闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

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デジャブ

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  連れていかれた場所は、デジャブを思い起こさせるビルの一室。
  ドアには『坂上金融』とある。

  預り所ではないではないか…とも言えず、案の定簡単に事務所へと案内されてしまった。

  昨夜の事が頭を過り、祐羽は既に絶望を感じていた。
  ろくでもない展開が待ち受けているのが、鈍感な自分でも分かったからだ。

  ドアの向こうには強面の男が何人も居て、一斉にジロリと見てきた。

「お、次のお客様か?」

  近くの椅子に腰を掛けていた男が、さも楽しそうに笑った。

「あ⁉ガキじゃねぇか⁉」

  近づいてきた別の男が顔をしかめた。
  髭を生やしており、余計に迫力がある。

「金にならねぇだろうが‼」

  そんな髭男に、森田は楽しそうに声を出す。

「いやぁ~携帯を親切に拾ったら、どうしても書類にサインしたいって言うから、こうして事務所まで来たんだよ。なぁ⁉ 」

バシンッと勢いよく肩を抱かれて、祐羽は視線を落とした。

  書類に記入したくなんてない。
  
  けれど、しなければ返して貰えない。

  でも、内容がおかしかったらサインをしないで帰らせて貰おう。

  そんな思いはあるものの、雰囲気は祐羽を逃さないと言っている。

「さてさて、ここ座って~‼」

  森田に強引に近くの椅子に座らされる。
  そして目の前に書類が置かれて、ペンを持たされた。

『誓約書』と書かれていた。

  預かって貰った代金の領収証ではない。

「…か」

  これは書いてはいけないと、祐羽は勇気を出して口を開く。

「か、書けません」

「あぁっ⁉」

  祐羽の言葉に森田が恐ろしい程声を荒らげた。

  その声にビクッと肩を震わせると、ギュッと拳を握った。

「はいは~い‼ 俺がお手伝いしてあげようね♪」

  森田は面白くて仕方ないといった様子で、握りこんだ祐羽の手を上から覆っていった。
  力強く、振りほどこうとしても出来ない。

「月ヶ瀬くんはさっきも思ったけど手、白くて小さいね~♪」

  耳元で森田が、そう嘲笑うのだった。
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