559 / 1,009
【第2部】8月××日
しおりを挟む
はぁっ、はぁっ、はぁっ…、
走って、走った。
運動神経が良いとはいえない自分だが、なんとか走れている。
部活をしていて本当に良かったと、今心からそう思った。
とにかく少しでもここより遠くへ行かなければと焦りだけが募っていく。
冷静にならなければと思いながらも、なかなかそれが難しい。
こんな事になるなんて。
普通の高校生としての平凡な人生を歩んでいたら…九条と出会わなければ祐羽はこんな目に遇ってはいなかっただろう。
そう。九条とさえ出会わなければ…。
「う…グスッ、もう嫌だ…っ!」
突き当たる度に同じ様に行く方向を迷い、足が止まる。
それだけ時間が無駄に消費されていく。
今の自分には1分1秒も貴重なのに。
泣くなと自分に言い聞かせても勝手に涙がウルッ溢れてくる。
普段から涙もろい自分に、今のこの状況で泣かずに居るというのは無理だった。
高校生だろ、男だろと自分を叱咤しても、どうしても止められない。
うるうると視界に涙が溢れてくる。
そして、まるで全身が心臓にでもなったかの様だ。
ドキドキと破裂しそうに心音が鼓膜に鳴り響く。
上がる息を整えたくても混乱した頭と心では、それさえも上手くいかない。
不安で押し潰されそうだ。
グイッと手の甲で涙を拭うと、祐羽は自分の勘を頼りに移動する。
慣れない土地、見知らぬ場所。
どこをどう行けばいいのか分からない。
けれど、とにかく一刻も早くこの場所から見つからないように逃げなくてはならない。
「助けて…っ!」
けれど、祐羽は忘れていた。
自分がとても方向音痴だということを。
山道は道路が舗装されているとはいえ、途中で分かれ道もあり、似たような景色が続く。
逃げているつもりがグルリと回って半分近く元の場所に近い所へ戻ってきていたことに気がついていなかった。
走って、走った。
運動神経が良いとはいえない自分だが、なんとか走れている。
部活をしていて本当に良かったと、今心からそう思った。
とにかく少しでもここより遠くへ行かなければと焦りだけが募っていく。
冷静にならなければと思いながらも、なかなかそれが難しい。
こんな事になるなんて。
普通の高校生としての平凡な人生を歩んでいたら…九条と出会わなければ祐羽はこんな目に遇ってはいなかっただろう。
そう。九条とさえ出会わなければ…。
「う…グスッ、もう嫌だ…っ!」
突き当たる度に同じ様に行く方向を迷い、足が止まる。
それだけ時間が無駄に消費されていく。
今の自分には1分1秒も貴重なのに。
泣くなと自分に言い聞かせても勝手に涙がウルッ溢れてくる。
普段から涙もろい自分に、今のこの状況で泣かずに居るというのは無理だった。
高校生だろ、男だろと自分を叱咤しても、どうしても止められない。
うるうると視界に涙が溢れてくる。
そして、まるで全身が心臓にでもなったかの様だ。
ドキドキと破裂しそうに心音が鼓膜に鳴り響く。
上がる息を整えたくても混乱した頭と心では、それさえも上手くいかない。
不安で押し潰されそうだ。
グイッと手の甲で涙を拭うと、祐羽は自分の勘を頼りに移動する。
慣れない土地、見知らぬ場所。
どこをどう行けばいいのか分からない。
けれど、とにかく一刻も早くこの場所から見つからないように逃げなくてはならない。
「助けて…っ!」
けれど、祐羽は忘れていた。
自分がとても方向音痴だということを。
山道は道路が舗装されているとはいえ、途中で分かれ道もあり、似たような景色が続く。
逃げているつもりがグルリと回って半分近く元の場所に近い所へ戻ってきていたことに気がついていなかった。
21
お気に入りに追加
3,695
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる