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3月18日 回復中
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次に目が覚めたらもう日付が変わっていて、羅樹も側にいなかった。もう日も昇っている。お腹が空いていることに気付いて、怠い体を起こして1階に向かう。私の姿を見て驚いたらしいお母さんがすぐにスポーツドリンクを注いでくれて、とりあえず喉を潤した。
「…お腹、空いた…」
「そうよね。固形物でも食べられそう?それともお粥がいい?」
「お粥…」
「おっけー。ちょっと待っててね。あ、スポーツドリンクまだ飲む?」
優しい声にこくりと頷く。するとすぐにおかわりが注がれて、私はそれをごくごくとストローで飲みながら母の背を見つめる。私のお粥と共に朝ご飯も作っているようで、次第に美味しそうな香りが漂って来た。
「はい、出来た。熱いから気を付けて食べなさいね」
母の注告に頷いて、小鍋から少しだけ茶碗に移す。たらこ入りのお粥だ。出来立て熱々のそれを冷ましながら口の中に運ぶ。塩味の効いた米とたらこの味が、塩分の不足した私の体に染み渡るのが分かった。食べる毎にお腹が鳴って、胃に急かされているような気分になる。それもその筈、もう12時間以上も何も食べていない。いや、よく考えたら昨日食事をとった記憶がないので、もう1日以上ぶりの食事だ。そう考えると胃の訴えも納得のもので、私は私の体に申し訳ないなぁと思いながら咀嚼する。もぐもぐと口を動かしていると喉が渇いて来て、またスポーツドリンクを頼んだ。それを貰っても、飲んでも、今度は涙が出て来ない。枯れ果てたかと思えば、お粥の湯気に当てられて目は潤むのでそうではないらしい。
「美味しい?」
飲み物を持って来てくれたお母さんが、ぽつりと問い掛ける。私が無言で頷くと、「そう」と嬉しそうに笑ってまた調理に戻って行った。
風邪などといった体の不調が根本的な原因ではないこともあり、食欲は復活したらしい。昨日の分も埋めるようにご飯を食べ進め、いつの間にか用意された鍋の半分はなくなっていた。少量を茶腕に取っては無心に食べ続けていたせいだろう。お粥の水分もあり、スポーツドリンクを飲むペースは落ちたが、それでもそこそこ早い。
お腹がいっぱいになったのは、それから鍋全体の3分の1程食べ進めた頃だった。それを見たお母さんが鍋を片付けるのと同時に、タオルを差し出して来る。
「目に当てておきなさい」
受け取るとほかほかと温かかった。目に当てるとじんわりと熱が伝わって来る。しばらくして冷めたら次は冷たいタオルと交換され、今度はそれを目に当てることになった。繰り返しているといつの間にか目の腫れが引き、視界がはっきりしてくる。
少しずつ回復してることが、自分でも理解出来た。
「…お腹、空いた…」
「そうよね。固形物でも食べられそう?それともお粥がいい?」
「お粥…」
「おっけー。ちょっと待っててね。あ、スポーツドリンクまだ飲む?」
優しい声にこくりと頷く。するとすぐにおかわりが注がれて、私はそれをごくごくとストローで飲みながら母の背を見つめる。私のお粥と共に朝ご飯も作っているようで、次第に美味しそうな香りが漂って来た。
「はい、出来た。熱いから気を付けて食べなさいね」
母の注告に頷いて、小鍋から少しだけ茶碗に移す。たらこ入りのお粥だ。出来立て熱々のそれを冷ましながら口の中に運ぶ。塩味の効いた米とたらこの味が、塩分の不足した私の体に染み渡るのが分かった。食べる毎にお腹が鳴って、胃に急かされているような気分になる。それもその筈、もう12時間以上も何も食べていない。いや、よく考えたら昨日食事をとった記憶がないので、もう1日以上ぶりの食事だ。そう考えると胃の訴えも納得のもので、私は私の体に申し訳ないなぁと思いながら咀嚼する。もぐもぐと口を動かしていると喉が渇いて来て、またスポーツドリンクを頼んだ。それを貰っても、飲んでも、今度は涙が出て来ない。枯れ果てたかと思えば、お粥の湯気に当てられて目は潤むのでそうではないらしい。
「美味しい?」
飲み物を持って来てくれたお母さんが、ぽつりと問い掛ける。私が無言で頷くと、「そう」と嬉しそうに笑ってまた調理に戻って行った。
風邪などといった体の不調が根本的な原因ではないこともあり、食欲は復活したらしい。昨日の分も埋めるようにご飯を食べ進め、いつの間にか用意された鍋の半分はなくなっていた。少量を茶腕に取っては無心に食べ続けていたせいだろう。お粥の水分もあり、スポーツドリンクを飲むペースは落ちたが、それでもそこそこ早い。
お腹がいっぱいになったのは、それから鍋全体の3分の1程食べ進めた頃だった。それを見たお母さんが鍋を片付けるのと同時に、タオルを差し出して来る。
「目に当てておきなさい」
受け取るとほかほかと温かかった。目に当てるとじんわりと熱が伝わって来る。しばらくして冷めたら次は冷たいタオルと交換され、今度はそれを目に当てることになった。繰り返しているといつの間にか目の腫れが引き、視界がはっきりしてくる。
少しずつ回復してることが、自分でも理解出来た。
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