神様自学

天ノ谷 霙

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12月9日 悪夢

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先生が私の元気の無さに気付いて、小さい子供にやるように体温を測ってくれた。すぐに測定完了の音が鳴り、先生が取り出す。表示されていた数字は「38.1°C」。そりゃ何も動けなくなるはずだ。私はもともと風邪や病気になりにくい体質だったので、数年ぶりのその感覚に抗うことが出来なかった。先生は私にゆっくりと話す。普段の数倍ゆっくり喋ってもらって、やっと聞き取れた。聴覚も機能していない。吐き気は今の所おさまっているが、いつまた気持ち悪くなるか分からない。先生の指示に従ってゆっくりとベッドに寝転がる。何だか苦しくて、怖くて、泣きそうになってしまった。
「私は一旦職員室に行って保護者に連絡してくるから、寝てなさいね」
先生のそんな声が聞こえて、ドアの閉まる音。私は急に独りになったことを実感し、寂しさでどうにかなりそうだった。
どうしよう。寝たいけど、苦しくて眠れない。独りが怖くて、眠ることに恐れを感じている。「死」が間近に迫っているような感覚がする。それは強ち間違いでもないのかもしれないけど。
あの女性の神様に、私は魂を食われるかもしれないのだけど。
今考えてもしょうがないのだが、つい考えてしまう。ここ数日何度も頭の中を滑る疑問。あの時の恐怖がトラウマのように植え付けられていて、どうしても先に進めない。
こんなことなら"恋使"になんか、ならなければ良かった。
気付いたら私の瞳から、大粒の涙が溢れていた。

~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~

「…ね、夕音?」
ふと目を覚ますと、そこにいたのは紗奈と利羽で。私はぼんやりする頭で自分の状況を確認した。
「お母さん、来るって。何を持って帰るか分からなかったから、そのまま鞄だけ持ってきたよ」
「スポーツドリンク買ってきたから、飲んで」
紗奈から鞄を受け取り、利羽に貰った飲み物に口を付ける。後で返すの忘れないようにしなくちゃ、と思いながら蓋を閉めた。そのくらいの元気は回復したようだ。
「竜夜も心配してたよ。早く元気になってから来てくれって。数学が分からないから」
紗奈の呆れたトーンに、ふふっと笑いが溢れる。それを見た2人は顔を見合わせて、一緒に笑い出した。
うなされてたけど、どんな夢を見たの?」
「夢…?」
夢なんて見た記憶が無い。魘されていた理由は、私には分からない。
首を傾げていると、利羽は微笑んで私の頭を撫でた。
「風邪で悪い夢を見たのかもね。思い出さない方が良いわ」
とても安心出来るその温かさに、私は涙を流してしまっていた。
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