151 / 1,008
歩み寄り
しおりを挟む
泣くつもりは無かった。
けれどこの打開策の無さに頭は混乱していたし、恐ろしい口調で命令してきた九条を前に、どうしていいのか分からず。
自然に涙が出てしまったのだ。
祐羽はグスッと鼻を軽く啜り手の甲で涙を拭った。
どうしたらいいんだろ?
話は聞いてくれないし、命令だと言い放った九条はとても怖い。
泣いてもダメだと言い聞かせるけれど、1度流れた涙は止まってくれそうもなかった。
これでは考えが余計に纏まらないし、嗚咽で声も出せない。
九条がうるさいからという理由で、機嫌を益々損ねる可能性もある。
何度も目元を拭いながら、なんとか涙を止める。
その間、顔を上げることも出来ずに俯いていたので、九条の様子は分からない。
自分自身の泣き声が耳に入るだけだった。
「チッ」
不意に九条の舌打ちが聞こえて、祐羽はビクッと体を硬直させた。
まさか怒らせた?
ヒックヒックと小さく嗚咽を堪えて、祐羽は次に発せられる九条のことばを緊張して待った。
うるさくて面倒なヤツ!!と、怒鳴られるだろか?
それとも玄関の外へ放り出されるか?
自分がのろくて鈍感で泣き虫で面倒なヤツなのは承知しているが、怒鳴られるのは嫌だ。
九条に怒鳴られると、祐羽の心臓は麻痺しかねない。
できればこのまま玄関の外へ放り出して「二度と来なくていい」と言われたい願望に囚われた。
祐羽はもう1度涙を拭って、唇を引き締めて顔を上げた。
濡れた祐羽の目は真っ直ぐと九条に向けられていて、九条も祐羽をじっと見ていた。
あれ?
祐羽は内心ビクビクしながら顔を上げたのだが、九条の表情がさっきと少し違う様に感じて、怖がっていた気持ちが少し薄まる。
なんだかさっきと、違う…?
相変わらずの無表情に近い顔の中にも僅かな変化を感じて、祐羽は瞬きを繰り返した。
目が…目の感じが、違う…?
無意識に首を傾げた。
どこがと訊かれれば、目が違っていた。
目の中の色合いが違うと感じた。
それは前回会った時にも感じた僅かな九条の変化だった。
けれどこの打開策の無さに頭は混乱していたし、恐ろしい口調で命令してきた九条を前に、どうしていいのか分からず。
自然に涙が出てしまったのだ。
祐羽はグスッと鼻を軽く啜り手の甲で涙を拭った。
どうしたらいいんだろ?
話は聞いてくれないし、命令だと言い放った九条はとても怖い。
泣いてもダメだと言い聞かせるけれど、1度流れた涙は止まってくれそうもなかった。
これでは考えが余計に纏まらないし、嗚咽で声も出せない。
九条がうるさいからという理由で、機嫌を益々損ねる可能性もある。
何度も目元を拭いながら、なんとか涙を止める。
その間、顔を上げることも出来ずに俯いていたので、九条の様子は分からない。
自分自身の泣き声が耳に入るだけだった。
「チッ」
不意に九条の舌打ちが聞こえて、祐羽はビクッと体を硬直させた。
まさか怒らせた?
ヒックヒックと小さく嗚咽を堪えて、祐羽は次に発せられる九条のことばを緊張して待った。
うるさくて面倒なヤツ!!と、怒鳴られるだろか?
それとも玄関の外へ放り出されるか?
自分がのろくて鈍感で泣き虫で面倒なヤツなのは承知しているが、怒鳴られるのは嫌だ。
九条に怒鳴られると、祐羽の心臓は麻痺しかねない。
できればこのまま玄関の外へ放り出して「二度と来なくていい」と言われたい願望に囚われた。
祐羽はもう1度涙を拭って、唇を引き締めて顔を上げた。
濡れた祐羽の目は真っ直ぐと九条に向けられていて、九条も祐羽をじっと見ていた。
あれ?
祐羽は内心ビクビクしながら顔を上げたのだが、九条の表情がさっきと少し違う様に感じて、怖がっていた気持ちが少し薄まる。
なんだかさっきと、違う…?
相変わらずの無表情に近い顔の中にも僅かな変化を感じて、祐羽は瞬きを繰り返した。
目が…目の感じが、違う…?
無意識に首を傾げた。
どこがと訊かれれば、目が違っていた。
目の中の色合いが違うと感じた。
それは前回会った時にも感じた僅かな九条の変化だった。
21
お気に入りに追加
3,671
あなたにおすすめの小説
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
R-18♡BL短編集♡
ぽんちょ♂
BL
頭をカラにして読む短編BL集(R18)です。
pixivもやってるので見てくださいませ✨
♡喘ぎや特殊性癖などなどバンバン出てきます。苦手な方はお気をつけくださいね。感想待ってます😊
リクエストも待ってます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる