闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

文字の大きさ
上 下
172 / 1,008

料理上手

しおりを挟む
 九条から声を掛けられて、ずっと見ていた事に改めて気づく。
 すんなり視線が合ったからだ。

「来い」

「あ、はい…」

 祐羽は驚くと同時に素直に頷くと、戸惑いつつもトコトコとダイニングテーブルへと向かった。
 逆らう理由も勇気も無い。
 そして何より、九条の作った料理が気になったからだ。

「え!?」

 テーブルまで来た祐羽は、そこへ並べられた料理を見て思わず目を丸くした。

「凄…!」

 テーブルには、九条が作ったとは思えない様な彩り良い綺麗に盛られた料理が並んでいたからだ。
 てっきり豪快男の料理というのを想像していたのだが。
 
これを九条さんが…?

「座れ」

「あ、…」

 そう言われて自分が立ちっぱなしだったことを思い出して慌てて座る。

 どうやらイタリアンの様だ。

 並べられた料理は見た目も豪華で綺麗で、家やその辺の店で食べた事のある物とは訳が違う。
 イタリアンを食べた事はあってもせいぜいパスタやピッツァくらいで、実際に祐羽が食べた事のない料理が殆どだ。
 殆どというのは間違いかもしれない。
 見た目からして全く同じ物を食べた事があるとは言えないと思ったからだ。

 これを九条が作ったとは、驚くなという方が無理だろう。

「…凄い」

 祐羽はもう一度思わず呟いた。

 座った祐羽の目の前にはご馳走が並んでいる。
 カトラリーがセットされ側に置かれた繊細なグラスには水が注がれている。
 
 白を基調とした輝く皿に載せられた料理は、目からも美味しさを伝えてくる。
トマトとチーズが色鮮やかなカプレーゼに不思議な色合いのポタージュ、それから美味しそうなペンネカルボナーラ。
トルタサラータは焼き色も食欲を誘い、湯気の出ているリゾットからは濃厚なチーズの香りが祐羽の鼻孔を擽りお腹が鳴りそうだ。

 そんな彩りも薫りも良い料理は、ダイニングテーブルの上にある雰囲気の良いライトに照らされて、ここが高級イタリアンの店と勘違いさせる程だった。

「食っていいぞ」

 祐羽が皿の上を行ったり来たりで見つめていると、少し呆れた様な九条の声が食べることを促した。

「あっ、ありがとうございます。…いただきます」

 祐羽は手を合わせると、戸惑いながらカトラリーを手にした。



※前回の突発料理アンケートご参加ありがとうございました。
また只今開催中クリスマスアンケートご協力ありがとうございます(о´∀`о)結果と公開はTwitterにて。
しおりを挟む
感想 159

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...