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12月30日 身清め
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ノックの音が響く。扇様が答えるといつもより大きなエプロンをしたメイドが入って来た。
「お嬢様、身清めの準備が出来ました」
「わかったわ」
簡潔に答えると、扇様は地続きとなった扉から隣の部屋へ移動する。私がその背中を見送っていると、入室したメイドが不思議そうに首を傾げた。
「夕音様もです」
「えっ!?」
驚いて目を丸くすると、申し訳なさそうな表情を浮かべ耳打ちされた。
「清めの時間も長いのです。我々にとっては1人2人変わりませんし、それにこれから儀式まで1番お嬢様の側にいるのは夕音様です。そのため夕音様も共に清めていただきます」
「わ、わかりました…?」
メイドに促され、地続きとなった扉から隣の部屋へと足を踏み入れる。扇様は慣れた手つきで衣を脱がされているところだった。私が入って来たことに目を輝かせ嬉しそうな表情を浮かべる扇様と目を合わせていると、数人のメイドが私の側にやってきて服を剥く。私は慌てて抵抗したが時間の無駄になりそうだと諦め、されるがままに素肌を晒した。知り合いでもない彼女らに裸体を見られるのは恥ずかしかったが、もう何も考えないことにした。扇様に誘導され曇りガラスの張られた浴室へと向かう。湯気に甘い香りが含まれていた。広いバスタブには甘い香りの元である花弁が散っており、とても豪華だった。扇様と私が入っても余裕があるバスタブに胸まで浸かり、上から多量の湯をかけられる。その湯にすら香りが付いているようで、クラクラして来た。濡れた髪を優しく梳かれ、香油を染み込ませる。肌も丁寧に洗われ、こそばゆい気持ちもあったがもう気にしていられなかった。向かいで同じことをされている扇様は慣れているようで、全く気にしている様子はない。ある程度清めが終わると、肌襦袢を渡された。簡単に着付けさせられた後、髪を乾かしてもらいスキンケアを受ける。鏡に映った自分の肌が薔薇色に色付き潤いを持っているのが不思議で仕方なかった。肌の表面に付いた水滴がなくなった頃、サラサラとした肌触りの襦袢に着替えた。扇様と共にまた自室に戻ると、今度は髪を整え始めた。
「お嬢様の髪はいつ見ても綺麗ですわ」
「えぇ、鴉の濡れ羽色。素敵です」
「夕音様は黄金の色ですわね。とても鮮やか」
「ふふ、このお屋敷には金の髪を持つお方はいらっしゃいませんから、役得ですわね」
そんな風に話しながら、手は止まることなく動き続けていた。私はされるがまま、彼女たちの満足がいくまでじっとしていた。朝早かった上入浴して気が緩んだのか、何度か寝そうになってしまったがその度緊張が走り耐えた。ドレッサーの鏡には、自分とは思えない姿が映っていた。高い位置でポニーテールにした髪を、豪華な水引と玉飾りで装飾されている。隣を見ると扇様の髪も同様の飾り付けがなされていた。
「…えっと、私は側にいるだけなのでこんな飾る必要はないのでは…」
「先程も申し上げました通り、夕音様は1番扇様の側にいらっしゃる必要がありますので」
有無を言わせぬその笑顔に、私はただ頷くしかなかった。
「お嬢様、身清めの準備が出来ました」
「わかったわ」
簡潔に答えると、扇様は地続きとなった扉から隣の部屋へ移動する。私がその背中を見送っていると、入室したメイドが不思議そうに首を傾げた。
「夕音様もです」
「えっ!?」
驚いて目を丸くすると、申し訳なさそうな表情を浮かべ耳打ちされた。
「清めの時間も長いのです。我々にとっては1人2人変わりませんし、それにこれから儀式まで1番お嬢様の側にいるのは夕音様です。そのため夕音様も共に清めていただきます」
「わ、わかりました…?」
メイドに促され、地続きとなった扉から隣の部屋へと足を踏み入れる。扇様は慣れた手つきで衣を脱がされているところだった。私が入って来たことに目を輝かせ嬉しそうな表情を浮かべる扇様と目を合わせていると、数人のメイドが私の側にやってきて服を剥く。私は慌てて抵抗したが時間の無駄になりそうだと諦め、されるがままに素肌を晒した。知り合いでもない彼女らに裸体を見られるのは恥ずかしかったが、もう何も考えないことにした。扇様に誘導され曇りガラスの張られた浴室へと向かう。湯気に甘い香りが含まれていた。広いバスタブには甘い香りの元である花弁が散っており、とても豪華だった。扇様と私が入っても余裕があるバスタブに胸まで浸かり、上から多量の湯をかけられる。その湯にすら香りが付いているようで、クラクラして来た。濡れた髪を優しく梳かれ、香油を染み込ませる。肌も丁寧に洗われ、こそばゆい気持ちもあったがもう気にしていられなかった。向かいで同じことをされている扇様は慣れているようで、全く気にしている様子はない。ある程度清めが終わると、肌襦袢を渡された。簡単に着付けさせられた後、髪を乾かしてもらいスキンケアを受ける。鏡に映った自分の肌が薔薇色に色付き潤いを持っているのが不思議で仕方なかった。肌の表面に付いた水滴がなくなった頃、サラサラとした肌触りの襦袢に着替えた。扇様と共にまた自室に戻ると、今度は髪を整え始めた。
「お嬢様の髪はいつ見ても綺麗ですわ」
「えぇ、鴉の濡れ羽色。素敵です」
「夕音様は黄金の色ですわね。とても鮮やか」
「ふふ、このお屋敷には金の髪を持つお方はいらっしゃいませんから、役得ですわね」
そんな風に話しながら、手は止まることなく動き続けていた。私はされるがまま、彼女たちの満足がいくまでじっとしていた。朝早かった上入浴して気が緩んだのか、何度か寝そうになってしまったがその度緊張が走り耐えた。ドレッサーの鏡には、自分とは思えない姿が映っていた。高い位置でポニーテールにした髪を、豪華な水引と玉飾りで装飾されている。隣を見ると扇様の髪も同様の飾り付けがなされていた。
「…えっと、私は側にいるだけなのでこんな飾る必要はないのでは…」
「先程も申し上げました通り、夕音様は1番扇様の側にいらっしゃる必要がありますので」
有無を言わせぬその笑顔に、私はただ頷くしかなかった。
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