闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

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おまけ

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約20年後ー・・・


「今夜はこれから一緒に…フフッ、どうですか?」

取引先候補として会食した先の社長にやや下品な顔で誘われて、九条は首を振った。

「いえ。申し訳ありませんが、この後もありますので」

取引先の中年オヤジはいい年になってもあちらはお盛んな様で、時間さえあれば水商売の店へと繰り出しているのは調査で把握していた。

こうして九条を誘うのも何度目だろうか。
会社としては九条が上ではあるが、特定分野に関してトップの企業である為、付き合いという意味では重要な相手なので当たり障りない様に断る。

向こうもそれは百も承知だが、敢えて年上の威厳を見せたいといったところだろうか。


そうして笑っていられるのも今だけだ。
せいぜい楽しんでくればいい。

少しずつこちらの毒牙に犯されていっていることも知らずに…こういうトップだから傘下に納めるのは容易いので有り難いといえた。

「そうですか~それは残念ですな。綺麗どころが揃っているので是非と思ったのですが」

今更そこら辺の水商売女に様は無い。

「そうですか。残念ですが、では」

九条はこれっぽっちも残念に思っていないが、そう挨拶を済ませると踵を返した。

童貞を捨てたのは幾つの時だったろう。
それ以来掃いては捨てる程の女を相手にしてきたが、もちろん簡単にはアフターに付き合うことのない様な極上の女が多い。
そんな九条に、安い店で安酒など時間の無駄だ。

「お疲れ様です」

眞山に頭を下げられ鷹揚に返事をして、九条は車へと乗り込んだ。
高級な車は外の喧騒を完全にシャットアウトしてくれる。

走り出した車に後は任せて、九条は先ほど震えたスマホを取り出した。
案の定、可愛い仔犬からのメッセージ。

今夜は遅くなると伝えていた為、お付き係りの中瀬と一緒に帰りに洋食の店でエビフライを食べたというどうでもいい報告だった。
こんなくだらない報告など、昔の自分なら問答無用で…いや、今でも部下がすれば視線だけで射殺す案件も祐羽からのメッセージなら微笑ましく感じてしまう。

…俺も年をとった証拠か?

そんな九条を乗せた車は自宅マンションへと辿り着き、裏口からエレベーターであっという間に自宅のドア前。
ドアを開ければ、ロック解除の音を聞きつけた祐羽が既に玄関へ向かってやって来ていた。

「おかえりなさい」

この言葉に今日の疲れ全てが霧散していく。

中瀬が入れ替わりに出て行き眞山と頭を下げて、玄関ドアの向こうへと消えていった。

「お疲れ様でした」

「あぁ…」

九条は堪らなくなって祐羽を抱き締めた。

「わぁっ?!」

何度か経験しているのにも関わらず、何故か毎回驚く祐羽に内心笑ってしまう。

フッ

祐羽を抱き込んで癒される。
そんな九条の日常。

こんな時、過去の自分に恋人に癒される日々が来ることを教えてやりたいと、時折思う九条。

祐羽が何か感じたのか腕を回してきて、自分の背中を黙ってギュッとしてくれる。

なんだか単純な自分に笑えてきてしまう。
たったこれだけで、幸せを感じるのだから。

祐羽の首筋の匂いを嗅いでそこへキスを施すと、祐羽の顔を見つめた。
擽ったくてもぞもぞして、それから照れ顔でキョトンと見上げる恋人が可愛くて仕方ない。
そんなことをおくびにも出さず、改めて唇を奪う九条なのだった。
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