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隙、その先
しおりを挟む県内の山中―――・・・
山の気温は夏でも早朝は下がり、肌寒さにブルッと身震いした祐羽は、瞬きをして目をゆっくりと開けた。
目の前に綺麗な寝顔を見せる外崎を確認して、今まで起きた事が夢では無かったと改めて知る。
まだこの温もりから離れたくないと、思わず外崎にピタリとくっついた。
逞しく全てから守り包み込んでくれる様な九条の胸元とは違うけれど、優しい外崎の胸元は安心感を与えてくれる。
まるで小さな子どもが母親にするかのように甘えてしまう。
祐羽はもう一度目を閉じようとして、視線を感じてそちらを見た。
「おはよ。大丈夫か?」
「中瀬さん…」
反対側に居た中瀬が撫でてくれ、思わず頭を擦り寄せた。
「おはよう、祐羽くん。よく眠れた?」
目が覚めたらさい外崎が微笑んでいる。
「外崎さん」
祐羽を抱き締めよしよしと背中を撫でながら、外崎が自分を心配してくれる。
嬉しくて心が暖かくなって、また泣いてしまいそうになる。
お父さん、お母さん…家に帰りたいよ。
九条さんに会いたい…。
思い出して顔を曇らせる祐羽に、中瀬が「顔を上げろ!」と渇を入れてくる。
「絶対お前を家に…会長のところへ帰してやるからな!だから諦めるんじゃねぇぞ!!」
「私達が何がなんでも、命に代えても帰してあげるから。絶対に諦めたら駄目だよ」
中瀬と外崎が自分に優しい声で眼差しを向け言い聞かせてくる。
「泣きたいかもしれないけど、今は我慢しろ。いざとなった時に泣いてたら前が見えないだろ?」
「うっ」
中瀬が人差し指で祐羽の鼻をブニッと押さえた。
「祐羽くんが次に泣くのは無事に九条さんと会えた時って、約束して?」
そう言いながら今度は外崎が祐羽の頬を指でツンツンとつついた。
ふたりの自分を気遣ってくれる気持ちが嬉しくて祐羽は目を潤めて、外崎に抱きついた。
「…っ、はいっ!僕、絶対帰りますっ。もう帰るまで泣きません!うっ…うえぇぇっ」
「泣いてるじゃん」
「ふふふ。これで最後だよね?」
思わずまた泣いてしまった祐羽に、中瀬と外崎はお互い視線を合わせて笑うと、ギュッと三人で抱き合った。
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