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4月9日 屋上前
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今日は、春休み明けすぐなので委員などを決めた。学級委員は一年生の時もやっていた小野くんと由芽さん、環境美化委員に蒼くん、など全てを決め終わった。私は、あまり人見知りをしないので、クラスのほとんどと話したことがあった。そのためすぐに馴染むことができた。
「あ、夕音ちゃん」
「あ、由芽さん。どうしたの?」
「ちょっと頼みたいんだけど、いい?」
「うん、いいよ」
由芽さんがいつもの笑顔を見せて話す。頼み、と言った時少しだけ申し訳なさそうにしたが、私が承諾すると「ありがとう」といつものように話し始めた。
「今日、委員会で残らないといけないんだけど、霙が捕まんなくて。先に帰っておいてって伝えてくれる?」
「了解、いってきまーす」
「ありがとー!」
ひらひらと手を振る由芽さんに、手を振り返しながら霙さんを探す。情報通で、追いかけるのには慣れている由芽さんが捕まえられない霙さんを私が捕まえられるか不安になりながらも探した。 すると、階段から何かが飛び降りてきた。
「わぁ!?び、びっくりした…霙さんかぁ…」
「ん?あれ?夕音ちゃんじゃん!どうしたの?」
「あ、霙さんを探していたんだ。由芽さんから伝言、『委員会があるから先に帰ってて良いよ』だって」
「ありゃ、学級委員になったのかな?了解。ありがとー!」
「どういたしまして」
すると、霙さんがリュックを背負い直し、いきなり階段を駆け下り始めた。私はそれに驚いて、
「どうしたの!?」
と叫んだ。霙さんは屈託のない笑顔を見せて
「雪と富!捕まえてくる!」
と言った。そういえば富くんが「霙とは腐れ縁」とか言っていたな、と思い出して思わず笑ってしまう。階段の踊り場で止まって、焦ったようにこちらを向く。何かと思ったら挨拶をしてくれた。私はまた笑顔になり、挨拶を返した。
おつかいも終わり、教室に戻る。まだ残ってお喋りしている人もいた。私は教科書を鞄に入れ、肩にかけた。すると、何か奇妙な気配がした。気になって、誰もいない屋上へ続く扉の前へ行った。そして、私は腕をまっすぐにあげ、一気に振り落とした。
”恋使”と念じながら。
すると、目の前で腕を組む女性が現れた。妖艶な魅力がある、美しい女性だった。
「稲荷様!?」
私が驚いてその女性の名を呼ぶと、稲荷様は嬉しそうに着物をパタパタと振り、話し出した。
「恋使になって日も浅いのでのぅ。様子確認、といったところじゃ」
「わ、私…まだ恋とか感じてないのにですか…!?」
「いや、おるぞ?結構強い想いを感じる」
稲荷様が遠くを見た。私はどうするべきか迷った。すると稲荷様が私に助け舟を出してくれた。
「図書室の方からじゃ。その姿なら人間にはバレまい。念じれば物質も通り抜けられるぞ」
にこっと稲荷様が笑った。私は、頼られた気がして嬉しかった。なので一目散に図書室へ向かった。
「あ、夕音ちゃん」
「あ、由芽さん。どうしたの?」
「ちょっと頼みたいんだけど、いい?」
「うん、いいよ」
由芽さんがいつもの笑顔を見せて話す。頼み、と言った時少しだけ申し訳なさそうにしたが、私が承諾すると「ありがとう」といつものように話し始めた。
「今日、委員会で残らないといけないんだけど、霙が捕まんなくて。先に帰っておいてって伝えてくれる?」
「了解、いってきまーす」
「ありがとー!」
ひらひらと手を振る由芽さんに、手を振り返しながら霙さんを探す。情報通で、追いかけるのには慣れている由芽さんが捕まえられない霙さんを私が捕まえられるか不安になりながらも探した。 すると、階段から何かが飛び降りてきた。
「わぁ!?び、びっくりした…霙さんかぁ…」
「ん?あれ?夕音ちゃんじゃん!どうしたの?」
「あ、霙さんを探していたんだ。由芽さんから伝言、『委員会があるから先に帰ってて良いよ』だって」
「ありゃ、学級委員になったのかな?了解。ありがとー!」
「どういたしまして」
すると、霙さんがリュックを背負い直し、いきなり階段を駆け下り始めた。私はそれに驚いて、
「どうしたの!?」
と叫んだ。霙さんは屈託のない笑顔を見せて
「雪と富!捕まえてくる!」
と言った。そういえば富くんが「霙とは腐れ縁」とか言っていたな、と思い出して思わず笑ってしまう。階段の踊り場で止まって、焦ったようにこちらを向く。何かと思ったら挨拶をしてくれた。私はまた笑顔になり、挨拶を返した。
おつかいも終わり、教室に戻る。まだ残ってお喋りしている人もいた。私は教科書を鞄に入れ、肩にかけた。すると、何か奇妙な気配がした。気になって、誰もいない屋上へ続く扉の前へ行った。そして、私は腕をまっすぐにあげ、一気に振り落とした。
”恋使”と念じながら。
すると、目の前で腕を組む女性が現れた。妖艶な魅力がある、美しい女性だった。
「稲荷様!?」
私が驚いてその女性の名を呼ぶと、稲荷様は嬉しそうに着物をパタパタと振り、話し出した。
「恋使になって日も浅いのでのぅ。様子確認、といったところじゃ」
「わ、私…まだ恋とか感じてないのにですか…!?」
「いや、おるぞ?結構強い想いを感じる」
稲荷様が遠くを見た。私はどうするべきか迷った。すると稲荷様が私に助け舟を出してくれた。
「図書室の方からじゃ。その姿なら人間にはバレまい。念じれば物質も通り抜けられるぞ」
にこっと稲荷様が笑った。私は、頼られた気がして嬉しかった。なので一目散に図書室へ向かった。
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