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sweet festival! 明(短編)
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放課後、桜に誘われるまま私は隣町のスイーツ街にやって来た。恋人同士というくすぐったい関係が、そわそわと気分を浮立たせる。周囲から注目されているような気がするが、浮かれてそう感じるだけだろう。自意識過剰だと首を横に振ると、手を繋いでいる桜が「どうしたんすか?」と問い掛けて来た。
「…なんか、見られてる気がして」
「えぇ!?誰っすか!?確かに明は可愛くて美人だから人目を引くってわかってるっすけど、今は隣にいる俺のことも視界に入れて欲しいっす!」
「や、ちが、多分、気のせい…」
「本当すか?うーん、何か変だったらすぐ報告、お願いっすよ!」
「…わかった」
桜の言葉には、なるべく言葉にして返したい。そう頑張っているのがバレているのかは分からないが、桜はにこにこと笑ったまま私の手を引いた。しばらく歩くと大きなドールハウスのような建物が見えて来た。桜はその建物を指して、楽しそうに笑う。
「あ、あれっす!ほら、行くっすよ!」
「う、うん」
手を引かれそのまま店に入ると、カランカランとベルが鳴る。いらっしゃいませ、という可愛らしい声と共に見えたのは、いくつかの大きなテーブルに所狭しと置かれたスイーツ、スイーツ、スイーツだった。
「2名様でよろしいでしょうか?」
「はい!90分食べ放題セットでお願いします!」
席に着く間もなく宣言した桜に、店員さんはぱちぱちと目を瞬く。苦笑いで席に案内してくれた後すぐ、食べ放題の説明を始めてくれた。そわそわしている私に、桜は先に取って来て良いと微笑んでくれる。開始と同時に桜に荷物を預け、私は一目散にスイーツの元へ向かった。ケーキ、焼き菓子、ジェラート、ゼリー。色とりどりのスイーツが私を誘うように甘い香りを漂わせ、光の下でキラキラと輝いている。それらを目についた端から皿に取って行き、大量に確保していく。とりあえず2皿分山盛りに取った後で、桜と交代する。甘い物が特段得意というわけではない桜は、端の方に用意された箸休め用の軽食を取り、すぐに戻って来た。短時間であったが、私の目の前の皿はもう既に空になっている。
「また取っておいで」
「ん!」
飲み込んでから席を立つ。また同じだけ山盛り取って来たら、「全種類制覇出来そうっすね」と桜が苦笑いを浮かべた。そのつもりだと頷けば、代わりに取ってくると席を立った。運動部の高校生男子と言われて納得がいく量が運ばれて来て、他の席からくすくすと笑い声が聞こえて来た。「多すぎ」だの「流石に無理でしょ」といった内容だ。見上げれば、皿を両手に持って褒められ待ちのわんちゃんのように笑う桜がいる。
「ありがとう」
受け取った私は、ぎこちないながらも他の席を挑発するように、微笑んだ。
「…なんか、見られてる気がして」
「えぇ!?誰っすか!?確かに明は可愛くて美人だから人目を引くってわかってるっすけど、今は隣にいる俺のことも視界に入れて欲しいっす!」
「や、ちが、多分、気のせい…」
「本当すか?うーん、何か変だったらすぐ報告、お願いっすよ!」
「…わかった」
桜の言葉には、なるべく言葉にして返したい。そう頑張っているのがバレているのかは分からないが、桜はにこにこと笑ったまま私の手を引いた。しばらく歩くと大きなドールハウスのような建物が見えて来た。桜はその建物を指して、楽しそうに笑う。
「あ、あれっす!ほら、行くっすよ!」
「う、うん」
手を引かれそのまま店に入ると、カランカランとベルが鳴る。いらっしゃいませ、という可愛らしい声と共に見えたのは、いくつかの大きなテーブルに所狭しと置かれたスイーツ、スイーツ、スイーツだった。
「2名様でよろしいでしょうか?」
「はい!90分食べ放題セットでお願いします!」
席に着く間もなく宣言した桜に、店員さんはぱちぱちと目を瞬く。苦笑いで席に案内してくれた後すぐ、食べ放題の説明を始めてくれた。そわそわしている私に、桜は先に取って来て良いと微笑んでくれる。開始と同時に桜に荷物を預け、私は一目散にスイーツの元へ向かった。ケーキ、焼き菓子、ジェラート、ゼリー。色とりどりのスイーツが私を誘うように甘い香りを漂わせ、光の下でキラキラと輝いている。それらを目についた端から皿に取って行き、大量に確保していく。とりあえず2皿分山盛りに取った後で、桜と交代する。甘い物が特段得意というわけではない桜は、端の方に用意された箸休め用の軽食を取り、すぐに戻って来た。短時間であったが、私の目の前の皿はもう既に空になっている。
「また取っておいで」
「ん!」
飲み込んでから席を立つ。また同じだけ山盛り取って来たら、「全種類制覇出来そうっすね」と桜が苦笑いを浮かべた。そのつもりだと頷けば、代わりに取ってくると席を立った。運動部の高校生男子と言われて納得がいく量が運ばれて来て、他の席からくすくすと笑い声が聞こえて来た。「多すぎ」だの「流石に無理でしょ」といった内容だ。見上げれば、皿を両手に持って褒められ待ちのわんちゃんのように笑う桜がいる。
「ありがとう」
受け取った私は、ぎこちないながらも他の席を挑発するように、微笑んだ。
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