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第二章 連邦首都アルステイラ
05話 人類の敵
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フィーラの魔術によって男が立っていた場所に風穴が開いた。圧縮された風によって修練場の壁面が円形に抉れたのだ。
しかし男はコレに巻き込まれることなく跳躍して回避。そしてそのまま虚空に身体を縫い付けた。当たり前のように空中浮遊してるぞコイツ。
「出会ってすぐ攻撃はないでしょ~。野蛮な娘は男ウケ悪いぜ――」
「黙れ魔族が!!」フィーラは男に吐き捨てる。
魔族!?こいつ魔族なの!?
魔族と言ったら2000年前に1度人類を滅ぼした最悪の種族じゃないか!
遥々海を渡ってカウディア半島に攻め込んできたその暴虐さは、さながら北アメリカの先住民族を虐殺したコロンブス一行の如き。
今の時代だとコイツらに関わってるだけで罵詈雑言を浴びせられて最終的に公開処刑だ。
紛うことなき人類共通の敵である。現代でも密かにカウディア半島に潜伏している、なんて話は聞いたことあったけど…まさかこんなにも早く遭遇するとは。
「へえ、分かるんだ」軽蔑のこもったニヤケ面で魔族の男は言った。
「舐めないで。道端のゴミと宝石を並べてどっちが高価か当てるなんて容易いことよ」
「…ソレってさ、俺たち魔族が宝石で」魔族は浮遊魔術を解いて直立のまま落下する。そして地面にスタッと降り立った瞬間姿を消した。
「お前ら人間がゴミってことであってるよね?」次に魔族の声が聞こえたのはフィーラの背後。コイツは一瞬のうちにフィーラの後ろに移動していたのだ。
「なっ!?」フィーラは不意を突かれて反応できない。魔族は何やらフィーラの顔に手をかざそうとしている。コレはヤバいだろ。魔族が使う魔術なんて絶対ロクなもんじゃない!
俺は誘導灯を振って<一時停止>を具現化させる。
体が固まった魔族は眼球だけをこちらに向けて
「ん、嬢ちゃん面白いもの持ってるね」と再びニヤケながら言った。
人類の敵と会話なんてする必要なし。俺は無視してそのまま3回誘導灯を振る。
<一方通行>+<最低速度制限・400㎞/h>+<最低重量制限・1t>
服の重さを1tにまで増加させ、時速400キロでコイツごと吹っ飛ばす!!
魔族は新幹線をも超える速度で吹き飛んで行き、修練場の壁を貫通して遥か彼方へ。
魔族の姿が見えなくなった瞬間、先ほどまで嗚咽していたローブの男が喋り始めた。
「ガハッ!!あ…は、話せる」
「アイツの魔術が解けたってことか?…それで、お前ら明らかあの魔族の男と関係あるだろ。全部話せ」
「そうだ!アイツだ!俺たちはあの男にアリアネの居場所を教えてもらったんだ!!まさか魔族だったなんて…」
あの魔族が俺の居場所を知っていた?なんで?ファンデンベルク家と魔族が繋がっているのだとしたら暗殺者なんかを雇う必要はないし…ということは魔族は完全な第三勢力ってこと?
訳の分からない状況に頭を悩ませていると、視界の端に信じられない光景が映る。
先ほど吹き飛ばしたはずの魔族の男が音もなく気配も発さず修練場の床をカツカツと歩いていた。
「今のは流石に効いたよ、嬢ちゃん」
嘘だろ!ピンピンしてる!1トンの服など意に介していない様子で壁の穴から再入場してきた魔族は依然余裕顔だ。
「うっ…!」フィーラが突然膝から崩れ落ちる。
「どうした!?」
「…呪詛魔術をかけられた、術式が練れない…!」フィーラは苦しそうに答えた。
呪詛魔術とはいわばデバフスキルみたいなもの。フィーラは魔術を使えなくなるデバフ魔術をかけられたのだ。
しかしどのタイミングで?呪詛魔術の発動には対象への接近からの魔力の流し込みが必要だ。しかもそこそこの量。
アイツにそんなことした素振りは……………いや、あったな。
俺がアイツを吹き飛ばす直前、フィーラに対して一瞬手をかざしていた。
でもそれは本当に一瞬だ。1秒も経っていない。
もし本当に、あの一瞬で『魔術の使用不可』などと言う効果のデバフをかけたのだとしたら、アイツは紛れもない化け物だ。いやまあ何となくわかってたことだけども…。
「まあ、コレが格の違いってやつよね。ゴミと宝石のさ」
「くっ…」フィーラは屈辱に顔をゆがませる。
フィーラの表情を見て満足げに笑みを浮かべた後、魔族は再び虚空へ身を浮かせた。
「まあ最初の一撃は驚いたよ」魔族は言った。「あの尻軽開闢神たちの中でも、特に浮気性な風神から周囲よりも多く寵愛を受けてるだけあるね。さすがさすが」
「…ッ!?どうしてそれを!」
「友達から聞いたんだよ。……エリヴェータって名前の魔族、覚えてるでしょ?」
「…は?」
エリヴェータ、と言う名を聞いた瞬間フィーラの目から光が消える。憎悪、憤懣、そういった言葉で収まりきらないほどの感情が溢れ出している。迸る魔力が、彼女の感情と呼応するように震える。
「アイツも趣味悪いよね~。幼女の前で実の家族を痛みつけた挙句に連れ去っちゃうんだからさ。まあ連れ去ったのはエリヴェータじゃなくて金で釣った人間なんだけ――」
刹那。怒りに満ちた表情のフィーラの拳が、魔族の顔面に炸裂した。
しかし男はコレに巻き込まれることなく跳躍して回避。そしてそのまま虚空に身体を縫い付けた。当たり前のように空中浮遊してるぞコイツ。
「出会ってすぐ攻撃はないでしょ~。野蛮な娘は男ウケ悪いぜ――」
「黙れ魔族が!!」フィーラは男に吐き捨てる。
魔族!?こいつ魔族なの!?
魔族と言ったら2000年前に1度人類を滅ぼした最悪の種族じゃないか!
遥々海を渡ってカウディア半島に攻め込んできたその暴虐さは、さながら北アメリカの先住民族を虐殺したコロンブス一行の如き。
今の時代だとコイツらに関わってるだけで罵詈雑言を浴びせられて最終的に公開処刑だ。
紛うことなき人類共通の敵である。現代でも密かにカウディア半島に潜伏している、なんて話は聞いたことあったけど…まさかこんなにも早く遭遇するとは。
「へえ、分かるんだ」軽蔑のこもったニヤケ面で魔族の男は言った。
「舐めないで。道端のゴミと宝石を並べてどっちが高価か当てるなんて容易いことよ」
「…ソレってさ、俺たち魔族が宝石で」魔族は浮遊魔術を解いて直立のまま落下する。そして地面にスタッと降り立った瞬間姿を消した。
「お前ら人間がゴミってことであってるよね?」次に魔族の声が聞こえたのはフィーラの背後。コイツは一瞬のうちにフィーラの後ろに移動していたのだ。
「なっ!?」フィーラは不意を突かれて反応できない。魔族は何やらフィーラの顔に手をかざそうとしている。コレはヤバいだろ。魔族が使う魔術なんて絶対ロクなもんじゃない!
俺は誘導灯を振って<一時停止>を具現化させる。
体が固まった魔族は眼球だけをこちらに向けて
「ん、嬢ちゃん面白いもの持ってるね」と再びニヤケながら言った。
人類の敵と会話なんてする必要なし。俺は無視してそのまま3回誘導灯を振る。
<一方通行>+<最低速度制限・400㎞/h>+<最低重量制限・1t>
服の重さを1tにまで増加させ、時速400キロでコイツごと吹っ飛ばす!!
魔族は新幹線をも超える速度で吹き飛んで行き、修練場の壁を貫通して遥か彼方へ。
魔族の姿が見えなくなった瞬間、先ほどまで嗚咽していたローブの男が喋り始めた。
「ガハッ!!あ…は、話せる」
「アイツの魔術が解けたってことか?…それで、お前ら明らかあの魔族の男と関係あるだろ。全部話せ」
「そうだ!アイツだ!俺たちはあの男にアリアネの居場所を教えてもらったんだ!!まさか魔族だったなんて…」
あの魔族が俺の居場所を知っていた?なんで?ファンデンベルク家と魔族が繋がっているのだとしたら暗殺者なんかを雇う必要はないし…ということは魔族は完全な第三勢力ってこと?
訳の分からない状況に頭を悩ませていると、視界の端に信じられない光景が映る。
先ほど吹き飛ばしたはずの魔族の男が音もなく気配も発さず修練場の床をカツカツと歩いていた。
「今のは流石に効いたよ、嬢ちゃん」
嘘だろ!ピンピンしてる!1トンの服など意に介していない様子で壁の穴から再入場してきた魔族は依然余裕顔だ。
「うっ…!」フィーラが突然膝から崩れ落ちる。
「どうした!?」
「…呪詛魔術をかけられた、術式が練れない…!」フィーラは苦しそうに答えた。
呪詛魔術とはいわばデバフスキルみたいなもの。フィーラは魔術を使えなくなるデバフ魔術をかけられたのだ。
しかしどのタイミングで?呪詛魔術の発動には対象への接近からの魔力の流し込みが必要だ。しかもそこそこの量。
アイツにそんなことした素振りは……………いや、あったな。
俺がアイツを吹き飛ばす直前、フィーラに対して一瞬手をかざしていた。
でもそれは本当に一瞬だ。1秒も経っていない。
もし本当に、あの一瞬で『魔術の使用不可』などと言う効果のデバフをかけたのだとしたら、アイツは紛れもない化け物だ。いやまあ何となくわかってたことだけども…。
「まあ、コレが格の違いってやつよね。ゴミと宝石のさ」
「くっ…」フィーラは屈辱に顔をゆがませる。
フィーラの表情を見て満足げに笑みを浮かべた後、魔族は再び虚空へ身を浮かせた。
「まあ最初の一撃は驚いたよ」魔族は言った。「あの尻軽開闢神たちの中でも、特に浮気性な風神から周囲よりも多く寵愛を受けてるだけあるね。さすがさすが」
「…ッ!?どうしてそれを!」
「友達から聞いたんだよ。……エリヴェータって名前の魔族、覚えてるでしょ?」
「…は?」
エリヴェータ、と言う名を聞いた瞬間フィーラの目から光が消える。憎悪、憤懣、そういった言葉で収まりきらないほどの感情が溢れ出している。迸る魔力が、彼女の感情と呼応するように震える。
「アイツも趣味悪いよね~。幼女の前で実の家族を痛みつけた挙句に連れ去っちゃうんだからさ。まあ連れ去ったのはエリヴェータじゃなくて金で釣った人間なんだけ――」
刹那。怒りに満ちた表情のフィーラの拳が、魔族の顔面に炸裂した。
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