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12月8日? 黒
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暗い。黒い。重い。
そんな空間に、私はいた。何かふわふわした、冷たいものの上に寝転がっている感覚。私はゆっくりと体を起こしたが、支えるためについた手が何かに飲み込まれ、それを避けるためについ手を離してしまった。体勢を崩して、頭をぶつけた。幸い柔らかい何かに受け止められて、頭が痛むことはなかった。
やっと起き上がることが出来て、周りを確認する。辺りは真っ暗で、何も見えない。私が座っている場所は波のように動き、意思を持ったように形を変える。果てが見えないその空間に、私は閉じ込められているようだった。
何かのテレビで見た、片栗粉の実験のようだ。
真っ黒な空間に、そんな感想を得た。水と片栗粉を混ぜたものが、握った瞬間だけ固まり、緩めると液体に戻るというあの実験。楽しそうだな、と思ったけどやったことは無かった。
潮賀くんとかなら、やってるかもなぁ。
ぼんやりとそんなことを考える。そういえば思考も靄がかかったようにはっきりしない。横から小突かれたらカランカランと音が鳴ってしまいそうな程に、私の頭の中は空洞になっていた。いや、もしかしたら中身は詰まっているのかもしれないが、私にそれを認識する術はなかった。考えようと思っても、何だか無性に疲れて中断してしまう。
ここに来る前、私は何をしていたんだっけ。
何かを考えていた気がする。そんな認識だけになっていて、思い出すことが出来ない。ぼんやりとしていると瞼が重くなってくる。自力で目を開けることも困難なくらい、疲れてしまっている。私はどうしてこんな場所にいるのだろう。どうすれば、助かるのだろう。
「…助かる?」
ゆらり、と空間が動くのが分かった。そして目の前に出てきた真っ黒な女の子は、口角だけを上げて笑った。目は、認識出来ない。本来目がある筈の場所は、のっぺらぼうのように平らにならされていた。かろうじて女の子とわかったのは、長く伸びた髪と体が曲線で形成されているためだ。
「どうして?ここにいればいいじゃない」
空間に響き渡っているのか、直接脳内で囁かれているのか、よく分からない彼女の声。私を飲み込むような、声。
「助かる、って、ここが危険だと思ってるってことでしょ?でもどうして?ここが危険な理由なんて無いわ」
黒い冷たい手が、私の頬をなぞる。
「ねぇ、そうでしょう?」
あぁ、確かに。ここが危険だなんて、私はどうしてそう判断したんだろう。何が怖いんだろう。ここにいればいいのに。ずっとここに、いられるなら。
私の足先が、ゆっくりと黒に沈んでいった。
そんな空間に、私はいた。何かふわふわした、冷たいものの上に寝転がっている感覚。私はゆっくりと体を起こしたが、支えるためについた手が何かに飲み込まれ、それを避けるためについ手を離してしまった。体勢を崩して、頭をぶつけた。幸い柔らかい何かに受け止められて、頭が痛むことはなかった。
やっと起き上がることが出来て、周りを確認する。辺りは真っ暗で、何も見えない。私が座っている場所は波のように動き、意思を持ったように形を変える。果てが見えないその空間に、私は閉じ込められているようだった。
何かのテレビで見た、片栗粉の実験のようだ。
真っ黒な空間に、そんな感想を得た。水と片栗粉を混ぜたものが、握った瞬間だけ固まり、緩めると液体に戻るというあの実験。楽しそうだな、と思ったけどやったことは無かった。
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ぼんやりとそんなことを考える。そういえば思考も靄がかかったようにはっきりしない。横から小突かれたらカランカランと音が鳴ってしまいそうな程に、私の頭の中は空洞になっていた。いや、もしかしたら中身は詰まっているのかもしれないが、私にそれを認識する術はなかった。考えようと思っても、何だか無性に疲れて中断してしまう。
ここに来る前、私は何をしていたんだっけ。
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「ねぇ、そうでしょう?」
あぁ、確かに。ここが危険だなんて、私はどうしてそう判断したんだろう。何が怖いんだろう。ここにいればいいのに。ずっとここに、いられるなら。
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