518 / 812
1月30日 お昼ご飯
しおりを挟む
一通り見終えたため水族館を出て、近くのレストランを探す。近くにあった大きなショッピングモールに入り中を探索すると、学生向けの値段設定であるレストランもたくさん目に入って来た。
「何食べる?」
「うーん、お昼だし…あっパスタとか?」
「良いね。あ、あそこはどう?」
見慣れたチェーン店ではなく、あまり知らない名前の店を選んで示す。黒板風の看板には美味しそうなパスタやピザの写真がセンス良く貼り付けられており、その横には可愛らしい文字で説明書きがされていた。窓から見える店内はオレンジがかった明るい電球に照らされ、温かい雰囲気である。ポツポツと人が座っており、知る人ぞ知る店のように思えた。
「入ってみようか」
「そうだね」
開いたままのドアをくぐると、「いらっしゃいませ~」と明るい女性の声が聞こえて来た。
「お好きな席へどうぞ~」
フリルエプロンを付けた背の高い店員さんが、人懐っこい笑顔を浮かべながら声を掛けてくれる。彼女は食器を下げると、代わりにメニュー表と水を持って席に着いた私達の元へやって来た。
「ご注文がお決まりになりましたら、備え付けのベルでお呼びください~」
間延びした口調でにこにこと話す女性に、つられて笑顔を返す。メニューに視線を移すと、表の看板と同じような作りで一つ一つの料理について丁寧に書かれていた。
「凄いね。皆美味しそう」
「うん。何食べようかな」
悩んだ結果、私は海老のトマトクリームパスタとオレンジジュース、羅樹はミートソースパスタとぶどうジュースを頼んだ。先程の水族館やここに来るまでに見た店の話をしていると、あっという間に料理が運ばれて来た。
「ごゆっくりどうぞ~」
差し出されたお皿の上には、熱々のパスタが乗っていた。海老とブロッコリーがまばらに置かれており、彩りも鮮やかだ。
「「いただきます」」
何を言わずとも揃った声に、思わず笑ってしまう。フォークで一口分掬い取って口の中に運ぶと、ふわっとトマトの酸味が口の中に広がった。それはしつこさなど全く感じさせず、後を追うように広がったクリームの味が口内を包み込んでくれる。滑らかな口当たりで、いくらでも食べていられそうだ。ブロッコリーや海老も、ソースと絡み合いつつ素材本来の味は失っていない。絶妙な味の変化を楽しみつつ、食事を楽しむ。羅樹も口に合ったらしく、にこにこしながら食べている。
「美味しいね」
「うん!美味しい」
時折会話を交わしながら、ゆっくりと食べ進めていく。時間の進みが遅くなったかのように、ゆったりとした空間が広がっていた。それに甘えて、ジュースに口を付けながら小休憩を挟む。
「次はどこ行こうか?」
「うん?さっき言ってたお店、見て回るんじゃないの?」
「え?いいの?」
「いいよ。行こうか!」
羅樹が会計の準備を始めたので、私も頷いて店を出ることにした。とても雰囲気が良いお店だったので、また来たいと思う。
「ありがとうございました~」
店員さんに見送られて、店の外に出る。何から見ようかな、と思考を巡らせていると、羅樹に手を差し出された。
「え?」
「手。繋がないの?」
「つ、繋ぐ!」
慌てて手を握ると、羅樹はふふっと楽しそうに笑った。いや、どちらかというと嬉しそうに。
私も同じような顔をしているのかもしれない。恥ずかしくなって来たので、私は表情筋に力を入れることにした。
「何食べる?」
「うーん、お昼だし…あっパスタとか?」
「良いね。あ、あそこはどう?」
見慣れたチェーン店ではなく、あまり知らない名前の店を選んで示す。黒板風の看板には美味しそうなパスタやピザの写真がセンス良く貼り付けられており、その横には可愛らしい文字で説明書きがされていた。窓から見える店内はオレンジがかった明るい電球に照らされ、温かい雰囲気である。ポツポツと人が座っており、知る人ぞ知る店のように思えた。
「入ってみようか」
「そうだね」
開いたままのドアをくぐると、「いらっしゃいませ~」と明るい女性の声が聞こえて来た。
「お好きな席へどうぞ~」
フリルエプロンを付けた背の高い店員さんが、人懐っこい笑顔を浮かべながら声を掛けてくれる。彼女は食器を下げると、代わりにメニュー表と水を持って席に着いた私達の元へやって来た。
「ご注文がお決まりになりましたら、備え付けのベルでお呼びください~」
間延びした口調でにこにこと話す女性に、つられて笑顔を返す。メニューに視線を移すと、表の看板と同じような作りで一つ一つの料理について丁寧に書かれていた。
「凄いね。皆美味しそう」
「うん。何食べようかな」
悩んだ結果、私は海老のトマトクリームパスタとオレンジジュース、羅樹はミートソースパスタとぶどうジュースを頼んだ。先程の水族館やここに来るまでに見た店の話をしていると、あっという間に料理が運ばれて来た。
「ごゆっくりどうぞ~」
差し出されたお皿の上には、熱々のパスタが乗っていた。海老とブロッコリーがまばらに置かれており、彩りも鮮やかだ。
「「いただきます」」
何を言わずとも揃った声に、思わず笑ってしまう。フォークで一口分掬い取って口の中に運ぶと、ふわっとトマトの酸味が口の中に広がった。それはしつこさなど全く感じさせず、後を追うように広がったクリームの味が口内を包み込んでくれる。滑らかな口当たりで、いくらでも食べていられそうだ。ブロッコリーや海老も、ソースと絡み合いつつ素材本来の味は失っていない。絶妙な味の変化を楽しみつつ、食事を楽しむ。羅樹も口に合ったらしく、にこにこしながら食べている。
「美味しいね」
「うん!美味しい」
時折会話を交わしながら、ゆっくりと食べ進めていく。時間の進みが遅くなったかのように、ゆったりとした空間が広がっていた。それに甘えて、ジュースに口を付けながら小休憩を挟む。
「次はどこ行こうか?」
「うん?さっき言ってたお店、見て回るんじゃないの?」
「え?いいの?」
「いいよ。行こうか!」
羅樹が会計の準備を始めたので、私も頷いて店を出ることにした。とても雰囲気が良いお店だったので、また来たいと思う。
「ありがとうございました~」
店員さんに見送られて、店の外に出る。何から見ようかな、と思考を巡らせていると、羅樹に手を差し出された。
「え?」
「手。繋がないの?」
「つ、繋ぐ!」
慌てて手を握ると、羅樹はふふっと楽しそうに笑った。いや、どちらかというと嬉しそうに。
私も同じような顔をしているのかもしれない。恥ずかしくなって来たので、私は表情筋に力を入れることにした。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
野球人
かい
青春
高校野球の華 エースで四番
それを覆すスペシャリスト達
主人公秋葉が中学の時テレビで見た甲子園
かき回す野球で日本一を取った
名門神童学院
中学時代補欠だった秋葉が一般入試で名門の扉を叩く
土俵の華〜女子相撲譚〜
葉月空
青春
土俵の華は女子相撲を題材にした青春群像劇です。
相撲が好きな美月が女子大相撲の横綱になるまでの物語
でも美月は体が弱く母親には相撲を辞める様に言われるが美月は母の反対を押し切ってまで相撲を続けてる。何故、彼女は母親の意見を押し切ってまで相撲も続けるのか
そして、美月は横綱になれるのか?
ご意見や感想もお待ちしております。
セッションへの招待状
gama
青春
もうすぐ、夏休みを迎えようとする時期。
神鳥谷高校の一年生、庭山徹は、学業に部活にも何一つ没頭することのなく、ただ漠然と学校と家との往復する日々を過ごしていた。
そんなある日、クラスメイトの相馬貴美子から話しかけられ、放課後此処に来てほしいとメモを渡される。
ろくに話もした事もない彼女から誘いの話を受け、少し淡い期待をしてその場所に向かった先は、美術部の名を借りたTRPG同好会だった。
TRPGがまだこれ程知られていなかった頃に、体験した事を少し含めて、ゲームの面白さと楽しさを少しでも味わえたらと思っております。
後天的貞操逆転世界の異端者〜ある日突然貞操観念が完全に逆転した世界で元のままだった俺、ギラギラした美少女達からロックオンされてしまう〜
水島紗鳥
青春
ある日全世界で男女の貞操観念が逆転する超常現象が発生した。それにより女性の性欲が凄まじく強くなり男性の性欲はめちゃくちゃ弱くなったわけだが、主人公である沢城潤は何故か貞操逆転していない。
そのため今までと何も変わっていない潤だったがそれを知られると面倒ごとに巻き込まれる可能性が高いと判断して隠している。
しかし、そんな潤の秘密に気付いた美少女達にロックオンされてしまって…
ザ・グレート・プリン
スーパー・ストロング・マカロン
青春
誕生日の夜、30歳になった佐山美邦(みくに)は寄り道をした埠頭で同じアパートの隣に引っ越して来たばかりのシングルマザーを見かける。
彼女はとある理由から男達と街を去る事になった。
その際、彼女から頼み事をされてしまい断りきれず引き受けてしまう。この日を契機に佐山の生活は一変する。
少女が過去を取り戻すまで
tiroro
青春
小学生になり、何気ない日常を過ごしていた少女。
玲美はある日、運命に導かれるように、神社で一人佇む寂しげな少女・恵利佳と偶然出会った。
初めて会ったはずの恵利佳に、玲美は強く惹かれる不思議な感覚に襲われる。
恵利佳を取り巻くいじめ、孤独、悲惨な過去、そして未来に迫る悲劇を打ち破るため、玲美は何度も挫折しかけながら仲間達と共に立ち向かう。
『生まれ変わったら、また君と友達になりたい』
玲美が知らずに追い求めていた前世の想いは、やがて、二人の運命を大きく変えていく────
※この小説は、なろうで完結済みの小説のリメイクです
※リメイクに伴って追加した話がいくつかあります
内容を一部変更しています
※物語に登場する学校名、周辺の地域名、店舗名、人名はフィクションです
※一部、事実を基にしたフィクションが入っています
※タグは、完結までの間に話数に応じて一部増えます
※イラストは「画像生成AI」を使っています
変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日
コダーマ
青春
【うちに突然、桃太郎が住みつきだした!】
家に帰ると何かいる。
チョンマゲ結って、スーツにピンクのネクタイ。
ワラジを履いたメガネ男。
「桃太郎」と名乗ったソイツは、信じられないことにアタシの部屋に居座る気だ。
高校受験に失敗したリカが住むのは、完璧美人の姉が経営するアパート(ボロ)。
キテレツな住人たちを相手に、リカは関西人のサガで鋭いツッコミを入れまくる。
広くて狭いQの上で
白川ちさと
青春
ーーあなたに私の学園の全てを遺贈します。
私立慈従学園 坂東和泉
若狭透は大家族の長男で、毎日のように家事に追われている。
そんな中、向井巧という強面の青年が訪れて来た。彼は坂東理事長の遺言を透に届けに来たのだ。手紙には学園長と縁もゆかりもない透に学園を相続させると書かれていた――。
四人の学生が理事長の遺した謎を解いていく、謎解き青春ミステリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる