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ふたりの日々
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次の日、学校が終わると、私は大急ぎで図書館に向かって走った。
そして図書館に着いて、入り口の辺りを見て回ったが、流石に少女はまだ来ていなかった。
ひとまず入り口の前で待ちながら、呼吸を整える事にした。
普段ろくに運動していない身で走りまくったので、結構苦しくなっていた。
少女は思ったより早く来た。
昨日言っていた通りに少女も走ってきたらしく、苦しそうに息を切らしていた。
「はぁ…はぁ…おまたせ!」
「そんなに無理して急がなくても大丈夫なのに」
…ついさっきまで同じようなことになっていたのはナイショにして、そんなことを言ったあと、ふたりは昨日と同じ本を取って読み始めた。
少女が左側を、私が右側を持って。
昨日と同じように話しかけたりかけられたりしながら読み進めていると、ついにふたりはその本を読み終えてしまった。
私が手を離すと、少女は本を開いたまま机に置いた。
そして、あからさまに何か言いたそうな顔で私の方を見つめた。
言いたいことは分かっていたし、私もその気だったので、私の方から言った。
「…次の本は何にするの?」
「…!ありがとー!お姉さん!」
その日から、ふたりは色んな本を一緒に読むようになった。
学校終わりには決まってすぐに図書館へ向かい、何の本を読むか決めて、一緒に読み始めた。
そしてある日には、私の方からこんな提案をした。
「あの…もしよかったらだけど、休日も一緒に本を読まない?」
「ふぇ?うれしいけど…お姉さん、良いの…?」
「もちろん!私もその方が楽しいよ」
色々あって家では本がゆっくり読めなかったので、休日も一緒に読めたら楽しいだろうなあと思っていたのだ。
だから、少女がうなずいてくれたときは、わくわくしてしょうがなかった。
その後からはもうほとんど毎日一緒に本を読んでいた。
本の内容について話すのはもとろんのことだったが、だんだん本以外のことも話すようになって、少女の名前は"かずみ"であることや、好きな食べ物がカレーであること、案外私と年がひとつしか離れていなかったことも知った。
同時に、私のこともかずみちゃんにたくさん話した。
ある日、かずみちゃんが来ない日があった。
いつものように図書館に走ってきてからしばらく経っているのだが、かずみちゃんは一向に来なかった。
だんだん暑くなってきて、雨も増えてくる時期。
外で待っていると汗が止まらなかった。
事情があって遅れているのだろうと思い、それでもひたすらに待ち続けたのだが…
とうとう普段ならかずみちゃんが門限で帰る時間になっても、かずみちゃんは来なかった。
次の日も、今日は来るだろうと思って、再びずっと待っていたのだが…
今度もかずみちゃんは来なかった。
二日も来なかったので、かずみちゃんに何かあったんじゃないかと不安になったのだが…
後日、いつも通りやってきたかずみちゃん曰く、ちょっとした熱で行けなかっただけだったらしい…。
ある日、図書館に着くと、かずみちゃんが必死にプリントを解いていた。
いつもの待機場所で、立ったまま書こうとしているので、かなり大変そうに見えた。
しかし、私が来たのを見ると、何事もなかったかのようにプリントをしまった。
「ひなちゃん!昨日の本の続き、早く読もう!」
「…さっきのプリントは終わったの?」
「さ、さっきのはもうちょっとで終わるよ」
どうも言い方が怪しい…。
「"さっきのは"ってことは…他のやつは終わってないの?」
「うっ…え、えーっと~、オワッタカナー」
…かずみちゃんは明らかに目をそらしながらそう言った。
「はぁ…あとどれくらい残ってるの?」
「…さっきのと似たような算数のプリントが、20枚くらい…」
「そ、そんなに?いつまでに終わらせるものなの?」
「…あした」
「えぇっ!?それ、本を読んでる場合じゃないでしょ!」
「で、でも……」
「今日は先にプリントを終わらせよう?私も手伝うから…」
その日は結局、一日中かずみちゃんのプリントを見て終わった。
ある日、いつものように図書館前で会った時、かずみちゃんは下を向いてぼーっとしていた。
すぐそばまで行っても気づいてくれなかったので、
「かずみちゃん、どうしたの?」
と声をかけた。
すると、やっと気づいたようで、
「わっ!ひ、ひなちゃん、ごめんね!ちょっとぼーっとしてただけだから、気にしないで!」
と言った。
その後は特に変わった様子もなくふたりで本を読んだので、その日はそれ以上のことは無かったのだが…
いつもソワソワしながら待っているかずみちゃんが、あんなにぼーっとしていたのはなぜだったんだろう?
本を読んでいる間は楽しくてそんなこと忘れてしまっていたので、気になってそう考えたのは、家に帰ってからだった。
そして、本人に聞くことがないまま結局その日のことは忘れてしまっていた。
しかし、その後から、かずみちゃんの様子が少し変わった気がした。
かずみちゃんは、ふとした時に落ち込んだような顔を見せることが増えていた。
そして、その度にかずみちゃんがぼーっとしていた日のことをはっと思い出した。
何度かそれを指摘した時もあったのだが、かずみちゃんは「なんでもない!」としか言ってくれないので、結局気のせいだと思うことしかできないまま、時は流れていった。
そして図書館に着いて、入り口の辺りを見て回ったが、流石に少女はまだ来ていなかった。
ひとまず入り口の前で待ちながら、呼吸を整える事にした。
普段ろくに運動していない身で走りまくったので、結構苦しくなっていた。
少女は思ったより早く来た。
昨日言っていた通りに少女も走ってきたらしく、苦しそうに息を切らしていた。
「はぁ…はぁ…おまたせ!」
「そんなに無理して急がなくても大丈夫なのに」
…ついさっきまで同じようなことになっていたのはナイショにして、そんなことを言ったあと、ふたりは昨日と同じ本を取って読み始めた。
少女が左側を、私が右側を持って。
昨日と同じように話しかけたりかけられたりしながら読み進めていると、ついにふたりはその本を読み終えてしまった。
私が手を離すと、少女は本を開いたまま机に置いた。
そして、あからさまに何か言いたそうな顔で私の方を見つめた。
言いたいことは分かっていたし、私もその気だったので、私の方から言った。
「…次の本は何にするの?」
「…!ありがとー!お姉さん!」
その日から、ふたりは色んな本を一緒に読むようになった。
学校終わりには決まってすぐに図書館へ向かい、何の本を読むか決めて、一緒に読み始めた。
そしてある日には、私の方からこんな提案をした。
「あの…もしよかったらだけど、休日も一緒に本を読まない?」
「ふぇ?うれしいけど…お姉さん、良いの…?」
「もちろん!私もその方が楽しいよ」
色々あって家では本がゆっくり読めなかったので、休日も一緒に読めたら楽しいだろうなあと思っていたのだ。
だから、少女がうなずいてくれたときは、わくわくしてしょうがなかった。
その後からはもうほとんど毎日一緒に本を読んでいた。
本の内容について話すのはもとろんのことだったが、だんだん本以外のことも話すようになって、少女の名前は"かずみ"であることや、好きな食べ物がカレーであること、案外私と年がひとつしか離れていなかったことも知った。
同時に、私のこともかずみちゃんにたくさん話した。
ある日、かずみちゃんが来ない日があった。
いつものように図書館に走ってきてからしばらく経っているのだが、かずみちゃんは一向に来なかった。
だんだん暑くなってきて、雨も増えてくる時期。
外で待っていると汗が止まらなかった。
事情があって遅れているのだろうと思い、それでもひたすらに待ち続けたのだが…
とうとう普段ならかずみちゃんが門限で帰る時間になっても、かずみちゃんは来なかった。
次の日も、今日は来るだろうと思って、再びずっと待っていたのだが…
今度もかずみちゃんは来なかった。
二日も来なかったので、かずみちゃんに何かあったんじゃないかと不安になったのだが…
後日、いつも通りやってきたかずみちゃん曰く、ちょっとした熱で行けなかっただけだったらしい…。
ある日、図書館に着くと、かずみちゃんが必死にプリントを解いていた。
いつもの待機場所で、立ったまま書こうとしているので、かなり大変そうに見えた。
しかし、私が来たのを見ると、何事もなかったかのようにプリントをしまった。
「ひなちゃん!昨日の本の続き、早く読もう!」
「…さっきのプリントは終わったの?」
「さ、さっきのはもうちょっとで終わるよ」
どうも言い方が怪しい…。
「"さっきのは"ってことは…他のやつは終わってないの?」
「うっ…え、えーっと~、オワッタカナー」
…かずみちゃんは明らかに目をそらしながらそう言った。
「はぁ…あとどれくらい残ってるの?」
「…さっきのと似たような算数のプリントが、20枚くらい…」
「そ、そんなに?いつまでに終わらせるものなの?」
「…あした」
「えぇっ!?それ、本を読んでる場合じゃないでしょ!」
「で、でも……」
「今日は先にプリントを終わらせよう?私も手伝うから…」
その日は結局、一日中かずみちゃんのプリントを見て終わった。
ある日、いつものように図書館前で会った時、かずみちゃんは下を向いてぼーっとしていた。
すぐそばまで行っても気づいてくれなかったので、
「かずみちゃん、どうしたの?」
と声をかけた。
すると、やっと気づいたようで、
「わっ!ひ、ひなちゃん、ごめんね!ちょっとぼーっとしてただけだから、気にしないで!」
と言った。
その後は特に変わった様子もなくふたりで本を読んだので、その日はそれ以上のことは無かったのだが…
いつもソワソワしながら待っているかずみちゃんが、あんなにぼーっとしていたのはなぜだったんだろう?
本を読んでいる間は楽しくてそんなこと忘れてしまっていたので、気になってそう考えたのは、家に帰ってからだった。
そして、本人に聞くことがないまま結局その日のことは忘れてしまっていた。
しかし、その後から、かずみちゃんの様子が少し変わった気がした。
かずみちゃんは、ふとした時に落ち込んだような顔を見せることが増えていた。
そして、その度にかずみちゃんがぼーっとしていた日のことをはっと思い出した。
何度かそれを指摘した時もあったのだが、かずみちゃんは「なんでもない!」としか言ってくれないので、結局気のせいだと思うことしかできないまま、時は流れていった。
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