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非現実的
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過去は消せない。
何でこんな事になっちゃったんだろう。
この人のせいで僕…。
助けて貰った感謝よりも無理矢理奪われた怒りと哀しみと戸惑いの方が大きい。
ちょっと優しくされたくらいで絆される自分のお気楽さが嫌になる。
だからつけ込まれるのだと、祐羽は自分を叱る。
相手の真意が何処にあるか分からないままに、好きにさせては駄目だ。
とにかく今日はこれで帰れる。
そして家に帰ってから何とか打開策を考えなくては。
祐羽はそう強く思って手に力を入れた。
「中瀬がここへ迎えに来る」
「は、え?!」
「お前の送迎はこれから中瀬がする」
物思いに耽っていると九条にそう言われて一瞬戸惑ったが、ゆっくり頷いた。
ここで否定するのは賢くないだろう。
緊張感に包まれた数時間。
料理を作ってくれたし、テレビの事を含めて九条が自分に気を配ってくれたのは確かだと思う。
けれど、これが明日からも続くとは限らない。
相手は何を考えているか分からないヤクザなのだ。
今日も特別な会話があったわけでも、楽しく盛り上がったわけでもない。
きっと九条も面白くないと思ったはずだ。
次の呼び出しはきっとない。
そう思いたい。
これから考える打開策が無駄になるのが一番いいのだから。
ピンポーン
「!」
ここで祐羽の思考は現実へ引き戻された。
九条が電話してほんの2分ほどで、インターホンが鳴った。
どうやら中瀬は、いつでも対応出来るように駐車場に待機していたらしい。
『中瀬です。迎えにあがりました』
インターホンの応答に中瀬が答えるのが聞こえて、祐羽は玄関へと体を向けた。
その横を九条が抜いて、玄関へと先導する。
大きな背中の後を追う。
その背中を見ながら思考はまたしても脳をグルグルと掻き回す。
自分が今度から九条と一緒に毎週ここで過ごす?
九条に何のメリットもない。
やはり九条に何か別の考えがあるのだろうか…。
こんな自分が必要な理由?
「……ないよね」
ヤクザと高校生。
非現実的すぎる。
黙って後を着いて辿り着いた玄関。
その閉じられたドアの前で、九条が振り返った。
何でこんな事になっちゃったんだろう。
この人のせいで僕…。
助けて貰った感謝よりも無理矢理奪われた怒りと哀しみと戸惑いの方が大きい。
ちょっと優しくされたくらいで絆される自分のお気楽さが嫌になる。
だからつけ込まれるのだと、祐羽は自分を叱る。
相手の真意が何処にあるか分からないままに、好きにさせては駄目だ。
とにかく今日はこれで帰れる。
そして家に帰ってから何とか打開策を考えなくては。
祐羽はそう強く思って手に力を入れた。
「中瀬がここへ迎えに来る」
「は、え?!」
「お前の送迎はこれから中瀬がする」
物思いに耽っていると九条にそう言われて一瞬戸惑ったが、ゆっくり頷いた。
ここで否定するのは賢くないだろう。
緊張感に包まれた数時間。
料理を作ってくれたし、テレビの事を含めて九条が自分に気を配ってくれたのは確かだと思う。
けれど、これが明日からも続くとは限らない。
相手は何を考えているか分からないヤクザなのだ。
今日も特別な会話があったわけでも、楽しく盛り上がったわけでもない。
きっと九条も面白くないと思ったはずだ。
次の呼び出しはきっとない。
そう思いたい。
これから考える打開策が無駄になるのが一番いいのだから。
ピンポーン
「!」
ここで祐羽の思考は現実へ引き戻された。
九条が電話してほんの2分ほどで、インターホンが鳴った。
どうやら中瀬は、いつでも対応出来るように駐車場に待機していたらしい。
『中瀬です。迎えにあがりました』
インターホンの応答に中瀬が答えるのが聞こえて、祐羽は玄関へと体を向けた。
その横を九条が抜いて、玄関へと先導する。
大きな背中の後を追う。
その背中を見ながら思考はまたしても脳をグルグルと掻き回す。
自分が今度から九条と一緒に毎週ここで過ごす?
九条に何のメリットもない。
やはり九条に何か別の考えがあるのだろうか…。
こんな自分が必要な理由?
「……ないよね」
ヤクザと高校生。
非現実的すぎる。
黙って後を着いて辿り着いた玄関。
その閉じられたドアの前で、九条が振り返った。
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