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騎士
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木々を抜けた先にいた女性(夕音)は、鋭い目つきで姫を睨みつけます。その視線に射抜かれたかのように、姫の脈は早くなっていきます。ドキドキして、女性から目を離せない。人を惹きつけるような女性でした。
「お前、森の住人か?森を出るなんて、何の用だ」
凛とした声に、ぼーっとしてしまう姫。はっと我に返って、慌てて言葉を紡ぎます。
「私は王子様に会いたいの」
そう言って理由を説明しようとすると、女性は突然斬りかかってきました。先ほどよりも厳しい表情で、剣を構えます。
咄嗟のことで、声も出ませんでした。
「お前のような者に…王子は…」
掠れるような小さな声で、そう呟く女性。姫は混乱する頭を必死に巡らせて、生きる選択肢を探します。
騎士は素早く、足も速い。ここから走って逃げるには、私が不利だわ。一体、どうすれば良いのでしょう。
そう考えたとき、姫は滑って転んでしまいました。背中に当たる固い感触は木。森の木に阻まれて、身動きも取りづらくなってしまいました。
絶体絶命。そう考えたとき、姫の瞳が女性の足首を捉えました。
そこには、解けかけた包帯。
「待って!!」
姫の叫ぶような大きな声。女性は突然のことで驚いたのか、一瞬動きが止まりました。
「貴方の包帯、解けかけているわ。直させて」
「…いい、いらぬ」
「駄目よ、貴方は私の敵じゃないわ。巻き直している間に、貴方が私に斬りかかってきた理由を教えてくれる?それによっては、私は王子様には会わないわ」
「…お前、本当に森の住人じゃないのか?」
「森の住人ではないわ。ここの世界の住民でもない。木陰で眠っていたら迷い込んでしまったみたいなの。…私は元の世界に帰りたいの」
まっすぐ、女性のオレンジがかった瞳を見つめる姫。やがて女性は目を伏せて、包帯が巻きやすいように目の前に座りました。
「私では包帯は直せない…頼む」
顔を伏せたまま、女性はそう呟きました。姫は心が通じたのが嬉しくて、慣れた手つきで包帯を解き、巻き直し始めました。
「…昔、森の住人が王子を暗殺したことがあった。私はまだ幼く、何度も悪夢にうなされた。それから私の一族は森の出入り口を監視する一族となったのだ」
苦しそうに、話しだす女性。
「私はここにいるとあの悪夢を思い出す。もう繰り返させない。だから少々過敏になっていた。すまない」
女性は頭を下げ、また顔を伏せます。包帯を巻き終えた姫は、そっと女性の頭を撫でました。女性が少し顔を上げるのが分かりました。
「大丈夫よ。そんなことがあったんだもの、森の住人に過敏になっても仕方ないわ」
「…お前、名は?」
「ルスよ。貴方は?」
「私は騎士だ。名は、ずっと昔に忘れた」
騎士はそう言って立ち上がりました。
「礼と詫びの意味を込めて、お前が城に行くのを手伝おう。そろそろ交代の時間だったしな」
姫の手を引いて、騎士は姫が立ち上がるのを手伝いました。姫は一瞬、騎士が微笑んだのを見ました。
「お前、森の住人か?森を出るなんて、何の用だ」
凛とした声に、ぼーっとしてしまう姫。はっと我に返って、慌てて言葉を紡ぎます。
「私は王子様に会いたいの」
そう言って理由を説明しようとすると、女性は突然斬りかかってきました。先ほどよりも厳しい表情で、剣を構えます。
咄嗟のことで、声も出ませんでした。
「お前のような者に…王子は…」
掠れるような小さな声で、そう呟く女性。姫は混乱する頭を必死に巡らせて、生きる選択肢を探します。
騎士は素早く、足も速い。ここから走って逃げるには、私が不利だわ。一体、どうすれば良いのでしょう。
そう考えたとき、姫は滑って転んでしまいました。背中に当たる固い感触は木。森の木に阻まれて、身動きも取りづらくなってしまいました。
絶体絶命。そう考えたとき、姫の瞳が女性の足首を捉えました。
そこには、解けかけた包帯。
「待って!!」
姫の叫ぶような大きな声。女性は突然のことで驚いたのか、一瞬動きが止まりました。
「貴方の包帯、解けかけているわ。直させて」
「…いい、いらぬ」
「駄目よ、貴方は私の敵じゃないわ。巻き直している間に、貴方が私に斬りかかってきた理由を教えてくれる?それによっては、私は王子様には会わないわ」
「…お前、本当に森の住人じゃないのか?」
「森の住人ではないわ。ここの世界の住民でもない。木陰で眠っていたら迷い込んでしまったみたいなの。…私は元の世界に帰りたいの」
まっすぐ、女性のオレンジがかった瞳を見つめる姫。やがて女性は目を伏せて、包帯が巻きやすいように目の前に座りました。
「私では包帯は直せない…頼む」
顔を伏せたまま、女性はそう呟きました。姫は心が通じたのが嬉しくて、慣れた手つきで包帯を解き、巻き直し始めました。
「…昔、森の住人が王子を暗殺したことがあった。私はまだ幼く、何度も悪夢にうなされた。それから私の一族は森の出入り口を監視する一族となったのだ」
苦しそうに、話しだす女性。
「私はここにいるとあの悪夢を思い出す。もう繰り返させない。だから少々過敏になっていた。すまない」
女性は頭を下げ、また顔を伏せます。包帯を巻き終えた姫は、そっと女性の頭を撫でました。女性が少し顔を上げるのが分かりました。
「大丈夫よ。そんなことがあったんだもの、森の住人に過敏になっても仕方ないわ」
「…お前、名は?」
「ルスよ。貴方は?」
「私は騎士だ。名は、ずっと昔に忘れた」
騎士はそう言って立ち上がりました。
「礼と詫びの意味を込めて、お前が城に行くのを手伝おう。そろそろ交代の時間だったしな」
姫の手を引いて、騎士は姫が立ち上がるのを手伝いました。姫は一瞬、騎士が微笑んだのを見ました。
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