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小石井家

あきら 《初日2》

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麟太郎は朝シャン派だそうで、声をかけたが断られた。
あきらは浴室へ入り、しまい湯をもらうことにした。
お湯がほどよく、心地よい。

初めてのおうちでここまで寛いでいいのかしら。

身体にバスタオルを巻き付け、浴室を掃除する。
お湯を流しながらすると効率がいいのだ。
蔦が毎日きれいにしていたのだろう、汚れはほとんどなく、掃除が苦にならない。
これを維持できるかどうか、あきらにかかっている。

「お風呂いただきました」

キッチンに昌武がいて、缶ビールを飲んでいた。
あきらにも、ほら、と勧める。
あきらは缶に口をつけるのが苦手で、グラスを出して注いだ。
昌武が不思議そうに眺めていた。

「はるひは洗い物が増えるからって缶のまま出してたけど、人によるんだな」

あれ。
奥様は凛さんのはず。
はるひって誰だろう。

昌武はしまった、という顔をした。
あきらは、恋人の名前だと察した。
あきらはそ知らぬ風にビールを飲む。
大人だし、これだけ格好いいんだから、恋人の一人や二人、いない方がおかしい。
私はいい年して、一人もいないけど、それはそれ。
これはこれ。
昌武は、そんなあきらを見つめた。

「……妬いてくれないのかぁ」

「えっ」

「いや。
あのね、その中に媚薬入れたんだ。
身体が熱くなってきてない?」

あきらは冗談だと思い首を横に振る。
缶はあきらが開封した。
変なものを入れることはできない。
そもそも、媚薬なんて存在するのかどうかも疑わしい。

「そうかぁ。
遅効性なのかな」

昌武は立ち上がり、あきらのそばへ寄る。
身体の厚みが、父や叔父とは違う。
あきらはどきりとした。

漫画も小説もドラマも、肝心なところは教えてくれない。
あきらの性知識は中学の保健体育程度だ。

でも、知ってるもん。
……必要最低限、だけど。

友人達の体験談も、痛かったり、平気だったり、出血が止まらなかったり、出血がなくて、初めてじゃないんだろうと詰め寄られたり。
あまり参考にはならなかった。

昌武は、あきらの手からグラスを取り上げた。
静かにテーブルに置く。
頬を両手で包むようにされ、唇が重なった。

うわーうわーうわー。

昌武は唇を離し、あきらの顔を見る。
真っ赤になっているに違いない。 

「目を閉じていいんだよ、あきら」

「はひっ」

十代のような啄むキスを、昌武はあきらに与えた。
あきらの身体のこわばりが解れていく。
昌武はあきらの唇を啄みながら、胸を揉み始めた。
あきらの身体が再びこわばる。

昌武は、そんなあきらを解放した。

あきらは、目に見えて安堵している。
しかし心拍数が上がっている。
期待なのか恐怖なのか。

「効いてきたんじゃない?」

いたずらっ子のように昌武はあきらに囁く。
あきらは真っ赤になった。
昌武は、今度は深い口づけをした。
あきらの口腔内を昌武の舌が蹂躙する。
あきらは、昌武のパジャマの袖を必死に握っていた。
息をするのを忘れていた。

「はぁっ……あっ……」

「口が塞がってる時は鼻で息すればいいんだよ」

「は……はひ……」

これ以上のことがあるのだと思うと、あきらは気が遠くなった。


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