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12月25日 お化け屋敷
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中はとても暗かった。時折白い顔をした人が無言で立っていたり、障子の通り道から手が無数に出て来たり、急な出来事に驚いてしまう。ただ驚くだけで、怖がることがないのが少し申し訳なかった。昔は怖がっていた羅樹も成長したようで、突然だと驚くがよくある仕掛けだと心の準備が出来るためかあまり悲鳴を上げることはなかった。それでも私より苦手なのは変わらないようで、びっくりした後数秒は顔が引きつっている。
「夕音は昔から強いね…」
「まぁねー」
神様に近い力を持つからだろうか。心の音が聞こえるからだろうか。脅かしに屈するような心は生憎持ち合わせていなかった。
「羅樹も昔に比べたら大分マシになったじゃない?しがみついてこなくなっただけ、大きな進歩だよ」
本当は少し寂しい気もしたが、それはそれとして成長は喜ばしいことなのだ。
「…うん、まだちょっと怖いけど、でもね」
「ん?」
「本当にお化けがいるなら、お母さんにも会えるのかなって思ったら、あんまり怖くなくなったんだ」
羅樹の言葉に詰まる。幼い頃に亡くした母親のことを思い出しているなんて、知らなかった。
「あ、見て!出口だよ」
「え、あ、うん」
羅樹が光の方向を指し、笑う。その笑顔に痛々しさなどが何もなくて、逆に私の胸を締め付けた。羅樹はただの記憶として、考えとして語っただけなのに、私ばかりが気にして苦しくなっている。
今日は羅樹に楽しんでもらうために来たんだ。私が暗い顔をしたら、それこそ羅樹に気を遣わせてしまう。
お化け屋敷を出る瞬間に気持ちを切り替え、しっかりと笑顔を浮かべた。
「なかなかに驚かされたね」
「ね!結構怖いんだね?」
「夏の肝試しは全然だったからなぁ…」
「僕も大丈夫だったな。辻さんが少し苦手だったみたいで、でも夜は好きなんだって。普通に歩いてたよ」
「浅野くんは凄い怖がってたみたいだけどね」
「叫び声が聞こえてびっくりしたなぁ」
「懐かしいな…次はどこ行く?」
「そろそろ時間的に…ジェットコースター!」
「オッケー。じゃ、混む前に、急ぐよ!」
気持ち急ぎながら、このアミューズメントパークの目玉、ジェットコースターに向かう。一部のエリア上部を通るような設計になっており、恐怖心を煽るように出来ていた。人気のアトラクションなので、最低でも1時間の列が出来ている。私と羅樹が並ぶと、ギリギリ1時間待ちの表示だった。時間が経つにつれ、後ろに並ぶ人も増えていく。あっという間に1時間半待ちへと表示が変わった。
「早く乗ってみたいなぁ」
「焦らないの。話でもしてればすぐよ」
「あ、それなら、この間桜くんがね!」
羅樹が楽しそうに話を始める。背が高いので見上げるような形になる。焦げ茶の髪が肌に影を作っていて、水色に輝く瞳がとても綺麗だった。
「夕音は昔から強いね…」
「まぁねー」
神様に近い力を持つからだろうか。心の音が聞こえるからだろうか。脅かしに屈するような心は生憎持ち合わせていなかった。
「羅樹も昔に比べたら大分マシになったじゃない?しがみついてこなくなっただけ、大きな進歩だよ」
本当は少し寂しい気もしたが、それはそれとして成長は喜ばしいことなのだ。
「…うん、まだちょっと怖いけど、でもね」
「ん?」
「本当にお化けがいるなら、お母さんにも会えるのかなって思ったら、あんまり怖くなくなったんだ」
羅樹の言葉に詰まる。幼い頃に亡くした母親のことを思い出しているなんて、知らなかった。
「あ、見て!出口だよ」
「え、あ、うん」
羅樹が光の方向を指し、笑う。その笑顔に痛々しさなどが何もなくて、逆に私の胸を締め付けた。羅樹はただの記憶として、考えとして語っただけなのに、私ばかりが気にして苦しくなっている。
今日は羅樹に楽しんでもらうために来たんだ。私が暗い顔をしたら、それこそ羅樹に気を遣わせてしまう。
お化け屋敷を出る瞬間に気持ちを切り替え、しっかりと笑顔を浮かべた。
「なかなかに驚かされたね」
「ね!結構怖いんだね?」
「夏の肝試しは全然だったからなぁ…」
「僕も大丈夫だったな。辻さんが少し苦手だったみたいで、でも夜は好きなんだって。普通に歩いてたよ」
「浅野くんは凄い怖がってたみたいだけどね」
「叫び声が聞こえてびっくりしたなぁ」
「懐かしいな…次はどこ行く?」
「そろそろ時間的に…ジェットコースター!」
「オッケー。じゃ、混む前に、急ぐよ!」
気持ち急ぎながら、このアミューズメントパークの目玉、ジェットコースターに向かう。一部のエリア上部を通るような設計になっており、恐怖心を煽るように出来ていた。人気のアトラクションなので、最低でも1時間の列が出来ている。私と羅樹が並ぶと、ギリギリ1時間待ちの表示だった。時間が経つにつれ、後ろに並ぶ人も増えていく。あっという間に1時間半待ちへと表示が変わった。
「早く乗ってみたいなぁ」
「焦らないの。話でもしてればすぐよ」
「あ、それなら、この間桜くんがね!」
羅樹が楽しそうに話を始める。背が高いので見上げるような形になる。焦げ茶の髪が肌に影を作っていて、水色に輝く瞳がとても綺麗だった。
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