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序章
01話 36歳フリーター、突然の転生
しおりを挟む人生の終わりとはこうも簡単に訪れるものなのか。後方から自動車に追突され派手に吹き飛びながら、そんなことを考える。
死の直前は時間の流れる速度が遅くなるらしい、という何処で聞いたかもわからない噂が真実であることを身をもって感じながら、俺は自身の人生について思案を巡らせることにした。
しがない夜間交通警備員(36)。俺を形容するにはこの言葉だけで十分である。人並みの家庭に生を受け、人並みに友達を作り、人並みに進学した幼少期から青年期。ここまでは良かった。しかし大学で遊び惚けたことと、就活の時期に発生した大不況のダブルパンチにより定職にありつけず、あえなくフリーターとしての生活を余儀なくされた結果が、今の俺だ。
とは言え、そこまで人生に悔いはない。親に孫の顔を見せるという子の使命は弟が果たしてくれたし、空いた時間では大いに趣味に興じることができた。死因があっけなかったとはいえ、及第点の人生ではないだろうか。
そんなことを考えていると徐々に視界がぼやけていく。薄れゆく意識の中、最後に俺の目に映っていたのは衝撃により俺の右手から離れた誘導灯だった。
――突然、視界が明転する。
気がつくと俺は豪華絢爛な西洋風の大部屋の中心で跪いていた。
突如起こった摩訶不思議な出来事に、思考が固まる。ただ、この状況に対する答えを俺が導き出すのには大して時間はかからなかった。
ああ、これあれだ。
転生だ。
先ほどそこまで人生に悔いはないと言ったが、アレは半分嘘だ。
大学を卒業したのにも関わらずフリーターになった時点で満足している訳がない。
親同士がずっと仲が良くて、兄弟も良い奴らで、友達にも恵まれて、習い事もそこそこやって、毎日温かいご飯が食べられて、大学に行きたいという頼みに1つ返事で了承してくれて……。
特に裕福という訳ではない"ごく普通"の生活であったが、現代日本においてこのような"ごく普通"の生活を送れている人間は、間違いなく"恵まれた"部類に入るだろう。
そのことに当時から気づいていれば良かったのだが、遅かった。
就活期間中、最後の"お祈りメール"が届いたあの瞬間に気づくのでは余りにも遅すぎた。
つまり俺は"普通"の生活を送れているという人生におけるアドバンテージを、親から貰った恵まれた環境をすべて無碍にしたのだ。
絶対にもっと上手くやれたはず。
フリーターとしてアルバイトを転々としている中、どれほどそう後悔したことか。
きっとそんな哀れな俺の魂を神様が見つけ出して、第二の人生を歩ませてくれたに違いない。
折角頂いた二度目のチャンス。コレすらも無駄にするわけにはいかないな。
生前のうだつの上がらない生き方とはおさらばして、常に全力で生きていこう。
そして最高の転生ライフを満喫するんだ!
そんな決意を固めたさなか、目の前の椅子に座る銀髪のイケオジが口を開く。
「アリアネ!貴様は由緒あるファンデンベルク家の威信を大きく傷つけた!今すぐこの家を去れ!」
………もしかして、これ俺に言ってる?
死の直前は時間の流れる速度が遅くなるらしい、という何処で聞いたかもわからない噂が真実であることを身をもって感じながら、俺は自身の人生について思案を巡らせることにした。
しがない夜間交通警備員(36)。俺を形容するにはこの言葉だけで十分である。人並みの家庭に生を受け、人並みに友達を作り、人並みに進学した幼少期から青年期。ここまでは良かった。しかし大学で遊び惚けたことと、就活の時期に発生した大不況のダブルパンチにより定職にありつけず、あえなくフリーターとしての生活を余儀なくされた結果が、今の俺だ。
とは言え、そこまで人生に悔いはない。親に孫の顔を見せるという子の使命は弟が果たしてくれたし、空いた時間では大いに趣味に興じることができた。死因があっけなかったとはいえ、及第点の人生ではないだろうか。
そんなことを考えていると徐々に視界がぼやけていく。薄れゆく意識の中、最後に俺の目に映っていたのは衝撃により俺の右手から離れた誘導灯だった。
――突然、視界が明転する。
気がつくと俺は豪華絢爛な西洋風の大部屋の中心で跪いていた。
突如起こった摩訶不思議な出来事に、思考が固まる。ただ、この状況に対する答えを俺が導き出すのには大して時間はかからなかった。
ああ、これあれだ。
転生だ。
先ほどそこまで人生に悔いはないと言ったが、アレは半分嘘だ。
大学を卒業したのにも関わらずフリーターになった時点で満足している訳がない。
親同士がずっと仲が良くて、兄弟も良い奴らで、友達にも恵まれて、習い事もそこそこやって、毎日温かいご飯が食べられて、大学に行きたいという頼みに1つ返事で了承してくれて……。
特に裕福という訳ではない"ごく普通"の生活であったが、現代日本においてこのような"ごく普通"の生活を送れている人間は、間違いなく"恵まれた"部類に入るだろう。
そのことに当時から気づいていれば良かったのだが、遅かった。
就活期間中、最後の"お祈りメール"が届いたあの瞬間に気づくのでは余りにも遅すぎた。
つまり俺は"普通"の生活を送れているという人生におけるアドバンテージを、親から貰った恵まれた環境をすべて無碍にしたのだ。
絶対にもっと上手くやれたはず。
フリーターとしてアルバイトを転々としている中、どれほどそう後悔したことか。
きっとそんな哀れな俺の魂を神様が見つけ出して、第二の人生を歩ませてくれたに違いない。
折角頂いた二度目のチャンス。コレすらも無駄にするわけにはいかないな。
生前のうだつの上がらない生き方とはおさらばして、常に全力で生きていこう。
そして最高の転生ライフを満喫するんだ!
そんな決意を固めたさなか、目の前の椅子に座る銀髪のイケオジが口を開く。
「アリアネ!貴様は由緒あるファンデンベルク家の威信を大きく傷つけた!今すぐこの家を去れ!」
………もしかして、これ俺に言ってる?
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