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懐かしいけど苦しい毒
3日目 懐かしいけど苦しい毒 ⑧
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春樹くんは記憶をなくしてもちゃんと私のことを見てくれていた。
…私が我慢してることを
どんなに変わったとしても大好き
それは本心だ。
でも…過去の彼がやっぱり私の心の中ずっといる。
彼の帰りを待っている自分がいる。
抑え、隠しきれていると思っていたこの気持ちは、到底彼の前では無駄だったことを実感した。
…全てやり直す…
これは決して悪い案とは私は思わない
記憶が無い今、過去の春樹くんはいない。
今の彼がどう人間関係を築いていくかは自由だ。
でも…でも…でも…
彼が離れていくのが…とても怖い
私のものになっていたとは思っていない
でも…もう後戻り出来ないほど
私は彼が必要な身体になっている。
だから
帰ってこないかもしれないという不安が拭いきれない。
気合を入れてもらった
決意もした
春樹くんの言葉もちゃんと胸に届いた
でも…
それでも…
不安になっちゃうよ…
大好きな人が
少しでも離れてしまうのが
遠くに行ってしまう可能性があることが
「…」
彼を抱きしめる腕の力が強くなってしまう
春樹くん苦しいかな…
やめなきゃ
でも、そう思っても体が動かない
彼と離れたくないという気持ちが
身体が覚えてしまっている
…彼の温もりを離したくない
こうやってずっと
死ぬまでずっと
一緒にいたい…
「冬華さん…不安ですよね」
春樹くんは優しく頭を撫でるような声で私に話をし始める
「…病院で目を覚ました時、とても大好きな匂いがしたんです。その匂いは冬華さんの匂いでした。手を握ってくれていた温もりも全てが大好きなものだったんです。」
「…」
…嬉しい
でも…離せない
「それに加えて、冬華さんのあの時言葉とハグも、今もずっと忘れられないくらい頭に残っています。今こうやって抱きしめられているのも幸せで仕方ないです。」
「…」
やだ…
やだ…
離したくない
「…退院したあとも冬華さんのことを考える時間が多かったです。記憶にない人をなんでこんなに思ってしまうのか、こんなに知りたいって思うのはなんでなんだろうって思ってました。」
「…」
…やだよ
…私がちゃんとサポートするって決めたんだから…
…彼の傍にずっといるって…
「でも、こんなにも愛してくれている冬華さんのことを1片も覚えていない僕は、冬華さんを愛す権利はないのかなって思うこともありました…でも、今はそんなこと思ってないです。」
「…」
友達なんかに
戻りたくないよ
今更春樹くんを友達なんて思えないよ
「…僕はきっと冬華さんのことが大好きで大好きで、そして冬華さんも僕のことが大好きで大好きで…それを、一秋さんと話してよく実感しました。そのうえで…」
「…」
やめて
「僕は、冬華さんのためにも思い出すしかないと思いました。だから、思い出すまで今の僕と新しい関係を築いて欲しいんです。」
「…やだ」
いやだ
やだ
やだやだやだやだやだやだやだ
やだよ!!!!
「…」
必然と春樹くんを抱きしめる力が強くなってしまう
…苦しいはずなのに、春樹くんは何も言わない
「…春樹くんと…私は…」
「わかってます…。1回離れてしまうのは怖いと思うんです。でも、絶対に戻ってきます」
「…やだ」
信じきれない
信じたいのに
信じきれない
「…絶対に、戻りますだから…」
「やだよ!!」
声が震える
どんなに変わったとしても大好き
絶対に恋させてみせると思ってる
だけど
だけど…
だけど………
「冬華さん」
彼は抱きしめていた手を優しく振りほどき
立ち上がった
…苦しかったかな
やっぱり…
寒い…
彼が足りない
春樹くんが足りない
1人にしないでよ…
やd…
彼は、私を強く、でも優しくギュト抱きしめてくれていた。
「ちゃんと…大好きになります。絶対に」
彼の温もりと一緒に
彼の言葉が私の心を癒していく
…でも、やっぱりまだ足りない
「…やだよ…大好きなのに…友達なんて…」
今更本音を隠すことは出来ない
「…でも、記憶をなくした状態よりも、あなたの事を愛していた過去の僕の方が…いいでしょ?」
「…別にいいよ!春樹だからいいの!どんな状態でも!だから!だから!」
「無理しないで」
…やっぱりバレてしまう
…今の春樹くんよりも、過去の春樹くんへの思いがまだ強いことが
「…だって」
「別にずっと離れているわけじゃないんです。ちゃんと話して、遊んで、笑って泣いて。冬華さんの大好きな日常を過ごさないわけじゃないんです。」
「でも…」
「僕を信じてください。」
身体を少し離し、彼の顔をみる
とても真剣で前を見ている彼の顔だ
…完全に決意が固まっているのがよく分かる
「…ほんとに…ちゃんと…戻ってきてくれる?」
涙が零れて彼の洋服が濡れてしまった。
「…絶対に戻ってきます。」
…わかったよ
…私も頑張るよ
…信じる
「…わかった」
涙は止まらなかった
思い出すまでの我慢
いつまで我慢すればいいのかは分からない
でも、必ず終わりが来る
そう信じるしかない
彼を信じるのは私以外に誰がいるのだろうか
そう思うと、少しずつ心が変わってきている気がした。
「…ありがと」
彼はまた優しく抱きしめてくれた
…本当は、キスをして欲しい
そのままその続きもして欲しい
そう思ってしまうけれど
新しい関係の私たちは、これ以上進んでは行けない。
今日は特別な日
だけど、もう…今は恋人ではない
彼はどれくらい抱きしめてくれていたのだろう。
彼の温もりと泣き疲れたせいか私は意識が無くなっていた。
寂しさも、少しは和らいだのかな
だから寝れたのかもしれない。
目を覚ますと、部屋の窓から夕暮れのオレンジ色の日差し込んでいた。
私は部屋のソファーに横になってお腹にはブランケットがかけられていた。
彼が運んでくれたのかな
彼は今どこに…
少し目を配ると
椅子に座り、机に突っ伏してすぅすぅと寝息を立てて寝ている彼がいた。
「…頑張ろ。彼のためにも私のためにも。」
1番辛いのは彼だ
私じゃない。
そんな彼が決意したなら、それを信じるだけだ。
少し寝たせいか、頭がスッキリしていた。
それとも…なにかほかの理由があるのかな
まぁ…とりあえず…
「よし、晩御飯作ろう!今回こそ人参食べさせるんだから!」
今できることをやる!
何回目の決意か分からない
でも、今回の決意は絶対に揺るがない
オレンジ色に染る可愛い彼を見て
私は拳を掲げた。
…私が我慢してることを
どんなに変わったとしても大好き
それは本心だ。
でも…過去の彼がやっぱり私の心の中ずっといる。
彼の帰りを待っている自分がいる。
抑え、隠しきれていると思っていたこの気持ちは、到底彼の前では無駄だったことを実感した。
…全てやり直す…
これは決して悪い案とは私は思わない
記憶が無い今、過去の春樹くんはいない。
今の彼がどう人間関係を築いていくかは自由だ。
でも…でも…でも…
彼が離れていくのが…とても怖い
私のものになっていたとは思っていない
でも…もう後戻り出来ないほど
私は彼が必要な身体になっている。
だから
帰ってこないかもしれないという不安が拭いきれない。
気合を入れてもらった
決意もした
春樹くんの言葉もちゃんと胸に届いた
でも…
それでも…
不安になっちゃうよ…
大好きな人が
少しでも離れてしまうのが
遠くに行ってしまう可能性があることが
「…」
彼を抱きしめる腕の力が強くなってしまう
春樹くん苦しいかな…
やめなきゃ
でも、そう思っても体が動かない
彼と離れたくないという気持ちが
身体が覚えてしまっている
…彼の温もりを離したくない
こうやってずっと
死ぬまでずっと
一緒にいたい…
「冬華さん…不安ですよね」
春樹くんは優しく頭を撫でるような声で私に話をし始める
「…病院で目を覚ました時、とても大好きな匂いがしたんです。その匂いは冬華さんの匂いでした。手を握ってくれていた温もりも全てが大好きなものだったんです。」
「…」
…嬉しい
でも…離せない
「それに加えて、冬華さんのあの時言葉とハグも、今もずっと忘れられないくらい頭に残っています。今こうやって抱きしめられているのも幸せで仕方ないです。」
「…」
やだ…
やだ…
離したくない
「…退院したあとも冬華さんのことを考える時間が多かったです。記憶にない人をなんでこんなに思ってしまうのか、こんなに知りたいって思うのはなんでなんだろうって思ってました。」
「…」
…やだよ
…私がちゃんとサポートするって決めたんだから…
…彼の傍にずっといるって…
「でも、こんなにも愛してくれている冬華さんのことを1片も覚えていない僕は、冬華さんを愛す権利はないのかなって思うこともありました…でも、今はそんなこと思ってないです。」
「…」
友達なんかに
戻りたくないよ
今更春樹くんを友達なんて思えないよ
「…僕はきっと冬華さんのことが大好きで大好きで、そして冬華さんも僕のことが大好きで大好きで…それを、一秋さんと話してよく実感しました。そのうえで…」
「…」
やめて
「僕は、冬華さんのためにも思い出すしかないと思いました。だから、思い出すまで今の僕と新しい関係を築いて欲しいんです。」
「…やだ」
いやだ
やだ
やだやだやだやだやだやだやだ
やだよ!!!!
「…」
必然と春樹くんを抱きしめる力が強くなってしまう
…苦しいはずなのに、春樹くんは何も言わない
「…春樹くんと…私は…」
「わかってます…。1回離れてしまうのは怖いと思うんです。でも、絶対に戻ってきます」
「…やだ」
信じきれない
信じたいのに
信じきれない
「…絶対に、戻りますだから…」
「やだよ!!」
声が震える
どんなに変わったとしても大好き
絶対に恋させてみせると思ってる
だけど
だけど…
だけど………
「冬華さん」
彼は抱きしめていた手を優しく振りほどき
立ち上がった
…苦しかったかな
やっぱり…
寒い…
彼が足りない
春樹くんが足りない
1人にしないでよ…
やd…
彼は、私を強く、でも優しくギュト抱きしめてくれていた。
「ちゃんと…大好きになります。絶対に」
彼の温もりと一緒に
彼の言葉が私の心を癒していく
…でも、やっぱりまだ足りない
「…やだよ…大好きなのに…友達なんて…」
今更本音を隠すことは出来ない
「…でも、記憶をなくした状態よりも、あなたの事を愛していた過去の僕の方が…いいでしょ?」
「…別にいいよ!春樹だからいいの!どんな状態でも!だから!だから!」
「無理しないで」
…やっぱりバレてしまう
…今の春樹くんよりも、過去の春樹くんへの思いがまだ強いことが
「…だって」
「別にずっと離れているわけじゃないんです。ちゃんと話して、遊んで、笑って泣いて。冬華さんの大好きな日常を過ごさないわけじゃないんです。」
「でも…」
「僕を信じてください。」
身体を少し離し、彼の顔をみる
とても真剣で前を見ている彼の顔だ
…完全に決意が固まっているのがよく分かる
「…ほんとに…ちゃんと…戻ってきてくれる?」
涙が零れて彼の洋服が濡れてしまった。
「…絶対に戻ってきます。」
…わかったよ
…私も頑張るよ
…信じる
「…わかった」
涙は止まらなかった
思い出すまでの我慢
いつまで我慢すればいいのかは分からない
でも、必ず終わりが来る
そう信じるしかない
彼を信じるのは私以外に誰がいるのだろうか
そう思うと、少しずつ心が変わってきている気がした。
「…ありがと」
彼はまた優しく抱きしめてくれた
…本当は、キスをして欲しい
そのままその続きもして欲しい
そう思ってしまうけれど
新しい関係の私たちは、これ以上進んでは行けない。
今日は特別な日
だけど、もう…今は恋人ではない
彼はどれくらい抱きしめてくれていたのだろう。
彼の温もりと泣き疲れたせいか私は意識が無くなっていた。
寂しさも、少しは和らいだのかな
だから寝れたのかもしれない。
目を覚ますと、部屋の窓から夕暮れのオレンジ色の日差し込んでいた。
私は部屋のソファーに横になってお腹にはブランケットがかけられていた。
彼が運んでくれたのかな
彼は今どこに…
少し目を配ると
椅子に座り、机に突っ伏してすぅすぅと寝息を立てて寝ている彼がいた。
「…頑張ろ。彼のためにも私のためにも。」
1番辛いのは彼だ
私じゃない。
そんな彼が決意したなら、それを信じるだけだ。
少し寝たせいか、頭がスッキリしていた。
それとも…なにかほかの理由があるのかな
まぁ…とりあえず…
「よし、晩御飯作ろう!今回こそ人参食べさせるんだから!」
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でも、今回の決意は絶対に揺るがない
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