闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

文字の大きさ
上 下
354 / 1,009

告げる想い

しおりを挟む
夜の港は遠くに船が行き交い、空には星が瞬いている。
時折吹く優しい風。
海沿い。
ほんのりと照らし出された場所にふたりは向かい合っていた。

言い切って居たたまれなくなり俯いた祐羽と黙ったままの九条。

周りに人はもちろん居ない。
静かに遠くで汽笛が鳴ったのが聴こえるだけだ。

きっと祐羽が思うよりも時間にすれば短かっただろう。
けれど、祐羽からすると長いと感じるには十分な時間だった。

「俺の答えを聞いたらお前はどうするだろうな…」

「え?」

 不意に溢された九条の言葉に、祐羽は落としていた視線をゆっくりと上げた。
そこには少しらしくない表情を浮かべた九条が居た。
困ったといえばいいのだろうか。
そんな表現がピッタリの顔だ。

そう呟いた九条は、どこか訴える目をしていた。

こんな目をした九条さん、初めて見た。
なんでそんな顔するの?
なんでが増えちゃうから、…困るから辞めて欲しい。

九条が口を皮肉気に歪めた。
それからポケットに入れていた手を出すと、垂れてきた前髪を後ろへ軽く流した。

「お前と初めて会った時から目が離せなかった…」

え?初めて会った時から…?

予想外の言葉だ。
目を閉じてそう言った九条は、それからゆっくりと視線を祐羽へと向けた。
外灯の明かりが瞳に浮かんでいる。
祐羽はじっとその光を見つめた。

「出会い方が悪かったから記憶に残っただけだと思った…思い込む事にした」

どこか悔しそうに、そして懐かしそうに九条が言った。
しおりを挟む
感想 160

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ヤクザに囚われて

BL
友達の借金のカタに売られてなんやかんやされちゃうお話です

処理中です...