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「明るいうちに解散しよっか」
当麻は、明るい声で提案した。
私も頷いた。
「ありがと、楽しかった」
「無理に笑わなくていいよ」
勉強に没頭しても、就職活動に身をやつしても。
彼女の一言で振り出しに戻る。
私は相変わらず駄目なやつだ。
「……犬なら、また違う励まし方が出来るんだろうけどね」
「え?」
「リード咥えて尻尾ばたばた振ってみたりとかさ」
当麻はいい人だ。
つられて笑ってしまう。
「失恋は、別の恋で上書きするといいんだよ、知ってた?」
それは知らない。
ううん、知ってた。
真奈美がそう慰めたくれたから。
「俺と、してみない?」
「な、何を」
先刻の彼女の話を思いだし、自分を抱き締めた。
「違っ!
恋人を、です!」
慌てて否定するところがまた可笑しかった。
なんだか、当麻といると自分もいい人になれそうな気がする。
「では、失恋リハビリ、お願いします」
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「で、付き合うことにしたの?」
「付き合うというか……お友達からってことで」
真奈美にはすべて話した。
彼女の執着に、真奈美も呆れていた。
鴻上瑞樹は相変わらず奔放らしいので。
「切られない不幸もあるのね」
私は早々に切られたので、傷が浅いのかもよ、と真奈美は云う。
鴻上瑞樹に鼻にもかけられていない私に、嫌味を云わずにいられない彼女の方が辛いのかもしれない。
当麻とは、週に一度会っている。
紅葉のサイクリングロードを自転車で走った。
公園で玉子サンドと白身魚フライサンドを食べた。
一ヶ月で手を繋げるようになった。
キャッチボールを教わった。
バッティングセンターへ連れていってもらった。
「激チャリできても運動ができる訳ではないのか」
呆れられた。
「いいんですぅ、プロ目指してないから」
「契約できたら教えて。
マネージメントするから」
それでも球をバットに当てることはできるようになった。
当てるだけだが。
「当たった!」
私ははしゃいで、当麻の元へ走った。
当麻も私の手を取り喜んでくれる。
子供のようにはしゃぐのが楽しい。
時々、当麻がはしゃぐ私を見て、真顔になることがある。
私は気づかない振りをするけど、赤い顔でばれていると思う。
「実家からカボチャやメロンを送ってきたの。
食べきれないから、だめにするのもなんだし、もらってくれる?」
真奈美には昨日渡したので、当麻にも、と軽い気持ちだった。
ぶっちゃけ、野菜を分ける友人が二人しか思い付かないのだった。
「でも俺、料理しないしなぁ。
メロンは切ってすぐ食べれるけど、カボチャは」
あ、そうか。
「じゃあ、当麻、カボチャ解体、助けてくれない?」
男手なら私の半分の時間でカボチャを切り分けられるだろう。
名案だ。
「え、あきらん家で?」
「?
そうだよ」
少し待ってもらえるなら、ふかしてカボチャ団子にして、渡してもいい。
私の頭はカボチャで一杯になった。
当麻は、明るい声で提案した。
私も頷いた。
「ありがと、楽しかった」
「無理に笑わなくていいよ」
勉強に没頭しても、就職活動に身をやつしても。
彼女の一言で振り出しに戻る。
私は相変わらず駄目なやつだ。
「……犬なら、また違う励まし方が出来るんだろうけどね」
「え?」
「リード咥えて尻尾ばたばた振ってみたりとかさ」
当麻はいい人だ。
つられて笑ってしまう。
「失恋は、別の恋で上書きするといいんだよ、知ってた?」
それは知らない。
ううん、知ってた。
真奈美がそう慰めたくれたから。
「俺と、してみない?」
「な、何を」
先刻の彼女の話を思いだし、自分を抱き締めた。
「違っ!
恋人を、です!」
慌てて否定するところがまた可笑しかった。
なんだか、当麻といると自分もいい人になれそうな気がする。
「では、失恋リハビリ、お願いします」
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「で、付き合うことにしたの?」
「付き合うというか……お友達からってことで」
真奈美にはすべて話した。
彼女の執着に、真奈美も呆れていた。
鴻上瑞樹は相変わらず奔放らしいので。
「切られない不幸もあるのね」
私は早々に切られたので、傷が浅いのかもよ、と真奈美は云う。
鴻上瑞樹に鼻にもかけられていない私に、嫌味を云わずにいられない彼女の方が辛いのかもしれない。
当麻とは、週に一度会っている。
紅葉のサイクリングロードを自転車で走った。
公園で玉子サンドと白身魚フライサンドを食べた。
一ヶ月で手を繋げるようになった。
キャッチボールを教わった。
バッティングセンターへ連れていってもらった。
「激チャリできても運動ができる訳ではないのか」
呆れられた。
「いいんですぅ、プロ目指してないから」
「契約できたら教えて。
マネージメントするから」
それでも球をバットに当てることはできるようになった。
当てるだけだが。
「当たった!」
私ははしゃいで、当麻の元へ走った。
当麻も私の手を取り喜んでくれる。
子供のようにはしゃぐのが楽しい。
時々、当麻がはしゃぐ私を見て、真顔になることがある。
私は気づかない振りをするけど、赤い顔でばれていると思う。
「実家からカボチャやメロンを送ってきたの。
食べきれないから、だめにするのもなんだし、もらってくれる?」
真奈美には昨日渡したので、当麻にも、と軽い気持ちだった。
ぶっちゃけ、野菜を分ける友人が二人しか思い付かないのだった。
「でも俺、料理しないしなぁ。
メロンは切ってすぐ食べれるけど、カボチャは」
あ、そうか。
「じゃあ、当麻、カボチャ解体、助けてくれない?」
男手なら私の半分の時間でカボチャを切り分けられるだろう。
名案だ。
「え、あきらん家で?」
「?
そうだよ」
少し待ってもらえるなら、ふかしてカボチャ団子にして、渡してもいい。
私の頭はカボチャで一杯になった。
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