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20.我が輩は石である。魂の存在から世界を考察する石である。

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 自分の仮説で自分の首が絞まっていく。
 我が輩は石である。名前など有るわけが無い。

 絞まる首も無いというのに、全く滑稽な話である。
 我が輩の現状打破の可能性は、神に至る一歩を踏み出す事だという。
 滑稽も滑稽、滑稽ここに極まれりである。
 我が輩の魂の価値は、今の現状が示すとおり、ただの石に過ぎない。
 だというのに、我が輩が過程と推論を重ね、ようやく導き出した答えが、神と同格へ至る一歩を踏み出せという。
 無理だ。正直、無理だ。おそらく無理だ。絶対無理だ。
 前世なら「このくそゲーが!」と八つ当たりしているに違いない。
 ただ思考を繰り返す事しか出来ない存在が、何をどうすれば神と同格を目指せると言うのだ。
 荒れるなと言う方が無理ではないか。

 と、ここまで悪態をつけば頭も冷えてくる。
 今は時間だけは腐るほどあるのだ。
 時間が有限などという人間の価値観で今の我が輩が語れると思うな、と自問自答を繰り返すに至り、ようやく頭が冷えた。
 なぜなら、我が輩は石である。
 どこまでいっても、タダの石である。
 何故か思考を繰り返してしまうだけの、無価値な石である。

 そう、価値などあろうはずが無いのだ。
 器としての価値など、無いに等しい。
 いっそ、魔法の一部になって砕け散れば、価値でもあっただろうに。

 さて、せっかく思い至ったのだ。
 我が輩の提唱する「万物魂存在論」に基づいて、少し魔法についても考察をしてみようか。

 まず生前、我が輩の世界では魔法は存在しなかった。
 にもかかわらず、魔法の存在は認識されていた。ゲームしかり、ファンタジー世界しかり、神話の世界も昔話のネタも、しかりである。
 有りもしないものが、ここまで常識的に扱われたのは何故なのか?
 少なからず、魔法という存在は、人類と共にあった。
 近代になってから、唐突に魔法という存在は否定された。
 つまり、科学によって否定されたのだ。

 それはひとえに、魔法に近しい能力は、現象として目に見えなかったことが原因では無いだろうか。

 魂という不可視のエネルギーは存在する。
 これはもう、我が輩が存在してしまったので、認めて貰いたい。
 同時に、魂を基準にした活動も存在する。
 これも我が輩が活動してしまっているので、存在すると認めて頂きたい。
 この定義の元、魂とは肉体という器を動かす根幹のエネルギーであると仮定している。
 この魂は、現時点の我が輩が活動をしているのと同様に、魂単独で活動が可能である。
 つまり、生前も肉体という器を超えて、魂の活動を行うことが出来た人が、魔法のような事を出来たのでは無いか?
 歴史の偉人伝説に魔法のような事を起こした伝承は多々存在する。
 つまり、この偉人達の中には、間違いなく魔法を行使していた存在もあったのではないだろうか。

 さて、生前の話を元にするなら、異世界でも魔法という存在は、より身近になっている。
 これは、魂の活動が、何らかの理由によって、外に出やすい事が一因であると考えられないだろうか?
 我が輩の生前の世界より、人間の肉体という器が、より魂のエネルギーを行使しやすい環境である。
 即ち、創造神が作り出した肉体自体が、魂のエネルギーを行使しやすい器なのではないか?
 この仮定であれば、人間以外の存在も、等しく魔法が使える事が説明が付く。
 つまり、異世界を生み出す創造神の器は、活動エネルギーとしての魂の依存度が強い、ということだ。

 では、翻って、物体に宿った我が輩の条件はどうであろうか?
 物質であっても、魂の器は同じ。
 つまり、自分の自我があり、思考をしている以上、魔法を行使できる可能席はあるわけだ。
 そう、使える可能性は高いのだ……。

 ……バルス!

 ……………我が輩は石である。名前など有るわけが無い。

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