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11月23日 裏庭のベンチ
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放課後。私は裏庭の方を歩いていた。多分、こっちの方にいると思う。そう聞いて、探しに来たのだ。
全然見つからないので、歩いている途中で別のことを考える。そういえば、恋使の能力で相手の心に反応して花が咲くが、季節も咲く場所も関係なく咲くのに、あまり疑問に思われたことは無かったな、と思う。霙が驚いた時、私もびっくりした。なのにその数秒後には疑問を感じてる風でもなく、微笑んでいた。もしかして、その辺りも恋使の能力の範囲なのだろうか。
結構長い時間をかけて導き出したつもりだったのに、一向に探し人は見つからない。今日は諦めて帰ろうかと思った時、薄暗い校舎の間のような場所に、その人はいた。
「雪くん!」
「…え…?」
吹奏楽部が珍しく休みだという日に、帰らずにこんなところで蹲っていたのか。帰りのSHRからもう既に30分は経っている。ずっとここにいたのならば、確かに見つけにくいところだ。私はため息をつきたくなるのを我慢して、雪くんの目の前に立った。
「こんなところにいたの?探してたんだよ」
「え、ご、ごめん…何か…用事?」
「用事ってわけじゃないんだけど、少しお話ししようと思って」
「話…?」
私は雪くんを引っ張り出して、近くのベンチに無理やり座らせる。雪くんは戸惑った様子だったが、私が終始笑顔だったので少しは緊張が解けたようだ。1人分席を空けて、私も隣に腰掛ける。遠くにグラウンドで部活をしている野球部が見えた。
「単刀直入に言うね。霙のこと、どう思ってるの」
「…っ!?」
ここで世間話を始めても回復しなさそうだったので、さっさと話したいことに移った。雪くんは目を見開いて驚き、戸惑いながら唇を動かした。
「え、ど、どう…って…」
「霙から長い付き合いだって聞いた。だからこそ、お互いのことを分かってるからこそ、分かりすぎて見えなくなってる部分があるんじゃないの?」
「…どういう意味…?」
私が回りくどい言い方をしたのも悪かったが、戸惑うばかりで疑問を返してくるだけの雪くんもどうかと思う。雪くんのそんな態度にイライラしてくる。
「…霙が怒ってる原因はわかるの?」
「…」
雪くんは黙った。わからないとは言いにくくて、わかるとも言えない状態だから逃げの選択として黙ったのだ。逃げたい気持ちも分かるが、それが好きな女の子に対して誠実だと言えるのか。
「…わかんないのに、謝ったの?」
雪くんの肩が視界の端でびくりと震えた。霙にここまで責められたことはあったのだろうか。ショックの受け方から、そもそも霙が雪くんにここまでキレることは少ないらしい。私は霙の分も勝手にキレてやろう、と決心して口を開いた。
全然見つからないので、歩いている途中で別のことを考える。そういえば、恋使の能力で相手の心に反応して花が咲くが、季節も咲く場所も関係なく咲くのに、あまり疑問に思われたことは無かったな、と思う。霙が驚いた時、私もびっくりした。なのにその数秒後には疑問を感じてる風でもなく、微笑んでいた。もしかして、その辺りも恋使の能力の範囲なのだろうか。
結構長い時間をかけて導き出したつもりだったのに、一向に探し人は見つからない。今日は諦めて帰ろうかと思った時、薄暗い校舎の間のような場所に、その人はいた。
「雪くん!」
「…え…?」
吹奏楽部が珍しく休みだという日に、帰らずにこんなところで蹲っていたのか。帰りのSHRからもう既に30分は経っている。ずっとここにいたのならば、確かに見つけにくいところだ。私はため息をつきたくなるのを我慢して、雪くんの目の前に立った。
「こんなところにいたの?探してたんだよ」
「え、ご、ごめん…何か…用事?」
「用事ってわけじゃないんだけど、少しお話ししようと思って」
「話…?」
私は雪くんを引っ張り出して、近くのベンチに無理やり座らせる。雪くんは戸惑った様子だったが、私が終始笑顔だったので少しは緊張が解けたようだ。1人分席を空けて、私も隣に腰掛ける。遠くにグラウンドで部活をしている野球部が見えた。
「単刀直入に言うね。霙のこと、どう思ってるの」
「…っ!?」
ここで世間話を始めても回復しなさそうだったので、さっさと話したいことに移った。雪くんは目を見開いて驚き、戸惑いながら唇を動かした。
「え、ど、どう…って…」
「霙から長い付き合いだって聞いた。だからこそ、お互いのことを分かってるからこそ、分かりすぎて見えなくなってる部分があるんじゃないの?」
「…どういう意味…?」
私が回りくどい言い方をしたのも悪かったが、戸惑うばかりで疑問を返してくるだけの雪くんもどうかと思う。雪くんのそんな態度にイライラしてくる。
「…霙が怒ってる原因はわかるの?」
「…」
雪くんは黙った。わからないとは言いにくくて、わかるとも言えない状態だから逃げの選択として黙ったのだ。逃げたい気持ちも分かるが、それが好きな女の子に対して誠実だと言えるのか。
「…わかんないのに、謝ったの?」
雪くんの肩が視界の端でびくりと震えた。霙にここまで責められたことはあったのだろうか。ショックの受け方から、そもそも霙が雪くんにここまでキレることは少ないらしい。私は霙の分も勝手にキレてやろう、と決心して口を開いた。
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