神様自学

天ノ谷 霙

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12月2日 悩み事day

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がばっと身を起こすと、もう昼の10時を過ぎていた。疲れがたまっていたのか、長く寝すぎたようだ。昨日は帰ってきてそのまま寝てしまったことを思い出し、お風呂に入っていないことを思い出す。私は着替えを持って一階に降りた。私に気付いたお母さんが、優しく微笑む。
「おはよう、よく眠れた?」
「うん。お風呂、入る」
「あら、じゃあちょっと待ってて」
そう言ってお母さんはテキパキとお風呂の準備を始める。私は脱衣所に着替えを置いて、髪をとかし、喉が渇いていることに気付いた。コップを取り出して、オレンジジュースを口に含む。
ぼーっとしていると、どうしても昨日のことが蘇る。北原くんの熱を、痛いくらいに思い出す。いつも、北原くんと一緒にいても何も伝わってこなかったから気付かなかった。いつもなら、恋愛感情を天気に例えた心が伝わってくるのに。そういえば昨日も"恋使"の力が発動しなかった。北原くんから伝わってきたのは、好きの言葉だけだった。心の中を覗くようないつもの感覚は無かった。自分に向けられた気持ちは、伝わってこないのだろうか。
「夕音、お風呂沸いたわよ」
「あ、ありがとう。入ってくる」
お母さんの声で現実世界に引き戻されて、それが悟られないように慌てて取り繕う。飲み終えたコップをシンクに置いて、私は急いで昨日の汚れを落としに行く。

30分弱。すっかり温まった。髪をくしゃくしゃとタオルで乾かし、用意されていたご飯に驚く。お母さんは好物のナッツを食べながら、テレビを見ていた。
「ほら、お腹空いたでしょ。食べて休みなさい」
「うん」
私は用意されたオムライスを口に入れ、ふわっと広がるケチャップの味に感動する。修学旅行中に好物を全く食べられなかったわけじゃない。けれど少し久しぶりの母の手料理は、帰ってきた、ということを実感させてくれた。同時に、修学旅行という高校生活でも大きい行事が終わったことを改めて思い知らされた。
スプーンを口に運ぶ単純作業を繰り返していると、脳を蝕むように何度も繰り返される映像、言葉。今日はもう忘れて休むことは出来なさそうだ。心臓を掴まれたように苦しい。動揺を顔に出さないように気を付けなきゃいけない。すぐにでも誰かに相談したかった。でも皆疲れている。メッセージで誰かに聞くのも何となく噂になるのが怖くて、結局出来ないままだ。誰に聞くのが良いんだろうか。
「あっ」
「どうしたの?」
声に出てしまっていたらしい。何でもない、と返して食事に戻る。明日も振り替え休日だから、自由だ。私は、稲荷様のところへ行こうと決意した。
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