闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

文字の大きさ
上 下
721 / 1,008

隙、その先

しおりを挟む
 
  県内の山中―――・・・

  山の気温は夏でも早朝は下がり、肌寒さにブルッと身震いした祐羽は、瞬きをして目をゆっくりと開けた。
  目の前に綺麗な寝顔を見せる外崎を確認して、今まで起きた事が夢では無かったと改めて知る。
  まだこの温もりから離れたくないと、思わず外崎にピタリとくっついた。
  逞しく全てから守り包み込んでくれる様な九条の胸元とは違うけれど、優しい外崎の胸元は安心感を与えてくれる。
  まるで小さな子どもが母親にするかのように甘えてしまう。
  祐羽はもう一度目を閉じようとして、視線を感じてそちらを見た。
「おはよ。大丈夫か?」
「中瀬さん…」
  反対側に居た中瀬が撫でてくれ、思わず頭を擦り寄せた。
「おはよう、祐羽くん。よく眠れた?」
  目が覚めたらさい外崎が微笑んでいる。
「外崎さん」
  祐羽を抱き締めよしよしと背中を撫でながら、外崎が自分を心配してくれる。
  嬉しくて心が暖かくなって、また泣いてしまいそうになる。

  お父さん、お母さん…家に帰りたいよ。

  九条さんに会いたい…。

  思い出して顔を曇らせる祐羽に、中瀬が「顔を上げろ!」と渇を入れてくる。
「絶対お前を家に…会長のところへ帰してやるからな!だから諦めるんじゃねぇぞ!!」
「私達が何がなんでも、命に代えても帰してあげるから。絶対に諦めたら駄目だよ」
  中瀬と外崎が自分に優しい声で眼差しを向け言い聞かせてくる。
「泣きたいかもしれないけど、今は我慢しろ。いざとなった時に泣いてたら前が見えないだろ?」
「うっ」
  中瀬が人差し指で祐羽の鼻をブニッと押さえた。
「祐羽くんが次に泣くのは無事に九条さんと会えた時って、約束して?」
  そう言いながら今度は外崎が祐羽の頬を指でツンツンとつついた。
  ふたりの自分を気遣ってくれる気持ちが嬉しくて祐羽は目を潤めて、外崎に抱きついた。
「…っ、はいっ!僕、絶対帰りますっ。もう帰るまで泣きません!うっ…うえぇぇっ」
「泣いてるじゃん」
「ふふふ。これで最後だよね?」
  思わずまた泣いてしまった祐羽に、中瀬と外崎はお互い視線を合わせて笑うと、ギュッと三人で抱き合った。 
しおりを挟む
感想 159

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...