闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

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香り

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「その汚い体を洗え」

下ろされた場所はどうやら浴室で、祐羽の自宅とは全く違っていた。
どこかの高級ホテル…それもテレビで観たことのある最上級の部屋にある様な浴室に思わず目を白黒させた。

「あの店の臭いを一切残すな」

どこか不機嫌な顔で言う。

「脱いだ服はそこのボックスへ入れておけ。あと、好きに何でも使うといい」

それだけ言うと、九条は脱衣場のドアを閉めて何処かへ行ってしまった。

祐羽は途方に暮れたが、こうしていても仕方ないだろう。
綺麗にしなければ、九条の態度からして話すら聞いてくれそうもない。

元来天然がゆえに楽天的な思考の持ち主である祐羽は、これからの事は後で考えるとして、とりあえずシャワーを浴びる事にした。

「うわぁ、凄い…。高級そう」

ほんのり薄明かるい照明の脱衣場で、人生初の仕事着であるキャミソールを脱ぐと、下着も迷いなく脱いで近くのボックスへ入れる。

「うわぁっ⁉ え、鏡⁉」

気がつくとそこには大きな全身が映る鏡があって、祐羽は自分の貧弱な裸体を目にして、恥ずかしさに慌ててその場を離れた。

「お風呂のドアが透明とか、初めてだ」

それから浴室へのドアを開いた。

脱衣場から風呂場が丸見えだが、ここには今誰も居ないのだから恥ずかしくはない。

「気持ちいい…」

水温を調節してシャワーを浴びると、汚れも何もかもが洗い流される気持ちになる。
置かれていたシャンプーやコンディショナーを使って髪を綺麗に洗うと、今度は体を洗う。

「あ~、この匂い好きかも」

シャンプーもボディーソープもほんのり甘くて、とてもいい匂いがする。

「…だけど、あの人とは違うよな?」

何度か九条に抱えられたりして密着したが、こんな匂いは一切しなかった。
どちらかといえば、爽やかな…それでいて何処か甘い匂いが混ざっていた。
甘いといっても、こんな果物の様な匂いではない。

「九条さん…いい匂いしてたなぁ…」

ゴシゴシ体を洗いながら祐羽は、九条の顔を思い浮かべた。
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