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1月1日 会食準備
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迎春の儀式も無事終え、扇様達は国の要人に挨拶回りがあるとまだ部屋には帰って来ていない。付き人などはまだあちらにいるようで、花火も来ない。私は使用人の皆さんと打ち解けて様々な話を聞いた。早めの昼食を共にしていると、私の話題に移った。そして花火の友人であることがわかると、片倉さんと花火の話を中心にしてくれた。確かに片倉さんは人気だったらしいが、早々にその視線が花火に注がれていると気付いた女性陣が圧倒的に多かったらしく、裏で手を回して2人をくっつけようと尽力したそうだ。気付いていなかったのは花火に嫌がらせをしていたごく一部、いや彼女たちも気付いていたからこそあのような蛮行に及んだのだろう、と姦しいながらも毒のある口調で言い放つ。上流階級での腹の探り合いに慣れている彼女らは、主人を守るためにちょっぴり黒い面もあるようだ。
その時、控え室に伝令役の侍女が入って来て、最もドアの近くにいたメイドに耳打ちする。そのメイドは今日の朝私を支度を手伝ってくれた人だったと記憶しているが、彼女は私の方を見てその瞳を輝かせた。何だか嫌な予感がする。
侍女が去ると、彼女はパンッと胸の前で手を打った。
「今日の夜は会食を行うそうよ。今すぐ大ホールの準備を。メイド長がそちらにいらっしゃるそうだから皆さんそちらへ。夕音様はこちらへ」
「えっ?」
様付けを強調して呼ばれた。案内された方は豪華な衣装が並び大きな鏡がセットされたメイクルーム。本当は扇様の支度もこちらですることが多いらしいが、儀式前は湯浴みもあるので自室でする必要があるそうだ。なんて余談はさておいて、ここに連れて来られた上会食があるという話、これからの展開に察しが付くというもの。
「また黄金の髪を手ずから飾り立てることが出来るなんて光栄ですわ」
ウキウキしながら私を全身鏡の前に立てると、奥からドレスらしき衣装を取り出して来た。裾に向けて薄くなるグラデーションのAラインドレス。濃いオレンジの布で胸元が覆われており、レース作られた薔薇の飾りが添えられていた。
「あの…どうして?」
分かってはいるものの、聞かずにはいられない。差し出されたドレスにうっとりと指を這わせていたメイドはぱちくりと瞬きをした後、ふっと妖艶な笑みを見せた。
「それは勿論、夕音様には会食に参加していただきますもの」
やはり。わかりきってはいたが、そんなホイホイと庶民の娘が参加して良いものなのだろうか。そんなことを気にした様子もなく、メイドは鼻歌混じりに次々と装飾品やらメイク道具やらを準備する。私には何が何やらさっぱりなので選んで貰えるのは嬉しいが、派手すぎやしないだろうか。
「さぁ、お着替えしましょうね」
まるで子供に対して言い聞かせるように告げられたので、私は抵抗を諦め、されるがままの着せ替え人形に徹した。
その時、控え室に伝令役の侍女が入って来て、最もドアの近くにいたメイドに耳打ちする。そのメイドは今日の朝私を支度を手伝ってくれた人だったと記憶しているが、彼女は私の方を見てその瞳を輝かせた。何だか嫌な予感がする。
侍女が去ると、彼女はパンッと胸の前で手を打った。
「今日の夜は会食を行うそうよ。今すぐ大ホールの準備を。メイド長がそちらにいらっしゃるそうだから皆さんそちらへ。夕音様はこちらへ」
「えっ?」
様付けを強調して呼ばれた。案内された方は豪華な衣装が並び大きな鏡がセットされたメイクルーム。本当は扇様の支度もこちらですることが多いらしいが、儀式前は湯浴みもあるので自室でする必要があるそうだ。なんて余談はさておいて、ここに連れて来られた上会食があるという話、これからの展開に察しが付くというもの。
「また黄金の髪を手ずから飾り立てることが出来るなんて光栄ですわ」
ウキウキしながら私を全身鏡の前に立てると、奥からドレスらしき衣装を取り出して来た。裾に向けて薄くなるグラデーションのAラインドレス。濃いオレンジの布で胸元が覆われており、レース作られた薔薇の飾りが添えられていた。
「あの…どうして?」
分かってはいるものの、聞かずにはいられない。差し出されたドレスにうっとりと指を這わせていたメイドはぱちくりと瞬きをした後、ふっと妖艶な笑みを見せた。
「それは勿論、夕音様には会食に参加していただきますもの」
やはり。わかりきってはいたが、そんなホイホイと庶民の娘が参加して良いものなのだろうか。そんなことを気にした様子もなく、メイドは鼻歌混じりに次々と装飾品やらメイク道具やらを準備する。私には何が何やらさっぱりなので選んで貰えるのは嬉しいが、派手すぎやしないだろうか。
「さぁ、お着替えしましょうね」
まるで子供に対して言い聞かせるように告げられたので、私は抵抗を諦め、されるがままの着せ替え人形に徹した。
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