公園

ゃょぃ

文字の大きさ
上 下
8 / 10

本当に欲しいモノはお金では買えないと言うけれど、お金が無い所為で買えないモノだって沢山あって、そういう時に限ってお金で買える物が一番欲しい。

しおりを挟む

私は将来、空を飛びたいと思っていた。明確ではないが、中学校を卒業する前から思っていた筈だ。鳥に興味を持ち、休日には山へ籠り、観察を続けているうちに、それらが自由に飛んでいる姿を見て、そう思う様になった。それから、空を飛ぶ方法は試した。スカイダイビングとか、特殊なスーツを着て滑空をするとかだ。しかし、満足はしなかった。自らに生えている翼を、いっぱいに羽撃かせ、空を飛びたいのだ。滑空では意味がない。
私は今、艾年を過ぎている。体型は、小太りである。腹筋運動はできない。しかし、腕だけは、しっかりと鍛えているつもりだ。勿論、羽撃く為である。
少しずつお金を貯めて、自分で空を飛ぶ方法を考えようとする。ただ、方法を考えようとしても、漠然とした欲求のみが襲って来る。飛びたい、飛びたい、と。
自分の願望を実現させる方法さえ思い付かない私に、頼る事ができる人間はいない。親は既に他界し、妻とは離婚、子供は夭逝していた。親戚とも疎遠になり、家に訪れる唯一の人間は、たまに頼むデリバリーピザの若い兄ちゃんだけだ。つまり、私の心配をする人間はいない。私の願望を知る人間もいない。力を貸してくれる人間もいないのだ。眉間と口元に刻まれた皺よりも、停電した夜よりも、更に暗い生活を送っている。そういう自覚はある。しかし希望はある。これだけ医療も、科学も、何とか学も進歩しているのだ。私が何もやらなくても、誰かが発案し、実行し、実用できるレベルにまで到達させ、正式に発表をするはずだ。そう考えると、気持ちが楽になった。しかし、それがいつになるかと考えると、急に落ち着かなくなる。火事場の馬鹿力、背水の陣。自分を追い詰めると、思わぬ力が出るのではないかと思った。
気が付くと、私は、岬へ走っていた。今までに観察をした鳥達の羽撃きを思い出した。なんだ、夢を叶えるっていうのは、こんなにも簡単だったんだな、とその時は思った。と、思う。しかし、過ちに気が付く事はなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[百合]短編集

[百合垢]中頭
現代文学
百合の短編集です。他サイトに掲載していたものもあります。健全が多めです。当て馬的男性も出てくるのでご注意ください。 表紙はヨシュケイ様よりお借りいたしました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

「俺、ヤモリ」

蛙鮫
現代文学
 日本家屋の屋根裏に住む口が悪いヤモリの話です。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...