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9月20日 衣装は趣味?
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文化祭2日目。午前中はいろいろなクラスに遊びに行って、とても楽しかった。今日は昨日より遅めに公演があり、もうそろそろなので舞台裏に集合している。昨日と同じように衣装に着替え、宣伝の意味も兼ねて歩き回った。おしゃれな衣装や可愛い女子、格好良い男子たちで、クラスメイトは注目の的だったので、衣装を担当した千夏が自慢げに笑う。
「衛兵役でも割と動きやすいし、楽~」
「…だね」
紗奈と明の会話が聞こえる。衣装の話に、千夏が敏感に反応して話に加わるのが見えた。
「皆、すっごく可愛いね!」
亜美が紅のマントを揺らしながら、楽しそうに手を叩いて跳ねた。昨日の準備中は動きにくいから、と外していたので可愛らしい印象だったが、刺繍や色使いが綺麗なマントを羽織ると大人っぽい印象を抱かせる。
「そうだね。これなら、宣伝はバッチリかな」
「男子の衣装もすげえな」
「…それは俺に対する嫌味か?あ?」
ナレーションを担当している小野くんが、緑の羽根つき帽子を押さえ、左手で古い図書のように工夫された台本を持ちながら現れた。その姿は少し低めな身長も合わさって、何というか、こう…。
「小人みたいだな」
「うるっせー!」
顔を真っ赤にしながら小野くんが怒るが、衣装のせいか可愛らしく見えてしまう。2人の会話に反応して千夏が振り向くと、紗南や明も話に加わった。
「小野くんはナレーションだし、衣装いるの?」
「宣伝用には…使える、のかな?」
紗奈の疑問に明が答えているのを見て、私は苦笑いをする。
「せっかくだし、小野くんに似合いそうだなっていう独断と偏見と私の趣味で固めてみた」
「おい、待て。俺に似合いそうってどういうことだ」
「いいじゃない。脚本だった淑乃ちゃんとかも私の趣味だし」
そういえば淑乃の服はオフショルダーにショートパンツ、豪華なマントを羽織った女海賊風だった。あれも趣味なのか。服飾だけでなくコスプレさせることも好きな千夏だから、アイデアに底が無さそうだ。
「おーい、そろそろギター部終わるぜー」
藤上くんの声が聞こえ、私達に少し緊張が走る。
『ありがとうございましたー!!』
ギター部のボーカルの声が聞こえた。鼓動が高まるのが分かる。静かになった舞台袖で、隣にいる利羽の呼吸が聞こえる。少し、荒い気もする。
「…利羽?」
「…っ、あ、な、何…?」
ぼーっとしているようだ。もしかして、体調が悪いのだろうか?
「利羽、どうしたの?顔色が悪…」
「そんなことない!」
少し大きな声を出した後に、利羽ははっとする。
「…体調が悪いわけじゃないの。昨日より緊張していて…」
私には自分にそう言い聞かせているように見えたが、そう思い込めば体調も戻るかもしれない、と思った。
「無理は、しないで」
「わかってる」
そんな会話を終え、一呼吸置くと、小野くんのナレーションと開演ブザーが響き渡った。
「衛兵役でも割と動きやすいし、楽~」
「…だね」
紗奈と明の会話が聞こえる。衣装の話に、千夏が敏感に反応して話に加わるのが見えた。
「皆、すっごく可愛いね!」
亜美が紅のマントを揺らしながら、楽しそうに手を叩いて跳ねた。昨日の準備中は動きにくいから、と外していたので可愛らしい印象だったが、刺繍や色使いが綺麗なマントを羽織ると大人っぽい印象を抱かせる。
「そうだね。これなら、宣伝はバッチリかな」
「男子の衣装もすげえな」
「…それは俺に対する嫌味か?あ?」
ナレーションを担当している小野くんが、緑の羽根つき帽子を押さえ、左手で古い図書のように工夫された台本を持ちながら現れた。その姿は少し低めな身長も合わさって、何というか、こう…。
「小人みたいだな」
「うるっせー!」
顔を真っ赤にしながら小野くんが怒るが、衣装のせいか可愛らしく見えてしまう。2人の会話に反応して千夏が振り向くと、紗南や明も話に加わった。
「小野くんはナレーションだし、衣装いるの?」
「宣伝用には…使える、のかな?」
紗奈の疑問に明が答えているのを見て、私は苦笑いをする。
「せっかくだし、小野くんに似合いそうだなっていう独断と偏見と私の趣味で固めてみた」
「おい、待て。俺に似合いそうってどういうことだ」
「いいじゃない。脚本だった淑乃ちゃんとかも私の趣味だし」
そういえば淑乃の服はオフショルダーにショートパンツ、豪華なマントを羽織った女海賊風だった。あれも趣味なのか。服飾だけでなくコスプレさせることも好きな千夏だから、アイデアに底が無さそうだ。
「おーい、そろそろギター部終わるぜー」
藤上くんの声が聞こえ、私達に少し緊張が走る。
『ありがとうございましたー!!』
ギター部のボーカルの声が聞こえた。鼓動が高まるのが分かる。静かになった舞台袖で、隣にいる利羽の呼吸が聞こえる。少し、荒い気もする。
「…利羽?」
「…っ、あ、な、何…?」
ぼーっとしているようだ。もしかして、体調が悪いのだろうか?
「利羽、どうしたの?顔色が悪…」
「そんなことない!」
少し大きな声を出した後に、利羽ははっとする。
「…体調が悪いわけじゃないの。昨日より緊張していて…」
私には自分にそう言い聞かせているように見えたが、そう思い込めば体調も戻るかもしれない、と思った。
「無理は、しないで」
「わかってる」
そんな会話を終え、一呼吸置くと、小野くんのナレーションと開演ブザーが響き渡った。
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