手で、アルコールの度数が低いお酒をいっぱい飲むタイプである。

「俺は強すぎなければなんでも大丈夫ですね。でもなんやかんや赤玉パンチとかが一番好きかな」

「赤玉パンチって…結構懐かしいもの飲むわね。それ私たちの世代じゃない??」

「美味しいものは未来に受け継がれてくものですよー」

赤玉パンチできたの100年近く前ぞ…
舞さんって美魔女なんかな??
いやまぁ、多分引き継がれてきた結果だから、舞さんの世代でもそうだったんやな…
うんうん…

というか…女性に年齢聞くと死ぬ気がするから…触れないでおこう。これが正解のはずだ…

「なるほどね…!それじゃ、赤玉パンチも入れておくとして…」

ノアちゃんは何飲む?

ノアはその質問に対し
待っていたかのように

「…ブラックニッカ…かな」

と、キメ顔をしながらそう答えた。

…ブラックニッカて…おいおいおい
あんなバカ度数の高いお酒飲めんの!?!?

「…ノアちゃんはまだ未成年でしょ??ジュースとかそうので選んで貰わないと…」

「いいじゃん!19歳だよ!?1歳なんて微々たる差!四捨五入したら20歳!だからいいじゃん今夜くらい!みんなでいるんだから!ねぇー!お願い!」

するとノアは
駄々をこねる子どものように舞さんの袖を引っ張りながら訴えを始める。

それに対し、舞さんはしっかりとした大人の対応をしている。
「お酒は20歳になってから」
この言葉をしっかりと守ってらっしゃるようで、教育者としてしっかりしているのがよく分かる。

たぶん、こうねだられたら…買っちゃう人の方が多いんじゃないかなぁ
19歳だしいいかーって
それに…大人がみんなお酒飲んでるのに、自分だけ飲めないって、結構身内の集まりの時とか悲しいんだよね…
楽しそうだなぁって、見るしかできないあの感じ。
…ノアの気持ちよく分かるよ…うんうん…

…まぁ、良くないから、この対応が正解なんだけどね??
舞さん…しっかりしてるなぁ…
多分これだけしっかりしてるならお酒飲ませたこと1回も…

「前ブラックニッカでショット勝負したけど…貴方私に惨敗したじゃない…。だから今回はやめときなさい。わかった?」

…ふぁ!?!?
舞さん!?
しっかりした教育者どこいった!?
俺の関心をすぐにへし折りに来るのなに!?

お酒を飲ませたことがあるならまだ分からなくはないよ?ダメだけど
でも…ショットで勝負って…どう言うと!?

「いやほんと、今回だけはお願いしますよ舞様ほんと…認めてくださいお願いします何でもしますからァァァァァ…!!」

すると、そんな舞さんの言葉を皮切りに
なんとノアはその場で土下座をしてしまう。

ここは様々な人が買い物をしに来るスーパーだ。
土下座をする人なんて普通いない。

そんな珍しい姿を見た周りのお客さんたちの声は、ザワザワと少しづつ広がりつつあった。

「ノアちゃんちょっと!?さすがにお店で土下座はまずいんじゃ…」

そう言いながら、鳴海は心配そうな表情を浮かべながらノアの体を起こそうとする。
しかし…

「…お願い………します……!!!お願いしますううぅぅぅ!!!!」

なるみが全力でノアの体を起こそうとしているが、ビクともしていない。
ノアは全力で床に頭を擦りつけている。

「ちょっと…ノアちゃん…床汚いから……てか、力強すぎ!」

「お酒を!買ってくれるまで!!床に頭をつけるのを!やめない!!」

その声はみるみる店内を広がり、周りには人が少しづつ離れていく。
遊園地の時とは違い、周りにいるのはご年配の方ばかりだ
野次馬になるより、逃げる方が優先だよな……そりゃ……

しかし、その離れていく集団の中
残っている2つの影を背後に感じる。

「…みんな…何してるの?????」

その声は聞き馴染みのあるいつもの声
振り返るとそこには

手を繋ぐ春樹と冬華さんが唖然とした顔で俺たちを見ていた。












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