闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

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選択ミス

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  まさかの九条からの発言に、祐羽は口がムズムズするのを誤魔化した。

 自分の為にこの番組を契約してくれたという事だろうか?
 九条の言った内容はそういう事だ。

 勘違いでも何でもない。
 九条自身は必要無かったものを敢えて祐羽の為に…。

 どうしてわざわざ?

 疑問と共に沸き起こった気恥ずかしさ。

 その意味する所は全く分からないが、とにかく祐羽の為にという事は確かなようだ。

僕の為に…何で?

 ほんの些細な気遣いが嬉しいと思ってしまう。
 絆されそうになる自分は甘いのだろうか?
 それでも優しくされれば人間誰しも少しは相手に好感を持ってしまうと思う。
だからこれは別に悪い事ではないし、おかしな感情ではないはずだ。

「あ、り、がとう…ございます…」

 ぎこちなく礼を言えば、九条は「あぁ…」とひと言だけ発した。
 そんな九条の横顔をチラッと見た祐羽は、自然と口元が緩む自分に気づかないままテレビへと視線を戻した。

 さて、何を観ようか?

この静かな空間を打破する為には…よし。

 祐羽は試しにバラエティ番組のチャンネルに合わせてみた。
 ちょうどタイミングよく、お笑い芸人が集まってコントを披露するスペシャル番組をしていた。
 画面にはあまり詳しくない祐羽でも知っている面白いと評判の超人気お笑い芸人がふたり。

 面白くてニマニマ笑いを堪えながら祐羽は、隣の九条を見た。
 きっと少しは笑っているはずだ。

「…」

 笑ってない。

 その後も何組か実力ある芸人が出てくるが、祐羽の顔は九条の変化ない鉄面皮を眺める時間と化していた。

 無情にもリビングにはお笑い芸人のコントと会場の笑い声が響くだけだった。
 テレビだけ盛り上っていて、現場は置いてけぼり。

「…うぅっ。これって…」

選択ミスだ…。

 祐羽は溜め息をついた。

 一方そんな九条はというと、長い足を組み替えて怠そうにしている。
 片手は膝に掛けてもう片方の手ををソファの背凭れに置いてジッと画面を見つめていた。
 九条の腕が長いせいで、隣の自分の頭の後ろに手がくる形になっていた。

それが、つまらなさそうに画面を眺める九条の顔と相まって余計にドキドキの原因になっている。

 祐羽はチャンネルを変えるついでに、気持ち体を前に寄せてコッソリ九条の腕から逃れるのだった。
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