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第一章 ラトネ大森林
04話 オッサン美少女、熊に襲われる
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今まで有能だった能力が急にポンコツになってしまった。いや、さっきまでたまたま調子よかっただけでコレが本来の実力なのだろうか。
クマより恐ろしい化け物が目の前にいるのにも関わらず、馬鹿でかい〈クマ出没注意〉の印が浮かんでいる滑稽な状況。あっけにとられる俺を無視して、怪物が躊躇なく腕を振り上げる。
俺の自信なさげな誘導灯の振り上げとは違い、今までコレによって幾万の獲物を仕留めてきたんだと言いたげな、そんな自信があふれる構えだ。
生物としての格の違いを見せつけられたような気がした俺は、情けない悲鳴を上げながら後ろに走り出した。その悲鳴が女性の声だったため謎の罪悪感が湧く。
そんな下らない感情を抱いた瞬間に背中のほうから木々の倒れる音がした。ヤツの爪に切り裂かれたのだろう。木を一発で持っていく獣に対抗する気力など全く湧かないので、俺はもう一度誘導灯を振るという選択肢を消し走ることに集中する。しかし、前方に気配を感じて俺は思わず立ち止まった。
まさか、挟まれているとは…。
俺が逃げ出した方向には、先に現れたソレよりも明らかに巨大な、同じくクマのような怪物が仁王立ちしていた。全身に備えたギザギザとした強靭そうな赤色の外骨格。鉄の棒が螺旋状に巻き付いたかのような剛腕。先端が手前に突き出した逆L字の角が生えた修羅の如き顔。そしてその全てを支える屈強な脚。
俺にできるのはどちらに殺されるかを選ぶことくらいだろうか。緑のほうは上手く首をちょん切ってもらえば苦しまずに死ねそうだ。赤いのは明らかに力で叩き潰すタイプ。こちらも一発でミンチにでもしてくれれば痛みを感じることはないだろう。
転生したと思えば家を追い出され、その先で獣に殺される結果になるとは露程にも思わなかった。精神は何処かに行ったとはいえ、勝手に乗り移られて勝手に体を滅茶苦茶にされることになったアリアネには、かなり申し訳ないことをしてしまった気がする。
生存をあきらめ立ち止まっている俺に対して、2体の獣はそれぞれ腕を振り上げた。俺から近づいていたこともあって、赤い奴のほうが僅かに早いだろうか。
なるほど、俺の結末はミンチね…。
抵抗することなくその結末を受け入れることを決める。そして俺を叩き潰すために振り上げたと思われたその赤い剛腕は
―――もう一方の獣の顔面に炸裂した。
顔に殴打を喰らった緑の熊は一度地面に叩きつけられた後に大きくバウンドし、そのまま後方に吹っ飛んで行った。
目の前で起きたことに理解が追い付かない。
それは殴られた本人も同じようで、そいつは起き上がったあと暫く呆然と突っ立っていた。
数秒後自らに起きたことを認識したのか、顔に明らかな怒りを浮かべた後、上を向き咆哮を上げる。その瞬間、俺の身体に今まで体験したことがない内側から痺れるような衝撃が走った。咆哮の振動によるものとはまた違う未知の感覚に思わず膝をつく。
そして自らの咆哮と呼応するように、そいつの掌から生えた黒い爪が突如3倍近くまで伸びた後に一体化し、一本の長い爪となった。黒い剣を両手に携えたような見た目になった獣が、己を吹き飛ばしたもう一方に飛びかかる。
もはや俺のことなど忘れているであろうそいつは一瞬で相手の懐に入ると、獣とは思えないほど軽やかに身をねじりプロペラのように高速回転する。
それよりも一瞬早く赤いのは宙に身を浮かせ、唯一無防備になっている回転の中心、つまりは頭部に目掛けて殴打をくりだす。
しかしそれを読んで誘っていたのだろうか、緑のヤツは殴打を受ける直前に回転軸の角度を急激に傾けてそれを躱すと両腕を地面につけ、回転の勢いそのままに強烈な卍蹴りをお見舞いした。
赤いのはなんとか蹴りを腕でガードしたものの、地面に叩きつけられる。
追い打ちを加えようと駆け出す緑のヤツに対して赤いのは正面を向き、螺旋状に形成されたその腕を前方に突き出す。するとその腕の螺旋が解けるように広がり始め、解ける前は隠れていた側面から機関銃のように光弾が連射された。
それを何発か受けながらも、ほとんどを剣で受け流した緑のヤツは赤いのの頭上にまで跳躍する。
それと同時に両掌を合わせ、2本あった剣を巨大な1本の大剣に変貌させた。落下のエネルギーと共に振り下ろされた斬撃が赤いのを二つに切り裂かんとした、その時であった。
――青天の霹靂とはまさにこのことを言うのだろう。
宙に浮いた緑のクマに向かって一本の木が飛んできた。
いや、木じゃない。大木だ。しかもただの大木じゃない。しわがれた顔が幹についた、大木の化け物である。
由緒ある寺仏閣によく生えているような、背が高い樹齢うん百年の巨木ほどの大きさを持った怪物が直撃したことにより、緑のクマは派手に吹き飛ばされた。
そして俺を守ってくれた赤い熊も、飛んでったソイツを追って森の奥へ行ってしまった。
…何なんだ、この連続の衝撃展開。
木の怪物が地面へ落下した時に巻き起こった土ぼこりを浴びながら、俺は立ち尽くすのみ。
大熊獣バトルの突然の打ち切りに呆然としていると、怪物が飛んできた方向から何やら男女の会話が聞こえてきた。
クマより恐ろしい化け物が目の前にいるのにも関わらず、馬鹿でかい〈クマ出没注意〉の印が浮かんでいる滑稽な状況。あっけにとられる俺を無視して、怪物が躊躇なく腕を振り上げる。
俺の自信なさげな誘導灯の振り上げとは違い、今までコレによって幾万の獲物を仕留めてきたんだと言いたげな、そんな自信があふれる構えだ。
生物としての格の違いを見せつけられたような気がした俺は、情けない悲鳴を上げながら後ろに走り出した。その悲鳴が女性の声だったため謎の罪悪感が湧く。
そんな下らない感情を抱いた瞬間に背中のほうから木々の倒れる音がした。ヤツの爪に切り裂かれたのだろう。木を一発で持っていく獣に対抗する気力など全く湧かないので、俺はもう一度誘導灯を振るという選択肢を消し走ることに集中する。しかし、前方に気配を感じて俺は思わず立ち止まった。
まさか、挟まれているとは…。
俺が逃げ出した方向には、先に現れたソレよりも明らかに巨大な、同じくクマのような怪物が仁王立ちしていた。全身に備えたギザギザとした強靭そうな赤色の外骨格。鉄の棒が螺旋状に巻き付いたかのような剛腕。先端が手前に突き出した逆L字の角が生えた修羅の如き顔。そしてその全てを支える屈強な脚。
俺にできるのはどちらに殺されるかを選ぶことくらいだろうか。緑のほうは上手く首をちょん切ってもらえば苦しまずに死ねそうだ。赤いのは明らかに力で叩き潰すタイプ。こちらも一発でミンチにでもしてくれれば痛みを感じることはないだろう。
転生したと思えば家を追い出され、その先で獣に殺される結果になるとは露程にも思わなかった。精神は何処かに行ったとはいえ、勝手に乗り移られて勝手に体を滅茶苦茶にされることになったアリアネには、かなり申し訳ないことをしてしまった気がする。
生存をあきらめ立ち止まっている俺に対して、2体の獣はそれぞれ腕を振り上げた。俺から近づいていたこともあって、赤い奴のほうが僅かに早いだろうか。
なるほど、俺の結末はミンチね…。
抵抗することなくその結末を受け入れることを決める。そして俺を叩き潰すために振り上げたと思われたその赤い剛腕は
―――もう一方の獣の顔面に炸裂した。
顔に殴打を喰らった緑の熊は一度地面に叩きつけられた後に大きくバウンドし、そのまま後方に吹っ飛んで行った。
目の前で起きたことに理解が追い付かない。
それは殴られた本人も同じようで、そいつは起き上がったあと暫く呆然と突っ立っていた。
数秒後自らに起きたことを認識したのか、顔に明らかな怒りを浮かべた後、上を向き咆哮を上げる。その瞬間、俺の身体に今まで体験したことがない内側から痺れるような衝撃が走った。咆哮の振動によるものとはまた違う未知の感覚に思わず膝をつく。
そして自らの咆哮と呼応するように、そいつの掌から生えた黒い爪が突如3倍近くまで伸びた後に一体化し、一本の長い爪となった。黒い剣を両手に携えたような見た目になった獣が、己を吹き飛ばしたもう一方に飛びかかる。
もはや俺のことなど忘れているであろうそいつは一瞬で相手の懐に入ると、獣とは思えないほど軽やかに身をねじりプロペラのように高速回転する。
それよりも一瞬早く赤いのは宙に身を浮かせ、唯一無防備になっている回転の中心、つまりは頭部に目掛けて殴打をくりだす。
しかしそれを読んで誘っていたのだろうか、緑のヤツは殴打を受ける直前に回転軸の角度を急激に傾けてそれを躱すと両腕を地面につけ、回転の勢いそのままに強烈な卍蹴りをお見舞いした。
赤いのはなんとか蹴りを腕でガードしたものの、地面に叩きつけられる。
追い打ちを加えようと駆け出す緑のヤツに対して赤いのは正面を向き、螺旋状に形成されたその腕を前方に突き出す。するとその腕の螺旋が解けるように広がり始め、解ける前は隠れていた側面から機関銃のように光弾が連射された。
それを何発か受けながらも、ほとんどを剣で受け流した緑のヤツは赤いのの頭上にまで跳躍する。
それと同時に両掌を合わせ、2本あった剣を巨大な1本の大剣に変貌させた。落下のエネルギーと共に振り下ろされた斬撃が赤いのを二つに切り裂かんとした、その時であった。
――青天の霹靂とはまさにこのことを言うのだろう。
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そして俺を守ってくれた赤い熊も、飛んでったソイツを追って森の奥へ行ってしまった。
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