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帰り道
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「テストどうだった?」
「んー良い感じだった。数学両方1位取れたよ」
羅樹なら、と思って自慢げに言うと、羅樹は目を輝かせた。
「凄い!やっぱり夕音は頭良いね。僕は平均点ぐらいだったよ」
「ありがとう、それでも平均点なら大丈夫なんじゃない?」
「うん!あ、そうだ。僕も1位取ったんだよ!」
「え、凄い。何の教科で取ったの?」
「国語!」
耳を塞ぐ。私の1番の苦手科目だったからだ。
「ちょっと、なんで耳塞ぐの。僕も褒めてよ」
羅樹が私の腕を揺さぶってきたので、渋々耳から手を離し、おめでとう、と言う。羅樹はまだ物足りなさそうな顔をしていたので、
「今日はお父さん達いるの?なんか作ってあげようか」
「うん!ハンバーグ食べたい」
「はいはい」
ハンバーグで釣れる子供みたいな羅樹が、とても可愛くて愛おしい。それでも、こうやって帰れるのは幼馴染だからか。いっそ告白してしまえたら、と思うのにその言葉は出てこない。
もう少しだけ。
私のもう少しはもう4、5年くらいになるだろうか。関係を壊して、修復できないならば…なんて。梶栗くんに「壊しちゃえ」って言ったはずなのに、自分だと勇気が出ない意気地なし。私と違って勇気を出した梶栗くんは、本当に強くて偉いな。
「夕音?」
「あ、何?」
「うぅん。ぼーっとしてるから、どうしたのかと思って」
「あぁごめん。考え事してた」
「そっか。気を付けてね、電柱に当たりそ…」
ゴンッ。
鈍い音がして、同時に額に痛みが走る。額を押さえて痛みを堪えていると、羅樹が慌てて心配してくれた。
「いったぁ…っ」
「わ、大丈夫!?」
額をさすりながら目の前を見ると、そこには灰色の物体があった。どうやら、電柱にぶつかったらしい。
ぼーっと考え事をしていて、自分の情けなさを再認識したところでこんなドジをやらかすなんて。
「ついてないなぁ」
なんて、痛みを通り越して笑えてきた。私が苦笑いしたからか、羅樹は更に心配そうな様子だ。
「気を付けてね?」
「うん、そうね。羅樹のハンバーグ作れなくなっちゃうかもしれないしね」
「それは困る!!」
羅樹が大袈裟にリアクションをしたので、私はまた笑って、さぁ帰ろう、と手を差し出した。つい、昔の癖で。
あっ。
そう思った時には、羅樹は何も変わったことが無いかのように嬉しそうに手を取って笑った。
私の…馬鹿。
幸い家の周りには誰もいなかったけど、恥ずかしかったけど、昔みたいな関係が心地良くて幸せだった。
梶栗くんにあんなこと言った手前、私も行動を起こさないとな。
そんな事を考えて、ハンバーグ作りの準備を始めた。
「んー良い感じだった。数学両方1位取れたよ」
羅樹なら、と思って自慢げに言うと、羅樹は目を輝かせた。
「凄い!やっぱり夕音は頭良いね。僕は平均点ぐらいだったよ」
「ありがとう、それでも平均点なら大丈夫なんじゃない?」
「うん!あ、そうだ。僕も1位取ったんだよ!」
「え、凄い。何の教科で取ったの?」
「国語!」
耳を塞ぐ。私の1番の苦手科目だったからだ。
「ちょっと、なんで耳塞ぐの。僕も褒めてよ」
羅樹が私の腕を揺さぶってきたので、渋々耳から手を離し、おめでとう、と言う。羅樹はまだ物足りなさそうな顔をしていたので、
「今日はお父さん達いるの?なんか作ってあげようか」
「うん!ハンバーグ食べたい」
「はいはい」
ハンバーグで釣れる子供みたいな羅樹が、とても可愛くて愛おしい。それでも、こうやって帰れるのは幼馴染だからか。いっそ告白してしまえたら、と思うのにその言葉は出てこない。
もう少しだけ。
私のもう少しはもう4、5年くらいになるだろうか。関係を壊して、修復できないならば…なんて。梶栗くんに「壊しちゃえ」って言ったはずなのに、自分だと勇気が出ない意気地なし。私と違って勇気を出した梶栗くんは、本当に強くて偉いな。
「夕音?」
「あ、何?」
「うぅん。ぼーっとしてるから、どうしたのかと思って」
「あぁごめん。考え事してた」
「そっか。気を付けてね、電柱に当たりそ…」
ゴンッ。
鈍い音がして、同時に額に痛みが走る。額を押さえて痛みを堪えていると、羅樹が慌てて心配してくれた。
「いったぁ…っ」
「わ、大丈夫!?」
額をさすりながら目の前を見ると、そこには灰色の物体があった。どうやら、電柱にぶつかったらしい。
ぼーっと考え事をしていて、自分の情けなさを再認識したところでこんなドジをやらかすなんて。
「ついてないなぁ」
なんて、痛みを通り越して笑えてきた。私が苦笑いしたからか、羅樹は更に心配そうな様子だ。
「気を付けてね?」
「うん、そうね。羅樹のハンバーグ作れなくなっちゃうかもしれないしね」
「それは困る!!」
羅樹が大袈裟にリアクションをしたので、私はまた笑って、さぁ帰ろう、と手を差し出した。つい、昔の癖で。
あっ。
そう思った時には、羅樹は何も変わったことが無いかのように嬉しそうに手を取って笑った。
私の…馬鹿。
幸い家の周りには誰もいなかったけど、恥ずかしかったけど、昔みたいな関係が心地良くて幸せだった。
梶栗くんにあんなこと言った手前、私も行動を起こさないとな。
そんな事を考えて、ハンバーグ作りの準備を始めた。
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