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修学旅行3 眠気
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お風呂から上がると、由芽が霙の頭を撫でており、霙は落ちてくるまぶたと戦っていた。
「あ、おかえり。…おかえり?」
私に気付いた由芽が、自分の言ったことに違和感があったのか首を傾げる。その様子に私は思わず笑ってしまったのを隠さずに、「ただいま」と返した。
「ほら霙、お風呂入りな」
由芽とは反対側から、霙のベッドに腰掛ける。ペチペチと頬を叩くと、うぅっと唸りながら体を起こした。瞳の潤みは先ほどとは違い、眠気から来たものだろう。欠伸しているし。
「入ってくる~…」
着替えやお風呂セットの入っているらしい袋を手に取り、ふらふらとした足取りで脱衣所に向かう霙。それを見送って、私は由芽と顔を見合わせる。
「これは、戻ってきたらすぐに寝そうだね」
「もう3日目だもんね。楽しいけど、やっぱりその分疲れてるんだね」
「だねー。先に髪、乾かしておこうか」
「うん。霙、乾かさないで寝ちゃいそう」
「あーありそう。癖毛がコンプレックスのくせにね」
「え、そうなの?ふわふわしてて可愛いのに」
そんな風に話しながら、修学旅行最後の夜を過ごす。本当に最後なんだ、という実感は無くはない。寂しさと、早くあっちに戻りたい気持ちが混ざって変な感じがする。タオルに染みる水滴が、いつもより冷たい気がした。
霙は私達の予想に反して、お風呂から上がってすぐはいつもの元気を取り戻していた。しかし10分もすると再びまぶたと格闘するようになり、髪を放置したまま寝る準備を始めた。
「霙、おいで」
由芽が霙を床に座らせ、由芽はベッドから霙の髪を乾かしてあげていた。親子のようなやり取りが微笑ましい。私はその間、霙のベッドを整えていた。先程から3人で座ったり何なりしていたので、多少乱れていたからだ。
「あー、さっき海斗からアクセサリーの写真貰ったわよ。潮賀くんのも一緒に」
「見るー」
私もさりげなく近付き、画面に映る綺麗なストラップを見せてもらう。どちらがどちらか明白な色使いだった。
「2人とも姉妹のために作ったって言ってたけど、仲良いわよね」
「なんだかんだ言って、小野くんのところも仲良しだよね」
「来ってお姉ちゃんと妹がいるんだっけ?可愛いんだろうなぁ…」
霙がそう呟き、画面から離れる。私も画面から目線を外して、自分のベッドに寝転がる。気付いたら、壁際のベッドから寝息が聞こえてきていた。
「…霙が一番最初に寝ると思ってたんだけどなぁ」
携帯を握ったまま、由芽が眠りについていた。班長という気負いもあったのか、疲れが溜まっていたようだ。私は欠伸を1つして、毛布をきっちりと首までかけた。こちらを見ている霙と目が合い、どちらからともなく笑い出す。
「おやすみ、夕音」
「おやすみ」
修学旅行はいよいよ、最終日だ。
「あ、おかえり。…おかえり?」
私に気付いた由芽が、自分の言ったことに違和感があったのか首を傾げる。その様子に私は思わず笑ってしまったのを隠さずに、「ただいま」と返した。
「ほら霙、お風呂入りな」
由芽とは反対側から、霙のベッドに腰掛ける。ペチペチと頬を叩くと、うぅっと唸りながら体を起こした。瞳の潤みは先ほどとは違い、眠気から来たものだろう。欠伸しているし。
「入ってくる~…」
着替えやお風呂セットの入っているらしい袋を手に取り、ふらふらとした足取りで脱衣所に向かう霙。それを見送って、私は由芽と顔を見合わせる。
「これは、戻ってきたらすぐに寝そうだね」
「もう3日目だもんね。楽しいけど、やっぱりその分疲れてるんだね」
「だねー。先に髪、乾かしておこうか」
「うん。霙、乾かさないで寝ちゃいそう」
「あーありそう。癖毛がコンプレックスのくせにね」
「え、そうなの?ふわふわしてて可愛いのに」
そんな風に話しながら、修学旅行最後の夜を過ごす。本当に最後なんだ、という実感は無くはない。寂しさと、早くあっちに戻りたい気持ちが混ざって変な感じがする。タオルに染みる水滴が、いつもより冷たい気がした。
霙は私達の予想に反して、お風呂から上がってすぐはいつもの元気を取り戻していた。しかし10分もすると再びまぶたと格闘するようになり、髪を放置したまま寝る準備を始めた。
「霙、おいで」
由芽が霙を床に座らせ、由芽はベッドから霙の髪を乾かしてあげていた。親子のようなやり取りが微笑ましい。私はその間、霙のベッドを整えていた。先程から3人で座ったり何なりしていたので、多少乱れていたからだ。
「あー、さっき海斗からアクセサリーの写真貰ったわよ。潮賀くんのも一緒に」
「見るー」
私もさりげなく近付き、画面に映る綺麗なストラップを見せてもらう。どちらがどちらか明白な色使いだった。
「2人とも姉妹のために作ったって言ってたけど、仲良いわよね」
「なんだかんだ言って、小野くんのところも仲良しだよね」
「来ってお姉ちゃんと妹がいるんだっけ?可愛いんだろうなぁ…」
霙がそう呟き、画面から離れる。私も画面から目線を外して、自分のベッドに寝転がる。気付いたら、壁際のベッドから寝息が聞こえてきていた。
「…霙が一番最初に寝ると思ってたんだけどなぁ」
携帯を握ったまま、由芽が眠りについていた。班長という気負いもあったのか、疲れが溜まっていたようだ。私は欠伸を1つして、毛布をきっちりと首までかけた。こちらを見ている霙と目が合い、どちらからともなく笑い出す。
「おやすみ、夕音」
「おやすみ」
修学旅行はいよいよ、最終日だ。
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