神様自学

天ノ谷 霙

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11月14日 紺様と従者

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「…申し訳ないけど、夕音もこちらに来てもらえる?」
「あ、はいっ」
扇様が私を先導して、さっき扇様が出てきた部屋の扉を開ける。
「お嬢様…っ」
「いいから、さっさとけじめを付けなさい!」
「は、はいっ」
花火が扇様に付こうとするが、それを阻止する凛とした声。花火が慌てる唯一の相手。
「…良い返事ね。しばらくは私、こん様と夕音と一緒にいるから下がってて良いわ」
「…分かりました」
花火がいつもの調子で答える。私は扇様に促されて部屋に入った。ソファには長い前髪で片目が少し隠れた男性が座っており、その側には片倉さんに似た服装の女性が立っていた。
「どうかしたのかい?」
「…少し、メイド同士の諍いがあったみたいで。大丈夫ですわ。お話中に席を立って、申し訳ありませんでした」
「いいよいいよ。それで、そちらの方は?」
男性の視線が私に移る。少し痛い、疑いのような目。
「こちらは私の、ゆ、友人の…稲森 夕音さんです」
"友人"と言う時、少し頬を赤らめた扇様がとても可愛らしかった。なんて思ってはいられず、私はお辞儀を混じえて挨拶をする。
「初めまして、稲森 夕音です」
「…友人、か」
緊張をあまり表に出さないようにしていたつもりだが、相手の男性は深く考えている様子だった。心配になったが、側にいた女性が静かに口を開いた。
「…初めまして夕音様。こちらの方は紺様です。澪愛の分家、鳳凰ほうおうの者になります。扇様とは小さい頃からの仲で、今も親しくさせて頂いております」
薄紫の淡い髪を内巻きにしたその女性は、表情を動かさずにそう話した。話し終えると、自分のことは何も言わずに紺様を現実に呼んだ。
「…紺様、紺様」
「…はっ。あぁ、これは失敬。扇にもちゃんと友人が出来て嬉しくてつい、ね」
「どういう意味ですの」
ははっと笑う紺様の言葉に、頬を膨らませる扇様。私は戸惑いながら苦笑いをした。
「改めて初めまして、夕音さん」
「夕音で、大丈夫です」
「それではお言葉に甘えて。私は紺。こちらは付き人の青梅おうめ あまだ。宜しく」
「よ、宜しくお願いします」
「…付き人の私の名前なんて紹介しなくて結構ですが…」
「まぁ良いじゃないか。たまには花火以外と話してみなさい。それじゃ、少し散歩にでも出ようか」
紺様がそう言って扇様の手を引く。扇様は戸惑った様子だったが、はにかんで頷いた。
「えっ…あぁ、はい」
「申し訳ないが夕音、天と話していて貰えないかな。大丈夫、すぐ戻る」
「あ、はい。分かりました」
「…お怪我に気を付けて下さい。いってらっしゃいませ」
そして部屋には、私と天さんの2人だけが残った。
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