336 / 812
12月2日 悩み事day
しおりを挟む
がばっと身を起こすと、もう昼の10時を過ぎていた。疲れがたまっていたのか、長く寝すぎたようだ。昨日は帰ってきてそのまま寝てしまったことを思い出し、お風呂に入っていないことを思い出す。私は着替えを持って一階に降りた。私に気付いたお母さんが、優しく微笑む。
「おはよう、よく眠れた?」
「うん。お風呂、入る」
「あら、じゃあちょっと待ってて」
そう言ってお母さんはテキパキとお風呂の準備を始める。私は脱衣所に着替えを置いて、髪をとかし、喉が渇いていることに気付いた。コップを取り出して、オレンジジュースを口に含む。
ぼーっとしていると、どうしても昨日のことが蘇る。北原くんの熱を、痛いくらいに思い出す。いつも、北原くんと一緒にいても何も伝わってこなかったから気付かなかった。いつもなら、恋愛感情を天気に例えた心が伝わってくるのに。そういえば昨日も"恋使"の力が発動しなかった。北原くんから伝わってきたのは、好きの言葉だけだった。心の中を覗くようないつもの感覚は無かった。自分に向けられた気持ちは、伝わってこないのだろうか。
「夕音、お風呂沸いたわよ」
「あ、ありがとう。入ってくる」
お母さんの声で現実世界に引き戻されて、それが悟られないように慌てて取り繕う。飲み終えたコップをシンクに置いて、私は急いで昨日の汚れを落としに行く。
30分弱。すっかり温まった。髪をくしゃくしゃとタオルで乾かし、用意されていたご飯に驚く。お母さんは好物のナッツを食べながら、テレビを見ていた。
「ほら、お腹空いたでしょ。食べて休みなさい」
「うん」
私は用意されたオムライスを口に入れ、ふわっと広がるケチャップの味に感動する。修学旅行中に好物を全く食べられなかったわけじゃない。けれど少し久しぶりの母の手料理は、帰ってきた、ということを実感させてくれた。同時に、修学旅行という高校生活でも大きい行事が終わったことを改めて思い知らされた。
スプーンを口に運ぶ単純作業を繰り返していると、脳を蝕むように何度も繰り返される映像、言葉。今日はもう忘れて休むことは出来なさそうだ。心臓を掴まれたように苦しい。動揺を顔に出さないように気を付けなきゃいけない。すぐにでも誰かに相談したかった。でも皆疲れている。メッセージで誰かに聞くのも何となく噂になるのが怖くて、結局出来ないままだ。誰に聞くのが良いんだろうか。
「あっ」
「どうしたの?」
声に出てしまっていたらしい。何でもない、と返して食事に戻る。明日も振り替え休日だから、自由だ。私は、稲荷様のところへ行こうと決意した。
「おはよう、よく眠れた?」
「うん。お風呂、入る」
「あら、じゃあちょっと待ってて」
そう言ってお母さんはテキパキとお風呂の準備を始める。私は脱衣所に着替えを置いて、髪をとかし、喉が渇いていることに気付いた。コップを取り出して、オレンジジュースを口に含む。
ぼーっとしていると、どうしても昨日のことが蘇る。北原くんの熱を、痛いくらいに思い出す。いつも、北原くんと一緒にいても何も伝わってこなかったから気付かなかった。いつもなら、恋愛感情を天気に例えた心が伝わってくるのに。そういえば昨日も"恋使"の力が発動しなかった。北原くんから伝わってきたのは、好きの言葉だけだった。心の中を覗くようないつもの感覚は無かった。自分に向けられた気持ちは、伝わってこないのだろうか。
「夕音、お風呂沸いたわよ」
「あ、ありがとう。入ってくる」
お母さんの声で現実世界に引き戻されて、それが悟られないように慌てて取り繕う。飲み終えたコップをシンクに置いて、私は急いで昨日の汚れを落としに行く。
30分弱。すっかり温まった。髪をくしゃくしゃとタオルで乾かし、用意されていたご飯に驚く。お母さんは好物のナッツを食べながら、テレビを見ていた。
「ほら、お腹空いたでしょ。食べて休みなさい」
「うん」
私は用意されたオムライスを口に入れ、ふわっと広がるケチャップの味に感動する。修学旅行中に好物を全く食べられなかったわけじゃない。けれど少し久しぶりの母の手料理は、帰ってきた、ということを実感させてくれた。同時に、修学旅行という高校生活でも大きい行事が終わったことを改めて思い知らされた。
スプーンを口に運ぶ単純作業を繰り返していると、脳を蝕むように何度も繰り返される映像、言葉。今日はもう忘れて休むことは出来なさそうだ。心臓を掴まれたように苦しい。動揺を顔に出さないように気を付けなきゃいけない。すぐにでも誰かに相談したかった。でも皆疲れている。メッセージで誰かに聞くのも何となく噂になるのが怖くて、結局出来ないままだ。誰に聞くのが良いんだろうか。
「あっ」
「どうしたの?」
声に出てしまっていたらしい。何でもない、と返して食事に戻る。明日も振り替え休日だから、自由だ。私は、稲荷様のところへ行こうと決意した。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
養子の妹が、私の許嫁を横取りしようとしてきます
ヘロディア
恋愛
養子である妹と折り合いが悪い貴族の娘。
彼女には許嫁がいた。彼とは何度かデートし、次第に、でも確実に惹かれていった彼女だったが、妹の野心はそれを許さない。
着実に彼に近づいていく妹に、圧倒される彼女はとうとう行き過ぎた二人の関係を見てしまう。
そこで、自分の全てをかけた挑戦をするのだった。
五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。
あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。
夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中)
笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。
え。この人、こんな人だったの(愕然)
やだやだ、気持ち悪い。離婚一択!
※全15話。完結保証。
※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。
今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。
第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』
第二弾『そういうとこだぞ』
第三弾『妻の死で思い知らされました。』
それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。
※この話は小説家になろうにも投稿しています。
※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる