闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

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どうやら折れてくれたらしい。

「……分かった。…頼む」

 良かった~!

「はいっ!え…っと、飲み物は何がいいですか?あとサイズは、」

「ホット。ミディアムで」

「分かりました。それじゃぁ、すみません…少し待っててください。行ってきますね」

 そう言い残して祐羽は、ベンチへ腰かける九条を振り返り確認すると、フードコートへと向かった。


「アイスティーのSサイズとホットコーヒーのMサイズください」

 店で注文してお金を払いカップの載ったトレーを手に戻る。
 さっきは少し強引すぎたかと思いつつもやはり譲れなかった。
 まさか九条に対してあんな風に強く言えるなんて、余程自分が必死だったと分かる。
 
 僕だってこのくらいの事はしたいもん。

 けれど先程の九条の表情は思わず笑いそうになってしまった。
 ほんの僅かではあるが、表情が驚いていた様に見えたからだ。
 九条のあんな顔は初めて見た。

  思いだし笑いを堪えながらトレーを手に戻ってみれば、九条は誰かに連絡を入れている所だった。

 誰だろう?
 眞山さんかな?

 邪魔をしてはいけないと思い少し側に立って待っていると、気がついた九条が自分の横を示した。
 遠慮がちに隣へ静かに座ると、前を向いたまま通話が終わるのを待った。
  九条はそれから直ぐに「終わったら連絡する。それまでゆっくりしてろ」と通話を終えた。

 スマホを仕舞うのを確認してから祐羽は声を掛けた。

「コーヒーです。熱いので気をつけてください」

「あぁ」

 九条は頷き受け取るが、熱い紙コップも全く平気な様子だ。
 こうして見るとカップが物凄く小さく見える。
 それだけ九条は大きな手をしているということになる。
 それなら自分が簡単に掴まれたり持ち上げられてしまうのも納得だ。

 あの手で…、って考えるな僕のバカッーっ!!

 ついベッドの上であれこれ触られた記憶までもを思い出しそうになって、自分の不謹慎さに渇を入れる。
 しかし、ついついその大きな手と長い指を注視してしまうのだった。
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