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どう思っていたの
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その声が聞こえて来たのは、耳ではなく心を通してのようだった。私の奥底に響き渡るように悲痛な声が鳴り、景色までもが鮮明に映し出される。昨日思い出したばかりのその出来事は、羅樹の心を深く深く傷付けて、苦しめていたのだ。気付かなかった。気付いてはいなかった。そもそも思い出したのは昨日であるし、私自身向こう側と繋がれること自体忘れていた。閉じ込めるようにして、視界から疎外していた。だから私が向こう側と繋がることで羅樹が苦しむなんて、知る機会がなかった。
羅樹は、どう思ったのだろう。
あの時と同じように体調を崩しやすくなった私を見て、1週間も起きなかった私を見て、知らないところで力を使って倒れてばかりの私を見て、どう感じるのだろう。
逆だったなら、きっと怯える。
いつか知らないところで無茶をしてもう2度と会えないんじゃないかとか、話すことも、笑い合うことも、何もかも出来なくなるんじゃないかと怖くて堪らなくなる。幼少期だけなら、体が弱かったのだろうと無理やり納得して今の関係に安堵出来るが、それが再発したようにまた倒れ始めたら。あの時みたいに目の前で急にいなくなってしまうのではないか、手の届かない場所に消えてしまうんじゃないか、そんな不安に苛まれてしまうに決まっている。怖くて苦しくて、堪らなくなる。
それこそ過剰になる程に。恋人になることで繋ぎ止められるなら、それを選んでしまう程に。倒れる度に、何処か遠くを見ている姿を見る度に、今すぐ何処かへ消えてしまうのではないかと怖くて仕方なくなるほどに、心配で堪らなくなる。
私はそんな思いを、羅樹にさせ続けていたのか。
羅樹から離れたこともある。羅樹との関係を冷やかされるのが嫌で、羅樹のことを好きな女の子に目の敵にされるのが面倒で、羅樹との距離を置いた。それでも羅樹は、怒ることも悲しむこともせず"いつも通り"にしてくれた。
隣に居なくても、私が笑顔で居たから。
「…そんな、そんなこと……っ………て……」
私が"恋使"として過ごしている間、羅樹はどれだけ心配したのだろう。何度も何度もあちらの世に渡って、力を駆使して体調を崩していた。一体どれだけ、大好きで大切な人を傷付けて来たのだろう。分からない。分からない程に長い間、ずっと傍に居続けてくれた羅樹のことを傷付け続けていた。向かい合うこともせず、後ろから見守ってくれる羅樹に安心していた。向かい合ったら、私が異常であることがバレてしまうから。無意識に避けて、無意識に羅樹を苦しめて。私って何て馬鹿なんだろう。1番大切な人を、ずっとずっと怖がらせていた。羅樹の声に、耳を傾けて来なかった。
馬鹿だ。
本当に、大馬鹿だ。
後悔に酷く押し潰されながら、私は頬に伝う冷たい感触に心が引き裂かれそうになった。
羅樹は、どう思ったのだろう。
あの時と同じように体調を崩しやすくなった私を見て、1週間も起きなかった私を見て、知らないところで力を使って倒れてばかりの私を見て、どう感じるのだろう。
逆だったなら、きっと怯える。
いつか知らないところで無茶をしてもう2度と会えないんじゃないかとか、話すことも、笑い合うことも、何もかも出来なくなるんじゃないかと怖くて堪らなくなる。幼少期だけなら、体が弱かったのだろうと無理やり納得して今の関係に安堵出来るが、それが再発したようにまた倒れ始めたら。あの時みたいに目の前で急にいなくなってしまうのではないか、手の届かない場所に消えてしまうんじゃないか、そんな不安に苛まれてしまうに決まっている。怖くて苦しくて、堪らなくなる。
それこそ過剰になる程に。恋人になることで繋ぎ止められるなら、それを選んでしまう程に。倒れる度に、何処か遠くを見ている姿を見る度に、今すぐ何処かへ消えてしまうのではないかと怖くて仕方なくなるほどに、心配で堪らなくなる。
私はそんな思いを、羅樹にさせ続けていたのか。
羅樹から離れたこともある。羅樹との関係を冷やかされるのが嫌で、羅樹のことを好きな女の子に目の敵にされるのが面倒で、羅樹との距離を置いた。それでも羅樹は、怒ることも悲しむこともせず"いつも通り"にしてくれた。
隣に居なくても、私が笑顔で居たから。
「…そんな、そんなこと……っ………て……」
私が"恋使"として過ごしている間、羅樹はどれだけ心配したのだろう。何度も何度もあちらの世に渡って、力を駆使して体調を崩していた。一体どれだけ、大好きで大切な人を傷付けて来たのだろう。分からない。分からない程に長い間、ずっと傍に居続けてくれた羅樹のことを傷付け続けていた。向かい合うこともせず、後ろから見守ってくれる羅樹に安心していた。向かい合ったら、私が異常であることがバレてしまうから。無意識に避けて、無意識に羅樹を苦しめて。私って何て馬鹿なんだろう。1番大切な人を、ずっとずっと怖がらせていた。羅樹の声に、耳を傾けて来なかった。
馬鹿だ。
本当に、大馬鹿だ。
後悔に酷く押し潰されながら、私は頬に伝う冷たい感触に心が引き裂かれそうになった。
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