神様自学

天ノ谷 霙

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12月30日 次の依頼

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私の携帯が着信を告げたのは、陸上部の手伝いに行った日の夜だった。差出人は花火で、年末の忙しさを考慮した丁寧な文の後手伝いに来て欲しいと記されていた。手伝いというより、屋敷中が忙しくなる中せん様を大人しくさせるためのストッパーだと、やんわりとした口調で書かれていたことに思わず笑ってしまった。始発電車に揺られる私の側には、修学旅行で使用した大きなキャリーバッグが置かれている。1月2日まで、給金付きで手伝いに駆り出されたのだ。両親に大事にならない程度に説明をすると、あっさりと許可が出たので花火に了解のメッセージを送った。しかし私の配慮は意味無く、小綺麗な仕事着に身を包んだ花火が直々に我が家に訪れ、きちんと説明して許可を得て行ってしまった。私の行き先がこの国の最上位に位置するお方の元だと知り、両親は青ざめていたが了承した以上行かないわけにはいかない。私は綺麗めの服に身を包み、数日分の必需品と共に目的地へ向かった。

衛兵というか警備員というか、門の警護をしている人に名乗ると話は通っていたようで、許可証と共に案内を受けある部屋に通される。そこは豪華な客間だったようで、目を疑った。案内役の女性に聞くと、「扇様のご友人としてお迎えしたのです。使用人と同じ扱いなど出来ません」と言われてしまった。恐る恐る荷物を置き、今日の必需品を持ってさっさと部屋を出る。荷物整理は後回しだ。案内役の女性も他に仕事があるだろうし、私も与えられた役割をこなさなければ。
「こちらでございます」
「は、はい」
通された部屋は、覚えのある場所だった。扇様の自室。ノックと名前、そして返答の後に入室する。
「夕音!待ってたわ!」
ゆったりとした薄い羽織と肌襦袢姿の扇様が振り返って、嬉しそうに笑う。
「こちらこそ、お会い出来て光栄です」
「そんな堅い態度取らないで。こっちに来て」
「そんなに急がなくても、私は逃げませんよ」
くすくすと笑って、引かれるままに向かいの椅子に腰掛ける。どうやら扇様はドレッサー前から離れられないらしい。
「明日の夜から元旦まで儀式を行うから、その準備があるの。身を清めたり化粧をしたり、髪を整えたりね。その間が暇で仕方なくて。だからといって夕音を呼ぶのはどうかと思ったけど、了承してくれて嬉しかったわ」
「えぇ、私も嬉しいです」
私の言葉に、嬉しそうに笑う扇様。前回、前々回と会った時とは異なり化粧をしておらず、少女らしい顔立ちが愛らしかった。バタバタと入ったり出たりする音が近くの部屋から聞こえる。扇様のための準備だとわかった。物音につられて動き出しそうな扇様に声を掛け、会話を続ける。少し話が切れるとそわそわしだすので、確かにストッパー役は大変そうだと思った。
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