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大学に入ったばかりの頃、私は新生活に浮かれていた。
女子高で一緒だった真奈美が社交的なこともあり、友人関係の幅も広がった。
正に、青春を謳歌していた。
初めての彼ができたのは翌年の春。
カフェテリアで声をかけられた。
大学でも一二を争うイケメンで、女子の人気が高かった。
そんな人に見初められるなんて、とまだ19歳の私は夢うつつだったのだ。
「普段フルコース食べてると、たまにお茶漬けが食べたくなるのよね」
「すぐに飽きて捨てられるんじゃない」
膝上のスカートが似合う、ふんわりウェーブ茶髪の女子達から嫌み攻撃の洗礼を受けたのもこの頃。
美人に悪口を云われると迫力がある。
それでも授業に通っていた私を褒めてあげたい。
初めての恋は三ヶ月で終わった。
真奈美はいつも心配して私に色々云ってくれたけど、彼に夢中の私は意に介さなかった。
「大人しくて清楚なあきらが可愛いと思ってたけど、俺の思ってるのとは違ってたから」
別れを告げるときも、彼はイケメンだった。
私は泣きながら身を引いた。
相性って、あるもんね。
だが、私を傷つけたのはこの後だった。
「あんたが、三ノ宮あきら?
噂通り、お人形さんみたいに可愛いね」
アルバイトをしている100円寿司屋で、客に声をかけられた。
同世代の男性だった。
「ベッドでも人形なんだってね」
一瞬、云われている意味がわからなかった。
その隣にいたのは同じ大学の女子。
くすくすと笑っている。
「なにやってもイケないから、不感症なんじゃないかって、瑞樹が心配してたよ?
あれから新しい男、できた?」
私はその場をどうやってやり過ごしたのか覚えていない。
わかったのは、美しい初恋だと思っていたのは私だけだったということ。
彼、鴻上瑞樹にとっては、遊んだ女の中の一人に過ぎないということ。
拙い私の睦事を、他人に笑い話として聞かせていたということ。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
真奈美は彼が複数の女性と交際しているのを知っていて、私に助言をくれていた。
初彼に色めき立って無視していたのは私。
恋人なら当たり前のことだとホテルに連れていかれて、怖くて痛いのにひたすら耐えて、嫌われまいとしていた私。
それ以降のデートはホテルだけになってしまっていたのに、それでも彼を信じたかった。
初めての時、出血がひどくて途方にくれた。
彼は同情もしてくれなかった。
出血が治まったのは十日後だった。
今でも、愛の証である筈のあの行為は怖い。
女子高で一緒だった真奈美が社交的なこともあり、友人関係の幅も広がった。
正に、青春を謳歌していた。
初めての彼ができたのは翌年の春。
カフェテリアで声をかけられた。
大学でも一二を争うイケメンで、女子の人気が高かった。
そんな人に見初められるなんて、とまだ19歳の私は夢うつつだったのだ。
「普段フルコース食べてると、たまにお茶漬けが食べたくなるのよね」
「すぐに飽きて捨てられるんじゃない」
膝上のスカートが似合う、ふんわりウェーブ茶髪の女子達から嫌み攻撃の洗礼を受けたのもこの頃。
美人に悪口を云われると迫力がある。
それでも授業に通っていた私を褒めてあげたい。
初めての恋は三ヶ月で終わった。
真奈美はいつも心配して私に色々云ってくれたけど、彼に夢中の私は意に介さなかった。
「大人しくて清楚なあきらが可愛いと思ってたけど、俺の思ってるのとは違ってたから」
別れを告げるときも、彼はイケメンだった。
私は泣きながら身を引いた。
相性って、あるもんね。
だが、私を傷つけたのはこの後だった。
「あんたが、三ノ宮あきら?
噂通り、お人形さんみたいに可愛いね」
アルバイトをしている100円寿司屋で、客に声をかけられた。
同世代の男性だった。
「ベッドでも人形なんだってね」
一瞬、云われている意味がわからなかった。
その隣にいたのは同じ大学の女子。
くすくすと笑っている。
「なにやってもイケないから、不感症なんじゃないかって、瑞樹が心配してたよ?
あれから新しい男、できた?」
私はその場をどうやってやり過ごしたのか覚えていない。
わかったのは、美しい初恋だと思っていたのは私だけだったということ。
彼、鴻上瑞樹にとっては、遊んだ女の中の一人に過ぎないということ。
拙い私の睦事を、他人に笑い話として聞かせていたということ。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
真奈美は彼が複数の女性と交際しているのを知っていて、私に助言をくれていた。
初彼に色めき立って無視していたのは私。
恋人なら当たり前のことだとホテルに連れていかれて、怖くて痛いのにひたすら耐えて、嫌われまいとしていた私。
それ以降のデートはホテルだけになってしまっていたのに、それでも彼を信じたかった。
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