二度目の恋

櫟 真威

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私は当麻を見た。
傷ついたような顔をしていた。

「帰るね」

当麻は立ち上がった。
私は咄嗟にその服を掴む。

「ごめんなさい……」

当麻は屈み、私の目線に合わせる。
当麻の顔が涙で歪んでよく見えない。

「俺の方こそごめん。
舞い上がってた」

当麻は私の額に唇を落とし、出ていった。


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「当麻は優しいのかヘタレなのか」

真奈美は辛辣だ。
大学のカフェテリアで、私はグレープフルーツジュースを飲みながら拝聴する。
ヘタレなのは私だ。
あの場面で怖じ気づき、男性に恥をかかせてしまった。

「しょ、正直に話してみる。
だめならそこまでだって思うことに」

「へえ」

真奈美は私を見つめて微笑んだ。

「あきらにそこまでさせるなんて、当麻は余程いい男なのね」

確かに。
鴻上瑞樹に別れを告げられた時は、悲劇のヒロインになってしまって、自分を省みなかった気がする。
みっともなくても、当麻に追い縋ってみたい。
好きなんだもの。

「そうね、当たって砕けてきなさい。
骨は拾ってあげるわ」

「砕けたくない……」


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


当麻には私から連絡をした。
いつもピクニックをする公園で待ち合わせた。
当麻は変わりない笑顔で私を迎えた。

「あ、あの」

「うん」

「こ、この間の釈明をします」

「釈明?」

当麻の呆れたような声が私を苛む。
だが、ここは踏ん張りどころだ。

「私っ、マグロで不感症で人形なんですっ」

一息に叫ぶ。
風の音と、どこか遠くで鳥が鳴く声がした。
そして。
当麻が吹き出した。
私は当麻を見て目を丸くする。
当麻は本当におかしそうに笑っているのだ。

「あきらっ、そんなこと昼間の公園でっ」

あれ。
なんか私、非常識でしたか。

当麻は私を抱き締めた。
私は当麻の胸に顔を埋める形になって、息が出来ない。
当麻はそんなことお構いなしにぎゅうぎゅうに締め付ける。

「あきらはもう、ほんとに」

そして顔中にキスをされた。
非常識に叫ぶ私と、公園でキスをする当麻。
どっちがおかしいでしょうか。
どっちも。



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