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また明日
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なんとなく気持ちが沈んでしまったせいか、足取りが重くなる。
ゆっくり階段を降りていく。
あれほど両親に真実を話して、必要ならば警察へ相談に行こうと息巻いていたというのに。
今はさっきまでの気持ちが凪いでしまっているのが、自分でも分かる。
なんでこんな気持ちになるんだろ…。
「…はぁっ」
肩で息をすると、リビングのドアを開けて中へと入った。
すると、そこには母親しか居ない。
いつもならこの時間、父・亮介も揃ってソファでテレビを観ているはずなのだ。
「あれ?お父さんは?」
お風呂だろうかとも思ったが、時間的に長すぎるし音も聞こえない。
「お父さんなら今日は仕事でちょっと遅くなるみたいよ」
「えっ?!遅くなるのっ?」
せっかく話をしようと思っていたのに、これでは話せないではないか。
香織だけに話してもショックが大きすぎて…という事になりかねない。
こういう事はショックを共有出来る亮介が居なければ、負担が大きいだろう。
それに、せっかく仕事が上手くいって機嫌の良い亮介に帰宅早々話すのは気が引けた。
「そうよ~電話があったの。何だか仕事が上手くいってるみたいで、声が嬉しそうだったわよ」
香織はその時の亮介を思い出したのか、フフッと嬉しそうにそう言った。
「…そうなんだ」
「どうしたの?何かお父さんに用事でもあった?」
声が落胆していたのだろう、不思議そうに香織が訊いてきた。
祐羽は首を軽く振って、笑って見せた。
上手く笑えただろうか?
「ううん、何でもないよ。仕事上手くいってるなら良かったね」
そう明るい声を出すと、香織も直ぐに話題に乗ってきた。
今日は話しは出来ないけれど、中瀬によると明後日まで九条は不在らしい。
それなら明日、両親に九条の事について相談をしても遅くはない。
それに何故かモヤモヤしたこの気持ちのまま話をするのは、少し引っ掛かる物があるから今日話せなくて丁度良かったのかもしれない。
祐羽は半分無理に表情を変えた。
「ゆうくん、ところで今日はどうだったの?」
祐羽の気持ちが切り替わった事が分かった香織は、今日の様子を訊いてきた。
母には何か伝わる物があるのだろうか?
「楽しかったよ。えっとね…」
所々を誤魔化しながら伝えると「本当にいい先輩と知り合えて良かったわねぇ」と嬉しそうに言われた。
それが全て本当の事ならどんなに良かったか。
祐羽は話が一段落すると、直ぐに風呂に入り寝室へと戻った。
今日は疲れていたらしい。
中瀬の指摘されたからではないけれど、直ぐに睡魔が襲ってきて早々に夢の中へと旅立った。
机に置いたスマホに新しいメッセージが入ったのは、その少し後だった。
ゆっくり階段を降りていく。
あれほど両親に真実を話して、必要ならば警察へ相談に行こうと息巻いていたというのに。
今はさっきまでの気持ちが凪いでしまっているのが、自分でも分かる。
なんでこんな気持ちになるんだろ…。
「…はぁっ」
肩で息をすると、リビングのドアを開けて中へと入った。
すると、そこには母親しか居ない。
いつもならこの時間、父・亮介も揃ってソファでテレビを観ているはずなのだ。
「あれ?お父さんは?」
お風呂だろうかとも思ったが、時間的に長すぎるし音も聞こえない。
「お父さんなら今日は仕事でちょっと遅くなるみたいよ」
「えっ?!遅くなるのっ?」
せっかく話をしようと思っていたのに、これでは話せないではないか。
香織だけに話してもショックが大きすぎて…という事になりかねない。
こういう事はショックを共有出来る亮介が居なければ、負担が大きいだろう。
それに、せっかく仕事が上手くいって機嫌の良い亮介に帰宅早々話すのは気が引けた。
「そうよ~電話があったの。何だか仕事が上手くいってるみたいで、声が嬉しそうだったわよ」
香織はその時の亮介を思い出したのか、フフッと嬉しそうにそう言った。
「…そうなんだ」
「どうしたの?何かお父さんに用事でもあった?」
声が落胆していたのだろう、不思議そうに香織が訊いてきた。
祐羽は首を軽く振って、笑って見せた。
上手く笑えただろうか?
「ううん、何でもないよ。仕事上手くいってるなら良かったね」
そう明るい声を出すと、香織も直ぐに話題に乗ってきた。
今日は話しは出来ないけれど、中瀬によると明後日まで九条は不在らしい。
それなら明日、両親に九条の事について相談をしても遅くはない。
それに何故かモヤモヤしたこの気持ちのまま話をするのは、少し引っ掛かる物があるから今日話せなくて丁度良かったのかもしれない。
祐羽は半分無理に表情を変えた。
「ゆうくん、ところで今日はどうだったの?」
祐羽の気持ちが切り替わった事が分かった香織は、今日の様子を訊いてきた。
母には何か伝わる物があるのだろうか?
「楽しかったよ。えっとね…」
所々を誤魔化しながら伝えると「本当にいい先輩と知り合えて良かったわねぇ」と嬉しそうに言われた。
それが全て本当の事ならどんなに良かったか。
祐羽は話が一段落すると、直ぐに風呂に入り寝室へと戻った。
今日は疲れていたらしい。
中瀬の指摘されたからではないけれど、直ぐに睡魔が襲ってきて早々に夢の中へと旅立った。
机に置いたスマホに新しいメッセージが入ったのは、その少し後だった。
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