闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

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    どこの組の仕業なのか思い当たるところが多すぎて、検討もつかない。
    ここに来ている関係者は、ピンからキリまでとはいえ誰もが玄人で手練れ。
    素知らぬ顔で飄々と式に参加しているのだ。
    裏社会の人間を相手にするのは神経を磨り減らす。
    早く終わってくれ!と、口をついて出そうになる。
    目的が何かは定かではないとはいえ、外崎はあの美貌で普段から肉体的にもちょっかいを出されていると聞くが…無事なのか?
    祐羽の場合はこの世界に最近まで縁もゆかりもない全くの素人で無関係のまだ子どもだ。
    拉致されて怖い思いをしているが、精神的に大丈夫だろうか…。
    それから眞山は最後に中瀬の顔をぼんやりと浮かべた。
    とある件で遭遇して自分が助けたばかりに恩だか何だか知らないが、こちらに足を踏み入れてしまった青年。
    いつでも後を着いて来て、慕ってくれるその感情が年甲斐もなくくすぐったい。
    何度か足を洗わせる為に諭した事もあったが、決して頭を縦には振らなかった。
    いつでも一生懸命で、電話をすれば少し緊張で上ずった声で応える第一声。
    顔を合わせれば何か言いたげな…。
「…無茶だけはするなよ」
    自分の顔を見つめる時の中瀬の瞳に宿る熱を思い出して、眞山は無事を祈るばかりだった。



    そんな眞山の願いが届くはずもなく、中瀬はじっとしてはいられず室内唯一の窓からの脱出を試みて外の様子を伺っていた。
「ダメだ…」
    窓の外は建物の裏側にあたるらしく少しばかり崖になっていて、どう考えても脱出は無謀に思えた。
    なんとか出られたとしても万が一滑ってしまえば滑落してかなり下までいきそうだ。
    ここは表に回らなければ街へと下りることは不可能そうだった。
「どうかな?何とか行けそう?」
    外崎が横から外の造りを見ながら中瀬の意見を訊く。 
    見晴らしの良い場所で、敢えて建てたのであろう崖に出っ張った造りを恨んでしまう。
    見渡す限り山で、遠くに海が見える。
「いや、難しいかもです。建物のちょっと出てる所へ掴まれば何とかなるかもだけど、相当筋力無いと崖下に一直線な感じですね」
「そっか…」
「それに建物の表に回らないと道路へ出られないし、出られたとしてもアイツらの居たリビングから丸見えです」
    中瀬は連れて来られた時に部屋の構造から、敵側の人数や顔をほぼ頭に入れていた。
「じゃぁ、ここからは逃げられないってことですか?」
    祐羽の今にも泣きそうなその不安な顔を見て中瀬は頭を撫でてやる。
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