神様自学

天ノ谷 霙

文字の大きさ
上 下
321 / 812

修学旅行3 首里城

しおりを挟む
年月を感じる門を抜け、長い石造の階段を上る。大きさはまちまちで、しっかり足を上げないと転んでしまいそうだ。
「…ひゃっ!?」
他の班から悲鳴が聞こえて振り向く。そこには慌てている亜美と、片手を取って支える潮賀くんがいた。亜美は顔を真っ赤にしているが、潮賀くんは「大丈夫ですか?」と心配そうな表情を浮かべている。見ているこっちが微笑ましいやりとりだった。
先に階段を駆け上がった霙が、無表情でどこかを見つめているのが目に入った。先に小野くんが駆け寄ると、霙はふっと大人びた笑みを見せた。本当に、竜夜くんとさえいなければ年相応、いやそれ以上なのに。でも、もしかしたら、小さい頃から一緒にいたからこそ安心して素の自分をさらけ出しているのかもな、なんて思った。
「うわぁ…っす…っげぇ…」
小野くんの感嘆の声が聞こえて、私も視線を追う。するとそこには沖縄の街並みが一望出来た。奥の方では、空と海が溶けるように混ざり合っている。
「綺麗だね」
「…うん」
私の言葉に、霙が小さく頷く。静かなひと時。それをぶち壊すような大声が聞こえた。そんな人物は1人しか心当たりがない。
「こっちも凄いぞ!早く行こうぜー!」
手をぶんぶんと振って、私達を呼ぶのは竜夜くん。他の修学旅行生らしき人達が、竜夜くんを見て笑っているのが見えた。
「あ、ちょっ、待てって竜夜ぁ!」
小野くんが慌てて竜夜くんのもとに駆け寄るのを見て、私と霙は顔を見合わせる。どちらからともなく笑い出して、私達も走った。

「…おぉぉおおお!」
小野くんが大きな声で感嘆を示す。竜夜くんも目を輝かせて、わくわくしている様子だ。目の前にあるのは、写真やテレビでよく見る首里城。だが本物はとても大きく、細部までよく作り込まれている。赤と白の壁、光を反射してキラキラと輝く金や色とりどりの装飾、晴天の空に映える赤瓦。そのどれもが想像以上で、声すらも出なかった。
「あっちから、中に入れるみたい」
由芽が指さす方向には、ちらほらと人が入る様子が見えた。興奮している竜夜くんや由芽に続き、私達は中に入った。歴史を訴えるように、昔の人々のことを教えてくれるようにそこに存在する色々なものに、私は時の流れを感じた。
ずっと、残っていてくれるといいな。
2年生も残り4ヶ月を切った。来年もその先も、友人の関係が切れないと良い。あわよくば、羅樹との関係も進展すると良い。そんなことを考えてしまうのは、しばらく羅樹に会ってない気がするからだろうか。私は霙に手を引かれて、首里城の中を巡った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...