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3月23日 公演会のチラシ
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今日は終業式。あれから稲荷様と会うために羅樹や虹様と作戦を考えた。その気になれば虹様が繋いでくれるかもしれないが、同等の神力を持つ稲荷様ならその境界を脱出・回避出来る可能性があること、強制的に力を奪われる可能性があることなど、不確定要素が多い。会うならば、稲荷様がきちんと私との再会を受け入れなければ難しいという。それが出来たら苦労しない、と思いつつ、私は怒りを原動力に今日も神社に寄って登校して来た。高校に入学してから毎日、稲荷様と出会うまでずっと行って来た習慣。いつの間にか繋がりに甘えてやらなくなった習慣だったけれど、これこそが私たちに必要だったのかもしれないと思い始めた。毎日話して、毎日意見を交わしていたらこんな別れにならなかったかもしれないと感じたから。それでも私は一方的な別れを切り出した稲荷様を許すつもりはないし、そんな行動を取らせた自分を許すつもりもない。虹様に確認したところやはり恋音さんも私の中にいないようで、今は稲荷様のところに戻っているらしい。虹様は時間感覚がヒト寄りではないため大雑把にしか覚えていないので、具体的な日付は分からないが恐らく私の力が抜かれたあの日からもういなかったのだろう。恋音さんに神力を渡している私の力がなくなれば、恋音さんにどう影響するか分かったものじゃない。
そこまで、考慮出来る神様なのに。
どうして私のことは考えてくれなかったのかと、独りごちる。
そんな物思いに耽っている私の背が、唐突な衝撃を受けてばぁんっと音を立てた。
「あ!ごめん夕音!?そんな力を加えたつもりはなかったんだけど…!」
「あんたの馬鹿力で突進したらそうなるわ。大丈夫、夕音?」
咽せながら振り向くと、私の背を摩っている霙と由芽がいた。その手にはチラシらしきものを持っており、私は思わず凝視した。それに気付いた由芽が苦笑いで説明してくれる。
「明日、演劇部の公演があるの。これは朝のHRで配る用。前にも配ったけど、前日にも配らないと人は来ないって顧問が言っててね」
「そっか、明日なんだね」
「そうそう!夕音も来る?」
「うん、行こうかな」
「やったー!!私と由芽も出るから、宜しくね!」
2人の言う通り朝のHR中にそれは配られた。どうやら2人は主役級らしく、文化祭と同様かなり目立つ役どころらしい。内容は、と目を滑らせて驚く。ヒトならざるモノと少女の話のようだ。
モノと、少女。
心臓が逸る。私はぎゅっと制服の裾を握って、そして前を向いた。
本物じゃないことは分かっているけれど、よくある題材だと理解しているけれど、それでも期待せずにはいられなかった。
今の私と稲荷様の状態をどうにかするヒントが、得られるかもしれないと思ったから。
そこまで、考慮出来る神様なのに。
どうして私のことは考えてくれなかったのかと、独りごちる。
そんな物思いに耽っている私の背が、唐突な衝撃を受けてばぁんっと音を立てた。
「あ!ごめん夕音!?そんな力を加えたつもりはなかったんだけど…!」
「あんたの馬鹿力で突進したらそうなるわ。大丈夫、夕音?」
咽せながら振り向くと、私の背を摩っている霙と由芽がいた。その手にはチラシらしきものを持っており、私は思わず凝視した。それに気付いた由芽が苦笑いで説明してくれる。
「明日、演劇部の公演があるの。これは朝のHRで配る用。前にも配ったけど、前日にも配らないと人は来ないって顧問が言っててね」
「そっか、明日なんだね」
「そうそう!夕音も来る?」
「うん、行こうかな」
「やったー!!私と由芽も出るから、宜しくね!」
2人の言う通り朝のHR中にそれは配られた。どうやら2人は主役級らしく、文化祭と同様かなり目立つ役どころらしい。内容は、と目を滑らせて驚く。ヒトならざるモノと少女の話のようだ。
モノと、少女。
心臓が逸る。私はぎゅっと制服の裾を握って、そして前を向いた。
本物じゃないことは分かっているけれど、よくある題材だと理解しているけれど、それでも期待せずにはいられなかった。
今の私と稲荷様の状態をどうにかするヒントが、得られるかもしれないと思ったから。
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